連敗は止まるのか
「さあ!残すところ前半戦もあと1試合。ビクトリーズの連敗はまだ続いていますが、昨日の戦いぶりから、今日の白星を十分に期待出来ます。
週の真ん中、水曜日のナイターですが、前半戦最後の試合を見ようと、既に多くのビクトリーズファンがスタジアムに駆け付けているようであります。
もちろん、レフトスタンド側にはオレンジ色のスカイスターズファンの方々もご覧のようにたくさん入場されておりまして、試合開始を今か今かと待ちわびております、
試合開始10分前になりました。既に両チームのスターティングメンバーが発表されております。
今日こそは、宇都宮の夜空に勝利の白い花火を打ち上げることが出来るのでしょうか、北関東ビクトリーズ。
その相手となりますまずは先攻、現在首位、東京スカイスターズのスターティングメンバーです」
7月11日。晴れ。
今日はオールスター前最後の試合であり、なにがなんでも15まで伸びてしまった連敗を止めなければいけない試合だ。
そして、試合に先立って、両チームのスタメンが発表されたのだが、そこに柴ちゃんの名前はない。
2番センターで昨日1軍に上がった杉井という選手がスタメンに名を連ねているのだ。
「以上が東京スカイスターズのスターティングメンバーです。どうでしょう。やはり、1番の平柳を抑えられるかどうかでしょうか。非常に彼の出塁が今日もカギを握るのかと思いますが……」
「そうですねえ。平柳は足もありますし、塁に出ると一気にチームが盛り上がりますからねえ。それに2番の佐藤もここ最近調子もいいですから、オールスターにも選ばれたこの2人を勢いづけたくはないですね。
今日先発の碧山君は、緩いカーブとチェンジアップを生かすピッチングスタイルですから、2人の打ち気を上手く外して、気持ちよくバットを振らせないような配球を心掛けるべきですねえ。キャッチャーの鶴石のリードも、今日はまた重要になる試合ですよ」
「続きまして、ビクトリーズのスタメンです。昨日と同じと申しましょうか、1番には新井が入りました。そして2番センターで今日は、2軍から上がったばかりの杉井が入りました。イースタンリーグでは打撃好調、杉井が今日は昇格即2番スタメンです。
そして、阿久津、赤月、シェパードのクリンナップは変わりません。打撃好調ルーキー桃白が6番ライト。7番キャッチャー鶴石、8番セカンドは守谷。9番本日の先発ピッチャーは、ドラフト2位ルーキー、左腕の碧山、現在3勝8敗という成績が残っています」
「ビクトリーズのスターティングメンバーをご覧頂きましたが、やはりこちらも1番の新井の出塁がカギですか?」
「そうですねえ。昨日はノーヒットでしたが、1打席目と3点取ったイニングできっちり出塁しましたからねえ。相手は、プロ初先発ですから、上位打線がプレッシャーを与えていければ、十分得点のチャンスはありますよ」
「なるほど。そして、ビクトリーズの先発マウンドを任されたのは、ドラフト2位ルーキーの碧山です。ここまで防御率4,88の3勝8敗。前回登板が東北レッドイーグルス戦でしたね。
5回を投げて被安打7。与えたフォアボールは1つ。4失点で勝ち負けはつかずといった内容でした」
「なかなかね、このピッチャーもデビュー戦から勝てない試合が続きましたけど、横に縦に広く変化球を使いながらよく投げてますよ。コントロールもいいですしねえ。とにかく先制点でしょうね」
「さあ、今ビクトリーズの選手が順番にグラウンドへ散っていきます。今日は雲一つない青空でした。日光山に傾くオレンジ色の夕陽を浴びながら、碧山がチームの15にまで伸びてしまった連敗ストップを託されまして、碧山が先発マウンドに上がります。間もなく試合開始です」
「1回表、東京スカイスターズの攻撃は、1番。ショート、平柳」
スカイスターズファンの大歓迎に迎えられて、平柳君が打席に入る。
俺の背後に位置する応援団から太鼓とトランペットが鳴り響き、統率の取れた掛け声がスタジアム中に響く。
マウンド上の碧山君。ふうーっと大きく息を吐き、ノーワインドアップから足を上げて平柳に初球を投げ込む。
投げ出すように出した足でタイミングを取りながら、平柳がその初球を思い切りよく叩いた。
低めの球に対して腕を伸ばすようにして強く踏み込みながら打ち返す。
打球はまっすぐなセンター返し。
低い打球で、いきなりヒットを打たれてしまったかと思っくらいのライナーだった。
そして、その打球に対して、センターの杉井が思い切りダッシュしていく。止まって押さえる考えはなし。いきなりヒットにさせられるかと突っ込んだのだ。
しかし、無謀だ。
横から見ていたらよく分かる。
よくてショートバウンドで後ろに逸らさぬようになんとか出来るかどうかというところだ。
そんな打球を無理に突っ込んだ杉井が弾き………。
後ろに逸らした。
最悪だ。
しかし、弾いた打球が、カバーに走っていた俺の方向に向かってきたので、フェンスまで抜けようかというボールをなんとかギリギリで押さえた。
そしてそのボールを急いでショートの赤ちゃんに返す。
打った平柳君は勢いよく2塁ベースを回ったところでストップした。
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