新井さん、舞い戻る1

「監督、見てください! 足首はなんともないです! ほら、この通り!!」


次の日。巨乳ポニテちゃんに至れり尽くせり、いろいろしてもらって俺の足首は絶好調。


昨日の痛みが嘘のようにひいていたのだ。


痛くする前よりも調子いいくらい。


それを2軍監督にアピールして1軍にあげてもらおうと、監督室に赴いて、全力のコサックダンスを披露した。


「まあ、よくなったのは分かったけどよ。あと6時間後には1軍は大阪サウザンドドームで試合なんだぞ今から合流しても………」


と、2軍監督が言いかけたところで、監督室の電話が鳴り響く。


「…………1軍監督からだ」


電話機のディスプレイを見てから、2軍監督は電話を取る。



「はい、もしもし。ええ…………はい。………一応本人は大丈夫と言っていますが…………よろしいんですか?…………分かりました」



ガチャリと電話を置いた2軍監督が金庫からなにかを取り出した。


「大阪駅までの新幹線のチケットだ。早く1軍に合流しろ! 1軍監督からのご指名だ!」



「サー、イエッサー!!」











遠い。


宇都宮から大阪サウザンドドームって遠い。6時間以上かかっちゃったよ。


ちょっと舐めてましたわ。


宇都宮から東京駅までピュイーン。


東京駅から新大阪駅まで新幹線でピュイーンで、ドームに着くと思ってたけど、そこから何回か電車に乗り換えるなんて。


すっかり時間がかかってしまって、ドームに着いた時には、既に試合が始まってしまっていた。


慌ててドームの中に入り、ロッカールームに飛び込む。近くにはマネージャーがいた。


「あ、新井さん! お疲れ様です!! ずいぶんかかりましたね。試合始まっちゃいましたよ」



「ああ、そうだよね。こんなことになるなら、ケチんないでタクシー使えばよかったよ」


荷物を下ろして、急いでスーツからユニフォームに着替える。


しかし、大阪サウザンドドームのロッカーめちゃめちゃ広いな。ここで軽くキャッチボール出来るくらい。でっかいテレビもあるし、コーヒースタンド置いてあるし。


リクライニングチェアも1人1つ備え付けられているし。


やっぱり凄いな。プロ野球って。









急いでユニフォームに着替えて、とりあえずベンチ裏へと行ってみる。


すると、そこには水分を補給していた柴ちゃんと浜出くんの姿が。


「よー、2人とも。がんばっとるかね」


俺が背後から声をかけると、2人は心底驚いた様子だ。


「新井さんじゃないっすか!」


「うわ! マジできた!」


「浜出くん、マジできたとはどういうことや。1軍に定着してるからって調子に乗ってんじゃねえよ。打率1割台のくせに」


俺を疫病神のように見た浜出くんの坊主頭にヘッドロックをかける。彼はタップしたが、10秒くらいそのままにしてやった。



「俺がいなくて寂しかっただろ? また負け始まって、今4連敗中だしな」


「まあ、今も負けてますけどね」


柴ちゃんにそう言われ、そーっとベンチ裏からグラウンドの方を覗いてみた。


すると………。



北関東 00            0


大阪 34            7





思ったよりだいぶ負けてた。

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