ヒーローインタビューをしたい新井さん3

ヒーローインタビューをする。




俺はそんな目標を立てることにした。


横浜との3連戦で3連敗を喫して宇都宮に戻ることになり、 だいぶ自分もチームも落ち込んでいたので。


なにか目標のようなものがあった方がいいと思ったので、今俺が1番やりたい事をやってみようという気持ちになった。


まあその3連敗した夜に、試合後に女子アナから取材を受けましたから、家に帰ってポチりとテレビをつけて見ましたら、その様子が放送されていたわけですよ。


カメラの前でわちゃわちゃやっていたことが全部放送されたわけではなかったが、多少編集されて、使いどころがあったところだけみたいな感じだった。


それでも、ほんの40秒ちょっとではあるが、テレビに写った自分がどこかおかしくて、どこか誇らしかった。



案外いい感じに受け答え出来ているように見えたし、まあテレビ越しなんでイケメン度はちょっと下がりましたけど。


しかし、するとどうだろう。


わりと俺の中に常にある、目立ちたい心がふつふつと騒ぎ始めたのだ。



それでは何で目立ってやろうかと考えたら、やはりここはプロ野球選手らしくヒーローインタビューなるものをぶちましてやろうと思ったわけよ。



その日の各局のニュース番組がこぞって面白がって放送するような、そんなヒーローインタビューをかましてやりますよ。


ナイスアイディアだろう?






しかし、今日の相手は東日本リーグの首位を走る東京スカイスターズ。


2位北海道に4ゲーム差をつけて、開幕から東日本リーグの首位を快走している。


充実した先発投手陣。バランスの取れた切れ目のない打線。堅い守備。


磐石のリリーフ陣。


投攻守全てにおいて、最下位を快走しているうちとは数段レベルが違う。


試合前のフリーバッティングやシートノックを見るだけでも、本当にプロ同士なのかなと疑問に思ってしまうくらいのレベル差を感じる。


しかもうちは目下4連敗中で、この東京との3連戦を落とすようなことになると、4月と5月に記録した球団ワーストの7連敗がまた見えてきてしまう。



また大型連敗を喫するのは阻止しなくてはいけない。


となればまず、この初戦。調子のいい相手チームに臆することなく、堂々と立ち向かう勇気を持って戦わなくてはいけない。初回から積極的に、ピッチャーもバッターも攻めの気持ちを忘れずに。


ホームの利を生かしてなんとしても連敗を止めなくてはいけないのだ。



「続きまして、後攻の北関東ビクトリーズ、スターティングラインナップを発表致します」




連敗中ながら、お客さんは思っていたよりもたくさん入ってくれた。満員御礼にはちょっとほど遠いが、相手がスカイスターズというドル箱チームですから、ビジターのお客さんが客席を埋めてくれたおかげで、ホームなのに観客の割合はどっこいどっこい。



まあ、ガランガランよりかは全然ましだ。





北関東ビクトリーズスターティングラインナップ


1番 センター 柴崎 .238 2


2番 レフト 新井 .687 0


3番 サード 阿久津 .267 8


4番 ショート 赤月.247 5


5番 ファースト シェパード .213 6


6番ライト 桃白 .240 2


7番 キャッチャー 鶴石 .222 2


8番 セカンド 守谷 .250 0


9番 ピッチャー 広本 3勝3敗 防御率 3.98





シートノックが終わり、グラウンド整備が行われる中、いよいよ試合開始20分前になり、両チームのスタメンがバックスクリーンの大型ビジョンに写し出される。



ビジョンの真ん中では、カメラに抜かれた観客達が手を振ったりピースしたりしていて、その左側にはビジターチーム、右側にはホームチームのスタメンがズラリ。



12球団の中……いや、メジャーリーグの30球団を含めても、世界で1番デカイ自慢のLEDバックスクリーンにババンと表示されるわけですよ。



そして最も注目すべきは俺の打率よ。



.687って。


これで年俸300万て。



阿久津さんは1億5000万円、ファーストのシェパードも、この打率で1億5000万もらってますからね。





世の中おかしいですよ。


もし、俺の打率がこのままの数字でシーズン終わったら、年俸を20億は要求するからね。


覚えておきなさいよ。

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