打線はやっぱり1、2番が大切
「これもいい当たりだー!! 打球はセンターへ!! センターの柴崎がバックしていく!!………上空見上げた!
……入りました!! バックスクリーンへ4番ウィーガーは10試合ぶりの1発!物凄い打球があっという間にセンター後方に消えていきました!
20号の2ランホームランです。東北レッドイーグルスリードを広げます!6ー1!! 中盤6回、貴重な追加点です! 広元は痛恨の1発を浴びてしまいました!」
助っ人外国人選手特有の豪快なフルスイング。
真ん中低めの変化球を叩いた。打った瞬間という当たり。
柴ちゃんが一生懸命バックしていったが、秒でバックスクリーンにズドーンと飛び込んでいった。
そして続く5番バッターの打球。
カツーンとまたいい当たりをされて、ボールが俺の頭上を襲う。
左に動いて右に動いて、最終的に真後ろになった落下点に倒れ込みながらグラブを伸ばした。
バシッとグラブにボールが入った感触があり、そのグラブを大事に抱えた。
「これもまたいい当たりですが、レフト後方! どうでしょうか、アウトです! 真後ろの打球ですが、レフト新井がなんとか掴みました。3アウトチェンジです。しかしこの6回表、ウィーガーの2ランホームランで東北は6ー1、リードを広げています!」
「柴崎打ちました!!打球はライトへ!しかしこれは上がりすぎか、ライトがやや後退して打球を掴みました、ゲームセットです。
6ー1! 東北レッドイーグルスが完勝! 3連戦を1勝1敗としまして、明日は日曜日のデーゲームでカード勝ち越しを狙います。ビクトリーズは打線が7安打1得点とチャンスはありましたが生かしきれず。東北の先発馬美に抑え込まれました」
ネクストのわっかの中で、今日の俺は終了した。4打数ノーヒットでいいとこなし。インサイドを上手く攻められて自分のバッティングがなかなか出来なかった。
今日はアイスが全然美味しくない。
そんな成績に終わってしまった。
「くそー。打ち損じました」
1塁ベースの方から悔しそうな表情で最後のバッターとなった柴ちゃんが戻ってくる。
「チェンジアップにタイミング狂わされたな。ちょっと上体が突っ込んでたよ」
俺はそう指摘した。
「やっぱ、そうでしたよね。我慢したつもりだったんですけど……」
「まあ、ストレートをいい当たりなファウルしたばっかりだったからね」
柴ちゃんも今日はノーヒット。やはり、1番2番が仕事をしないと攻撃にならないわね。
俺と柴ちゃんは、ミーティングが終わってもしばらくロッカーで2人きりになって話し込んでいた。
翌日。日曜日。
この日はお天気もよくて、前々から来場者全員にオリジナルグッズを配布すると告知していたこともあり、その甲斐あってお客さんの入りは上々で久しぶりに2万人近い観客動員となった。
そうなるとお調子者と名高い俺のテンションはだだ上がりで、特に昨日はいいとこなしの4タコでしたから。
そのお返しとばかりに、1打席目2打席目でアウトコースのボールをきっちりとライト前へ連続ヒット。
2度のヘッドスライディングを披露しながらの好走塁で同点のホームを踏むなど、右足の負傷を感じさせない元気ハツラツっぷりを見せ付けた。
そして1ー1で迎えた6回。先頭の先発ピッチャー、小野里君が凡退した後の1アウトから、ようやく柴ちゃんのバットから快音。
2ボール2ストライクと追い込まれながら若干コントロールミスした低めのストレートをセンター前に弾き返し出塁。
俺に打席が回る。
足の速い柴ちゃんが塁に出たことで、相手ピッチャーは2回、3回と牽制球を投げる。
ビクトリーズファンからのブーイングが聞こえる中の初球はアウトコースへのストレートが外れて1ボール。
柴ちゃんの盗塁と俺に2本ヒットを打たれていることの警戒が見て取れる外角への様子見球だ。
1球様子見してきた相手バッテリーの様子をこちらサイドも伺いながら、3塁コーチおじさんからのサインを確認する。
1球ボールとなれば、次は欲しくなるストライク。ならば、柴ちゃんの足の速さと俺の右打ちスキルのコンボ攻撃も面白い。
………。
残念ながら、特別サインが出たわけではない。しかし、ランナーの柴ちゃんはグリーンライト。
つまり、自分が行けると思ったらいつでも盗塁を試みてよいという取り決めがされている選手だ。
現に今シーズンはここまで16盗塁を決めている柴ちゃんだが、そのうちの8個は自らの判断で走って決めた盗塁。
それに限ると、10の8で成功率8割とまあまあな出来映え。
それに加えて、昨日2人で相談して決めたのは、柴ちゃんが盗塁するのかしないのかを俺に伝えるというやり方。
柴ちゃんの独断でスタートを切るので、彼がいいスタートを切っても俺が打ってファウルにしてしまったり。
逆に柴ちゃんが走るだろうと打てるボールを見逃しているうちに追い込まれて打ち取られてしまったりということが何度もあった。
そんなちぐはぐがあってはやはりもったいない。
逆に上手くいって気づけばエンドランの形になり、1、3塁のビッグチャンスになることもあったりしたのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます