中華なんてどうでもよくなった新井さん2

「それでは、これからの抱負と言いますか意気込みを頂けますか?」


「えー、なかなかねチームが勝てませんけど、目の前の1つ1つのプレーに集中してチーム一丸となって頑張りますので、応援して頂けるとありがたいです」



「ありがとうございます。それでは最後に、新井選手を私のイチオシ選手として、これからも応援していこうと思うんですが、よろしいでしょうか?」



なあに? イチオシ選手って。よく分からないけど、ガッツリ向けられたカメラの前でだめですとは言えなかったし、すごい上目遣いで見てくるので、なんとなく了承してしまった。


「はい、オッケーでーす!」


カメラの横でじっと見ていた男性が景気よく取材を打ち切り、ほっと俺は安心した。


「いやー、新井さんありがとうございました。ところどころ水嵩の問いかけがちょっと不自然だったりしてすみません! なにせ今日が初めての取材だったもんで。いやしかし、新井さんが初めての相手でよかったですー。水嵩はうちの期待の新人アナウンサーなんで、また機会があったらよろしくお願いします!」


まるでまくし立てるように一方的に話され、なんだかこれから先、いろいろとありそうな予感がした。


まあ、無事にそこそこ真面目な新人選手らしく、しっかり受け答え出来たので、さて帰ろう、さて帰ろう。


「新井選手、すみません!」


「なーに?」


「写真1枚一緒に撮って頂いていいですか? 私のプライベート用で」




あらまあ。




プライベート用に? テレビとか関係なくってことかな。


まあ、いいけど。ディレクターっぽい男性も一緒に撮ってあげて下さいと、2人でお願いして来たので、後ろのパーテーションをバックにアナウンサーと並ぶ。


横浜の街で会ったときとはまた雰囲気が違うフォーマルな格好やメイクの彼女が、セミロングのつやつやした黒い髪の毛を一生懸命整えようとする姿にドキリとした。


「はーい、撮りますよー」


ディレクターがアナウンサーの私物スマホでパシャリ。


ただ立っているだけなのもあれなので、水嵩さんと同じ目線の高さに少しかがんで一緒にピースサインをして撮ってあげた。


すると彼女は……。


「あ、ありがとうございます! あ、どうしよう!

すごく嬉しいです!あの、またおでん食べに行きましょうね!」


まるで俺が命の恩人みたいに。そのくらいありがたがられる。


「あ、ああ。またそのうちね」


取材やインタビューをされないかわいそうなチームメイト達はみんな着替え終わってスタジアムの外に出ようとしているのが見えたので、俺は後ろ手を振りながら、その場から離れた。








そっかぁ。プロで活躍したら、こういう風に可愛い女子アナと知り合えることもあるんですねえ。










あかん、あかん。俺にはみのりんがいるんだ。




みのりん、みのりん。


女子アナがなんぼのもんじゃい。






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