小技でアピール新井さん。

「バカ野郎!! 何をやってんだ、お前は!!」


盛岡駅から仙台駅にやって来まして、タクシーでスタジアム宮城に参上しましたよ。


杜の都ですよ。初めて来ましたけど、仙台はいい街だなあ。せっかくだから、牛タンのお店に行ってみたいなあ。



という感じで監督室に呼ばれたので向かって見たわけですが。


「居眠りして乗り過ごすだしただと!? ふざけてんか、お前は!」


まあ、怒られましたよ、予想通りね。そもそもマネージャーがちゃんと新幹線のチケットを確認していればこんなことにはなりませんでしたけどね。


「そしてお前は、説教されながら何ライスバーガー食ってんだよ」


「監督、牛タンライスバーガーです」


「今日の試合、お前は使わん! バッティング練習もするな! ずっと球拾いしてろ」




「はーい。失礼しましたー」



全く。部活かよ。





「北関東ビクトリーズ、選手の交代をお知らせします。バッター、乃木に代わりまして、新井。背番号64」


おいおい、監督さんよ。今日は俺を使わないんじゃなかったのか?



なんで9回表の重要な場面に俺を代打に送ってんだよ。


「さあ、バッターはルーキーの新井が代打で出て来ました。昨日昇格したばかりの右バッターですね。現在4ー4の同点。ノーアウトランナー1塁でどんな作戦を立ててくるでしょうか」


今日は試合に出さないって言われたから、毎イニング。ベンチ裏のケータリングのおにぎりを1個必ず食べるという縛りプレイをしていた俺は、おにぎりのせいできつくなったベルトを少し緩めて、ゆっくりと打席に向かう。



そして、バッターボックスの横でサインを確認してみたが、案の定送りバントだった。



「ピッチャー投げました。………新井はバントしました。……ピッチャー前これはいいバント、1塁へ投げて………1アウトランナー2塁になりました。ビクトリーズ勝ち越しのチャンスです」



「2番高田の打球もいい当たりですがセンター正面! 掴みました! 3アウトチェンジ! さあ、東北同点のまま9回ウラを迎えます!」


1番の柴ちゃん。2番の高田さん。ともにいい当たりも、センターの正面で得点ならず。


俺のバントで送ったランナーがホームに返ることはなかった。


チェンジとなり、9回ウラの守りとなった。レフトを守るシェパードが若干の守備難なのでもしかして………。


などと一瞬考えたりもしたが、バントをしただけで俺はお役御免となってしまった。


そして、ベンチ裏から、うちのチームのストッパーが同点の場面でマウンドに上がった。


「北関東ビクトリーズ、選手の交代をお知らせします。代打に出ました新井に代わりまして、ピッチャー岸田。背番号28!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る