何かをもらう新井さん。

「よっしゃあ! 見たか、野郎ども!!」


俺はまるで会心のゴールを決めたサッカー選手のように力強く右手を突き上げながらベンチを戻る。


「イエーイ! ナイスラン!!」


「ナイス!新井、お前結構足速いな!!」


「ナーイスバッティング!!」


俺がベンチに戻ろうとすると、何人もの選手がまるで俺がホームランを打ったかのようにベンチを飛び出し、俺を出迎える。


俺のヘルメットを取り、俺の背中を叩き、俺とハイタッチするまで手を上げ続ける。


もう交代した選手も、今日出番のなさそうな投手陣も、裏方のスタッフさんも。


俺の上手くいった一連のプレーでみんなが1つになった気がしたのが何より嬉しかった。


まるで自分の活躍のように喜んでくれて、自然とあちこちから声が出て賑やかになる。


ベンチに戻ってようやく落ちつくと、知らん偉そうなコーチが現れて、黙ってただベンチに腰を下ろした俺と握手をして、また監督の側へと戻っていった。









1点リード、最後のバッターの打球がセンターに上がる。


俺はそれをレフトの位置からベンチに向かって歩を進めながら見上げる。


高く上がったフライをセンターの子が掴み、無事試合終了。


俺の長駆生還により得た2軍の北関東ビクトリーズが1ー0で接戦をものにして、連敗を5でストップした。


俺は3安打した満足感から笑顔で内野グラウンドまで走り、選手達と順番にハイタッチをかわしていく。


10日ふりの勝利に選手達はテンションが上がり、試合のない明日明後日となんとかマシな気分で過ごせそうで、監督やコーチ達め安堵の表情でベンチから引き上げていく。


「よっしゃ、やっと勝ったぜ」


「今日はピッチャー陣がよく頑張ったよなー」


「ミーティング終わったら飲み行こうぜ」


対して数字に残る活躍はしていないスタメンの野手達に続いて、俺もベンチを片付けてロッカーへと引き上げる。


「新井さん!」


すると、なんか知らん女性が紙袋を持って俺を待っていた。







「おめでとうございます! こちらをお受け取り下さい!!」


黒いおしゃれなスーツに身を包み、黒い髪の毛はヘアアイロンでウェーブがかけられており、清潔でスマートな印象を受ける女性が紙袋に入った何かを俺に差し出した。



「どうも」


とりあえずもらえるものは遠慮なくもらっておくスタイルの俺はバットを持つ手でその紙袋を受け取る。


チラッと見た中身は、少しずっしりとして重たく、丁寧にいかにも質の良さそうな紙に包まれている。


お菓子か何かだろうか。


「すんません、これはなんです?」


「今日新井さんは、猛打賞を獲得されましたので、ゲームスポンサーの宇都宮桃菓堂さんより、猛打賞の贈り物です」


えっ! 2軍でも猛打賞でプレゼントがあるんだ!せっかくなら、お肉とかそういうのがよかったなあ。


「それでは失礼致します」


「はーい、どーもでーす」

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