連城君、お願いしますよ。

北関東3ー6横浜


北関東ビクトリーズに暗雲!? 外野手不足の苦しい状況。新井のスタメン落ちに続いて、代役杉井が股関節の負傷で全治1ヶ月で今シーズン絶望か。



水曜日、横浜ベイエトワールズとの試合でまたしても負傷者が出てしまった。


6回ウラ、盗塁を試みた杉井が2塁ベース上で不自然なスライディング。トレーナーと共にベンチへ下がり、直後の守備から川田と交代した。


検査の結果、股関節唇骨の圧迫骨折により全治1ヶ月と診断された。


この報告を受けて萩山監督は……「前日に新井も足を痛めたしね。杉井も久しぶりのスタメンで気合いが入っていたし、調子は悪くなかったからもったいない。でも、それを嘆いても仕方ないしね」……と悔しげな表情だった。


杉井はここまで65試合の出場。打率2割1分7厘ながら、試合終盤での代走・守備固め要員として重宝されていた。


木曜日からは東北と。来週頭からは首位東京、2位北海道と上位チームとの戦いを控える。



「新井が出てくれればそれ以上のことはないけど、足を悪化するのは怖いから無理もさせられないね。でも、彼がいるのといないのとでは打線の繋がりが全然違う。打率的にも、出さないとファンが納得しないだろうし」


萩山監督はそう話す。


新井はこの日、代打でツーベースを放ち健在ぶりをアピールしたが、スタメンでの出場となると、どこまで出来るかは不透明だ。


実際に新井の欠場が濃厚となったこの試合は、前試合と比べて約1200人の観客動員減。いかに新井人気があること思い知らされながら、今シーズン最小の観客動員数となる1万2000人を切ってしまった。


チームとしても球団の興行的にも、唯一の希望とも言える新井のスタメン起用は至上命題とも言えるが………。


萩山監督はチームの勝ち負けと同等以上の事態に、今日も頭を悩ましながら帰路に着くことになりそうだ。



週間東日本リーグビクトリーズ担当 大本めぐみ








木曜日の移動日を挟んで金曜日。


この日から東北レッドイーグルスとの3連戦が始まる。


東北は現在、3位埼玉を2、5ゲーム差で追いかけており、逆転でのポストシーズン行きをまだまだ狙っている状況だ。


相手はうちとの3連戦で最も信頼出来る先発ピッチャーを3枚連続でぶつけてくるつもりらしく、3連勝して、週明けの埼玉との直接対決に望むつもりらしい。


対するうちは、最下位確定とはいえ、当然ボーナスゲームになどするつもりはなく、初戦はドラ1の連城君、2戦目はチームの勝ち頭のサイドスロー広本さん。3戦目は後半戦調子を上げてきた若手の小野里君。


出来る限りの戦えるだろうという布陣も用意したようだ。


うちはあと22戦で8勝しなくちゃシーズン100敗してしまうわけだからね。



そして俺も、ポニテちゃんに木曜日も溜まっていたものを色々してもらったおかげで気分も絶好調!!



足の具合は思ったよりも良く、バッティングの方もなかなかの状態を維持しているので東北の表ローテのピッチャー相手にも十分食らいついていけるのではないかと見ている。



そしてヘッドコーチに直接通達される形でめでたくスタメン復帰となったわけである。


杉井君もいないし、控え外野手もいないからね。


俺が頑張らないといけないわね。





「さあ、試合が始まります! 1回表、東北レッドイーグルスの攻撃。ビクトリーズの先発は連城達弘です。ここまで7勝14敗。防御率は4、47。前回登板は北海道フライヤーズ相手に6回4失点。負け投手になっています。立ち上がり、東北のトップバッター、茂手木が左打席に入ります」



先発、連城君の立ち上がり。とにもかくにも、先発投手はまず初回の出来が大切だ。


キャッチャーが2塁送球したボールを内野陣がボール回し。


最後はシェパードが投げ渡し、ファーストミットの土手を左手でバシバシ叩き、連城君に何かイタリア語で言っている。



「新井さん、少し下がりましょうか!」


柴ちゃんが俺と桃ちゃんに声をかける。


「オッケー!」


俺は柴ちゃんに返事をして、ライトの桃ちゃんも左手のグラブを上げてこちらに見せた。


ピッチャーマウンドの少し後ろで2度、踏ん張るように屈伸運動をして、ロジンバッグに手をつけて、鼻先の汗を拭い、プレートに足を揃える。



ふーっと息を吐きながら一瞬空を見つめて帽子のつばを触る。


鶴石さんのサインに頷いて、ボールを握り直しながら大きく振りかぶる連城君。


いつもの力感溢れるダイナミックなフォームで初球。


真ん中低めにストレートがいった。



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