はっきりしてよね! ギャル美さん

こうなんかビシッと、今日は泊まっていきなさい! これは命令よ!!


くらいに強い口調と態度で指図されるかと思いきや、なんだかみのりんよりも弱々しい不安げな態度。


俺が帰るわーって言って帰ろうとしたら、そのまま帰してしまいそうなくらい押しが弱い。


そんな風にしおらしくされるとこっちの調子も悪くなってくるというものだ。


こんなの俺が知ってるギャル美じゃないが、今にもちょっと泣き出しそうな彼女の顔を見ると、少しかわいそうなことをしてしまった気になってしまう。


もちろんこの部屋にきた時点でさらさら帰る気などなく、むしろそのままギャル美をいただきますしようとするくらいの気迫を隠し持ってはいたのだが、なんだかそんな気持ちも薄れてしまった。




一応はね、そういう気持ちも少しは持っていたフリくらいはしていましたよという話。


「泊まっていっていいの?」


「も、もちろんよ。……ほら、疲れてるでしょ。シャワー浴びてきたら?」


そう言ってギャル美は、側の棚の中にしまっていた袋をがさごそし出し、中から新品の下着と無地のTシャツを俺に差し出してきた。


「ほら、これ使いなさい」


「ありがとう、ずいぶん準備がいいな」


「たまたまよ」



俺はそれを受け取り、自分の部屋のよりだいぶ広い浴室に入っていった。





温かいシャワーが気持ちいい。


普段のシャワーと何1つ変わらないはずなのだが、女の子の部屋のシャワーだと考えるだけで、妙に新鮮な気持ちになる。



しかし、ギャル美も生娘だなあ。ちょっとからかっただけで顔を赤くして一喜一憂しちゃって。


でも、ギャル美とみのりんにも言えることだけど、彼女達2人は今年で26歳でしょ。


そして2人は学生時代からの親友同士。今でも互いの部屋を行き来する仲良し。



別に2人ともブサイクだったり、性格が悪かったり、どころか欠陥があるわけでもなく、ただなかなか積極的にいけないタイプだ。


売れ残りというわけではない。


女子高出身というものあるのか、出会いは少なそうで男友達がいるのかはだいぶ怪しい。



まあ、普段の反応から察するに、誰かと付き合ったことすらもないんじゃないかと思うくらい、 あんまり男慣れしていない様子だ。


しかし、年齢的にちょっと焦り始める頃合いだろう。結婚はさておき、そろそろ本格的な恋愛の1つや2つを経験しなければと、2人が面と向かい合ってそんな話をしているのかは知らないが、少なからず、心のどこかでそう思っているだろう。


チャンスさえあればと。


しかし、下手に焦って変な男を引いて大失敗はしたくない。


そんな考えも待ち合わせている。


バッティングでいえば、3ボール2ストライクのフルカウント状態。


2人はそんな性格だ。俺が見る限り。





そんな2人の前に現れた俺はまさに千載一遇のチャンス。そう感じたであろうことは出会った当初の顔つきや俺に対する態度や姿勢にもよく現れているものだ。


ちょうどよさげフリーな男子がいないかなあと、みのりんとギャル美が、とあるお店にウイーンと入ってみたら、にっこり笑った俺が棚に並んでいるのを見つける。


その俺が入っているパッケージを手に取ってみると、28歳になる171センチ67キロの中肉中背。お世辞にもイケメンと言えるレベルではないが、高望みしなければ受け入れられる程度。


なにより職種がなんと、プロ野球選手。宇都宮に出来た新球団のドラフト10位の最底辺プロ野球選手ではあるが、れっきとしたスポーツ選手。なかなかこんなものはお目にかかれない。



しかも、未使用シールが貼られてわりと手頃な値段で売られていたのだ。


しかし、現品限りの1点物。素性は分からないし、プロ野球で成功するようにはあまり見えない。


ルーキーなプロ野球選手の割にはちょっと歳がいっている。


でも、悪い奴ではなさそうだ。


彼女達はどうするか、非常に悩んだことだろう。


お互いの顔色を伺いながら、様子を見ながら、悩みに悩み、最後まで熟考した挙げ句2人は………。


互いにお金を出し合って、とりあえず俺をシェアすることで合意したようだった。







そんなことを考えながらシャワーを終えて部家に戻ると、そこでは力尽きるようにして、ギャル美がベッドにゴロンとしていた。


一応横になってテレビを見ているようだが、仕事の疲れもあるのだろうか、うつらうつらとしている。



隙だらけである。


「シャワーありがとう。マイちゃんも入ってきたら?」


そう話しかけるとギャル美は……。


「うーん……。もうちょっと……」


何がもうちょっとなのか分からないが、そのまま目を閉じようとしていたので、俺は彼女の体を揺らす。



彼女の体に躊躇なく触れてやったのだ。


「ほら、寝る前にシャワーあびてきたら? 汗かいてるんじゃない?」


「うーん。………そうね……」


目は開いたが、体を起こす気配はない。


そこで俺は、ギャル美の体をくんくんと匂いを嗅いだフリをして………。


「くさっ!………うわ、汗くさっ!」


そう言ってやった。


するとギャル美はガバッと起き上がる。


「冗談だよ………ぐばあっ!!」


あはは! と笑った瞬間、腹部にパンチが飛んできた。


「信じらんない!」


ギャル美の眠気は何処へやら。


彼女は着替えとタオルを片手にぷんすかしながらズカズカ歩いて浴室の方へと向かっていった。


よっしゃ。今度は俺がギャル美のベッドで寝てやろっと。



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