ギャル美のお部屋にお泊まり1
「ほんとだよ。マイちゃんは今でこそ、濃いメイクしたり、少し派手な服を着たりするけど、すごくおとなしい子なの。ずっと何か我慢してるんじゃないかって、担任の先生が変わる度に、私に聞いてくるくらい」
ほんとかよ。ギャル美なんて、やかましい存在の象徴みたいな奴で、何かあったら俺に絡んでくるし、面白がって肌の露出をアピールしてきたり、形がいいからと、軽く胸を当ててきたりするビッチ系ギャルだと思っていたのに。
「マイちゃんが変わったのはね。さやかちゃんがバイトしてる喫茶店で新井くんと出会ってからなの」
ああ、そういえば、そんなこともあったなあ。
シェルバーに行って、そこでも初対面だったポニテちゃんに案内された隣のテーブルにギャル美がいたんだよなあ。
ランニングして汗だくの奴が隣座ってる。チョー、ウケるんだけどとか言われて、俺いろいろ言い返してやったことも思い出した。
初対面で失礼なギャルだと、その時はそうとした思わなかったけど。
「マイちゃんが今みたいに明るく振る舞うようになったのは、新井くんに出会ってからなんだよ。それまでは、たまにスマホでメッセージ交換するくらいで、私の部屋に来ることもあまりなかったもん」
山吹さんはそう言った後、どうしてだか少し不満そうな表情を浮かべた。
「私としてはちょっと複雑かな。小さい頃からずっと一緒いたマイちゃんが、新井くんに出会った瞬間にあんな風に明るくなっちゃうなんて」
まあ、それはそうだけど。と言っても女の子同士だし。
そんなに気にする必要は………。
「みのりさーん。お疲れ様でーす!」
気がつけば、みのりんが勤めている洋菓子工場前まで来ていた。
その入り口の近くには、若い女の子が何人か、みのりんを見つけてこちらに手を振っている。
JDさんかなあ? 遠目から見ても可愛い感じだなあと、よだれを垂らした俺の額をみのりんが小突く。
「これ以上は来ちゃだめ。バイバイ、新井くん」
みのりんはそう言って、慌てるように立ち去ってしまう。
しばらく見ていると、女の子達と合流したみのりんは恥ずかしそうに首を振り、女の子達は、俺の方を見ながら冷やかしているようだ。
その光景を見ていてなんだかほっこりした気分になった。
「コラ! なにニヤニヤしてるのよ!」
「ギャー!!!?」
背後から肩に手を置かれ、びっくりして心臓が飛び出そうになった。
いつの間にか、ギャル美がいたのだ。
「びっくりしたー。どうしたの、マイちゃん。こんなところで」
「別にー。今仕事終わってスーパーまで車で送ってもらっただけよ。クライアントの方から急にスケジュールの変更があってね。今日までに目処をつけなきゃいけなくて………」
そこまで話して、ギャル美は左手にしている腕時計を確認した。
今の今までギャル美の話をしていたから、まさかのご本人登場に俺の心臓がなかなか鳴り止まない。
「ねえ、今から帰って飲むから、あんたも付き合いなさいよ。どうせ、寝るまで暇でしょ?」
ギャル美の手にはスーパーのビニール袋。
中には缶ビールやチューハイの背の高い缶。それと、カップラーメンやインスタント食品が入っているのが見える。
明日も2軍の練習があるから多少悩んだが、なんとなく断るのも彼女に悪かったので、あえて下心丸出しな感じで返事をした。
「なによ、気持ち悪い顔して。ほら、さっさと行くわよ」
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