ピッチングコーチさん、落ち着いて
埼玉 000 000 000 0
北関東000 000 01× 1
勝 連城 3勝4敗 負 桜池 8勝2敗
S 岸田 1勝2敗10S
本塁打 なし
北関東が接戦を制して2連勝。0ー0で迎えた8回北関東は、守谷のヒットと代打新井のトリッキーなバントヒットなどで1アウト2、3塁とすると、桃白の内野ゴロの間に貴重な1点を挙げた。
北関東先発の連城が8回8奪三振無失点の快投で、約1ヶ月ぶりとなる3勝目を挙げ、9回を締めた守護神岸田が自身初の10Sに到達した。
敗れた埼玉は、打線にあと1本が出ず、好投したエース桜池を援護出来ずに5連敗を喫した。
試合後談話。
勝利投手の連城。
「今日は桜池さんが相手ということで、思いきって投げることに集中した。鶴石さんが上手くリードしてくれたし、野手の皆さんにも助けられた。今日の勝ちは自信になる」
敗戦投手の桜池。
「ピッチング自体は悪くなかったので、次にも生かせる。点が取れない時もある。なんとかチームの連敗を止めたかったが。先に点を与えてしまったのが悔しい」
負けた埼玉監督。
「長いシーズンこういうこともある。今日は相手の守備が粘り強かった。初回の満塁のチャンスで点が取れなかったのが全て。切り替えて頑張ります」
翌日。
「これもいい当たりだ! 4番フェルナンドの打球も左中間を破っていきます!!」
埼玉ブルーライトレオンズの4番、フェルナンドがインコースのボールを捉えると、打球は左中間へ。
ベンチから見ると、まるで青空に吸い込まれるかのような勢いで打球が飛んでいった。
センターの柴ちゃん、レフトのシェパードがその打球を追いかけるが、ボールはビクトリーズスタジアムの左中間フェンスに直撃。
そのボールを柴ちゃんが拾って中継に返す間に、相手チームのランナーが2人、ホームに返ってきた。
2塁ベースに到達したバッターランナーのフェルナンドは、大きな体で跳びはねるように喜びを表す。
今日こそは連敗を止めたい相手チームにとっては貴重な先制タイムリーである。
相手チームの持ち味は、東日本リーグ屈指の強力打線。今シーズンも、6月にさしかかったここまで、チーム打率、チーム本塁打ともに12球団トップ。
1番から8番まで、他のチームならばクリンナップを張れるような打力を持つバッターがズラリと並ぶのだ。
だからこそ、昨日の連城君と最終回のキッシーで完封したのが奇跡に近い試合内容だった。
今日先発のうちのピッチャーも、決して悪い球を投げているわけではないが、今日は埼玉の選手達の目の色が違う。
最下位のチーム相手に3連敗してなるものか!
そんな雰囲気だ。
「うーん。またフォアボール! これで満塁になります。さすがにここは北関東ビクトリーズ、吉野ピッチングコーチがマウンドに向かって、時間を取ります。ベンチから出て参りました」
「んー、今のも悪いボールではないですけどねー。やっぱりコースを外れているんですよね。バッターと勝負しきれていないというか。
こういう場面をなんとか凌いでいかないと、チームの信頼は得られません。先発ローテーションには定着出来ませんからねえ」
大事なカウントで何度もきわどいところをことごとくボール判定され、ふざけんなよと、声を荒げていた吉野ピッチングコーチがマウンドに向かった。
1軍のピッチングコーチ。普段はピッチャー陣に、冷静に冷静になってしっかり投げろと口癖のように言っているくせに、不甲斐ないピッチングが続いたり、ピンチになると、頭に血が上りやすい、エネルギッシュなおじさんだ。
そんなおじさんが怖い表情でマウンドに向かう。
そこで集まった内野陣とバッテリーの真ん中で、身ぶり手振りで色々ジェスチャーしながら、何か叫んでいる様子だ。
「マウンド上では吉野ピッチングコーチがいつものように、鬼の形相でバッテリーを鼓舞していますね」
「彼は現役時代から、熱い選手でしたよ。どんなに強打者でもインコースをバンバン突いたりしてねえ。負けん気が強いタイプですから、逃げのピッチングを許せないんでしょう。血圧が上がりすぎなければいいですが」
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