知らない彼女の狂気を知る新井さん

移動日、お休み、フリーデー。


一緒に帰った流れで、朝のニューステレビを見ながら、卵かけご飯とウインナーなどで簡単に朝食を済ませた。


なんだか暇だから、またみのりんとショッピングなどと洒落込んで駅前辺りをぶらつこうかと思ったら……。


「くぅくぅ……」


連勤続きの夜勤明けだから疲れていたのか、食事を終えたみのりんはソファーでねむりんになってしまっていた。



短パンにTシャツ姿。素足。非常に無防備である。



しかし、ちょっかい出すのもかわいそうなので、起こさないようにそーっとブランケットをかけてあげて、少しだけ部屋の冷房をきかせてから、彼女の部屋を出た。


まあ、部屋の掃除をしたり、ゲームしたりして時間を潰していたが、午後0時を回った頃、なんだかまたお腹がすいてきたので、1人で駅前まで繰り出すことにした。


すると………。


「新井さーん!」


ポニテ姿のおっぱいちゃんが駅の入り口に向かう階段から降りてくる。


「奇遇ですね! お出かけですか?」


「ああ、ちょっとお腹がすいたんでね。さやかちゃんはまだ夏休み中?」


「はい、今週いっぱいまで。でも、来週からは少しずつ出席する授業が減ってきて、今みたいに時間が出来ちゃうんですけどね」


「そうなんだ」


「その分、バイトを増やして、トレーナーの学校の入学金を貯める予定です!」


「おお、頑張れよ」






「ところで新井さんは今暇ですか?」


「まあ、暇だねえ。みのりん様とお買い物と思っていたけど、お疲れのようで今日はぐっすり休んでおりまして」


「そうだっんですか。それじゃあ、一緒に映画なんていかがです?」


「映画?」


そう言ってポニテちゃんは映画のチケットを2枚ピラッと、その豊満な谷間から取り出した。


俺の瞬間妄想の中では。


実際は、普通にバッグの中から出したのではあるが、いつかはそんな風に俺をドキドキさせてくれるような存在になって欲しい。



「どうしたの、それ」


「店長から頂いたんです! なんでも、うちのカフェで作っているサンドイッチを映画館のフードエリアに卸しているんです。


これはいつものお礼で、暑中見舞いみたいなものらしいです! タダで映画が見れますよ!今から行きますか?」



ポニテちゃんは、自慢の胸元とポニテをフリフリと揺らしながら身振り手振りでそう説明してくれた。


「イエーイ! 行くぜ、行くぜ!もちろん行くぜ!」


「イエーイ!行きましょう、行きましょう!」


ポニテちゃんは自分の手柄のように得意気な表情。こちらがひねくれれば、誘惑しているとも取れるそんな表情に、俺も乗っかることにした。


2人でイエーイしながら、駅の構内を抜けて反対口の駅ビルに向かった。






「何か食べながら観よっか?お兄ちゃんが好きなもの買ってあげるぞ!」


「本当ですか?」


「ああ、タダで映画見させてもらえるんだし。思う存分に食べなさい」


俺がそう言うと、さやかちゃんは目を輝かせて、バインバインとフードエリアに向かって走り出す。



そしてカウンターとスタッフのお姉さん越しに、貼り出されたメニュー表を食い入るように見つめて指を差した。


「新井さん、新井さん。私、とりあえずあのホットドッグ食べたいです!!」


「おお、デカイソーセージで美味そうだね。俺も食べるぞ。ポップコーンは? でっかいサイズのやつ買っちゃう?」


「はい! 塩とキャラメル味をハーフ&ハーフで!」



「オッケー! お姉さん、ホットドッグ2つとポップコーンスーパーLサイズのハーフを塩とキャラメル。あと、コーラも2つ下さいな」


「ありがとうございます」



その後も、ポニテちゃんはチュロスを食べたいと言い出したりなんだりで、結局は普通に映画を見るくらいのお金がかかってしまったが仕方ない。


大きいおっぱいを手に入れるためには、それなりの投資が必要だからね。


「新井さーん、早くー! 映画始まっちゃいますよー」


ポニテちゃんも楽しそうだしね。それが1番だよ。




あなたはそれでもこの屋敷に足を踏み入れますか


恐怖はもうあなたのすぐそばにある……。


「「キャー!!」」


みたいな映画が始まるようだ。


つまりは、ホラー映画。ジャパニーズホラー。


人里離れた呪われた屋敷。


そこへ6人の若い男女が迷いこんでしまった。



古い家屋が醸し出す独特の雰囲気。そこで恐怖演出が起こる度に、映画館のあちこちから女性の悲鳴が上がる。



訪れた若者が屋敷の中で起こる怪奇現象に巻き込まれて次々と犠牲になっていくような結構なレベルでショッキングな映画。


そんな状況に、俺はチャンスと考えた。


隣の席に座るポニテちゃんが怖がって俺に抱きついてくると思ったからだ。


目の前で起こる恐怖映像に怯えた彼女が、その豊満な胸元を擦り付けるようにして、俺にすり寄ってくるはずだ。


俺達の座席周りには他のお客さんは全然いないし。


そう思っていたのだが……。



「うふ。…………うふふふ。これはなかなかたまりませんね。………私としてはもっと血が流れて欲しいんですね。………濃くてべったりとした血液をねえ………うふふふふ」


笑ってやがる。このおっぱい、1番の恐怖シーンでこれ以上ない笑みを浮かべてやがる。


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