中軸の方々。頼みますよ。

いわゆるその節目、節目のヒットを打つことが出来る度に、俺は気づかされていた。


俺にこれしかないのかと。


俺にはこれが出来ると。


俺にはこれが出来る能力があるかもしれないと。



初めは近所の友達と一緒に公園で遊んだ時に。


小学校のグラウンドで。


地元の市営球場で。


初めての人工芝である清原球場で。


那須塩原市内のバッティングセンターで過ごした8年の間も。


入団テストの会場で。


2軍の本拠地で。



そして、大阪サウザンドドームで。



俺は1本のライト前ヒットをそれぞれの場所で放つ度に、俺は確かな手応えと微かな自信を手にしてきた。



そう言った意味では、28歳でプロ入りしたこの野球道も決して無駄なものではなかったかもしれないと。



今では少しずつだが、そう思えるようになってきた。















まあ、そのせいでまだ童貞だけどね!








北関東 100 200 002  5


横浜 003 101 20×  7


勝 井之上 3勝4敗 負 糟谷 0勝1敗


本塁打 北関東 なし


横浜 筒薫12号3ラン(3回ウラ)



横浜が同一カード3連勝。横浜は1点ビハインドで迎えた3回、4番筒薫のバックスクリーンに飛び込む3ランで逆転。さらに7回にも筒薫がレフトへ技ありの2点タイムリーで貴重な追加点を上げた。


横浜先発の井之上が6回3失点、粘りの投球で今シーズン3勝目。


敗れた北関東は、プロ初先発の4年目糟谷が筒薫に痛恨の1発を浴びるなど、6回5失点で負け投手。打線も最終回2点差まで詰め寄ったが僅かに届かず、泥沼の12連敗を喫した。



勝利投手の井之上。


「今日は先制されてしまったが味方が逆転してくれると信じて投げた。次はもっといいピッチングをしたい」


逆転3ランを含む3安打5打点の筒薫。


「ホームランは低めの球をしっかりと捉えることが出来た、ホームランを打ちながら逆方向にヒットが出たのはいい傾向。調子を維持していきたい」


負けたビクトリーズ、萩山監督。


「まず負けてしまったことは本当に申し訳ない。だが連敗しながらも、簡単にやられる試合はなくなってきた。先発の糟谷も怯まずによく頑張ってくれた。次の北海道との連戦で、なんとか連敗を止めたい」






プロ野球において、連勝や連敗なんていうものはいつか止まるもので、俺も集中してプレーさえしていれば、そのうち勝てるだろうと思っていたのだが。



横浜への遠征から連敗を12と重ねて帰ってきた翌日。移動日なしで2位北海道フライヤーズとの3連戦。



相手もここまで3連敗中とまず1勝するには悪くない相手だったのだが、それ以上にうちのチーム状態が悪く、12連敗の流れをなかなか止められない。


横浜遠征では復調気配が漂っていた打線であったが、相手の若い先発ピッチャーの勢いあるボールに押されてなかなか打線が繋がらない。


初戦5安打1得点。2戦目は6安打2得点。


そのうちの1安打ずつは俺の流し打ちによるヒットなのだが、俺のそんなヒットがチームの貴重な1本になっているようでは非常に厳しい状況だ。


1番問題なのは、中軸の不調。


3番阿久津さん。4番赤月。5番シェパード。


連敗中、この3人に当たりが出ていないのは、チームとして非常に痛い案件だ。





3番の阿久津さんはプロ18年目の大ベテラン。福岡のチームにいた頃は、20代半ばからレギュラーとして活躍し、打率3割のシーズンも2度。ホームラン王と打点王も獲得したことがある強打者。


広角に長打が打てる勝負強いバッティングで頼りになるおじさんだ。


この前は、3打席連続ホームランも打っていたしね。


本人も言っていたが、ビクトリーズという新しい球団にきたこともあり、今年はキャンプ中から例年よりも多くバットを振り込み、若手主体の紅白戦にも少し顔を出すなど、実戦の打席を例年よりも増やしていた。


そのせいか、もう少しで前半戦終了となり、オールスター戦が行われてる時期なのだが、明らかに阿久津さんに疲労感があるのがよく分かる。


試合中には全くそんな素振りは見せないが、試合の前と後は、専属のトレーナーにマッサージを受けている時も、なにやら深刻そうな会話をしているし、最近は途中交代する場合も増えた。


正直、3塁手としても、守備範囲や肩に陰りが見えてしまっている感も否めない。


レフトから毎日見ていると、嫌でも気付いてしまう。


しかし、阿久津さんの代わりはいない。


少なくとも今シーズン中はどんなに調子を落とそうとも、彼の体が悲鳴を上げようとも、3番サードの阿久津さんが試合を休むわけにはいかないのだ。



こんなチーム状況では。

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