反撃のビクトリーズ1
「オッケーイ!! ナイスピッチング!」
「いいぞ、ロンパオ! よくしのいだ!」
奇跡的なピッチングでノーアウト満塁のピンチをしのいだロンパオがベンチに戻ってくる。
「アリガトゴザイマス。アリガトゴザイマス」
グラブを外して、ニコニコした真ん丸顔のロンパオがベンチに駆け足で戻り、次々とハイタッチをかわしていく。
みんな彼のピッチングを称賛しているが、俺は見逃さない。俺だって高校時代までは、ピッチャーだからな。ただ、ベンチでぼんやりしていたわけではなかったのさ。
ベンチの1番後ろに座り、タオルで汗を拭うロンパオに声を掛ける。
「おい、ロンパオちゃん。最後の球は高めのボール球にするやつだろ。アホなコントロールミスするなよ。鶴石さんにも後で謝っとけよ」
「サスガアライサン。ヌケメナイネ」
「北関東ビクトリーズ、選手の交代をお知らせ致します。バッター、リ・ロンパオに代わりまして、川田。ピンチヒッター、川田。背番号40」
8回ウラ。打順はリリーフに上がったロンパオから、当然代打が送られる。
相手先発もいまだに無失点。球数も少なく、点を取られるまで続投の気配だ。
まだスタミナ十分。ボールの威力もコントロールも衰えているようには見えない。代打に出た川田が3球目を打つも、力ないセカンドフライに終わる。
そし打順はトップの柴ちゃんに回る。
「さあ、バッターボックスには1番の柴崎です。今日はヒットを1本、4回に放っている柴崎です」
「今日のね、ビクトリーズ打線の中では1番タイミングは合っていますね」
「その柴崎が打ちました! 打球は三遊間!………あっと! サードが弾いた! 投げられない! 記録はサードのエラーです。1アウト1塁。さあ、柴崎が出塁しました!」
柴ちゃん当たりは三遊間への微妙な当たりのゴロ。ショートが打球を処理していては、左バッターで俊足の彼を1塁で刺すことは出来ない。
もちろんそれを理解していた相手チームのサードは前進して打球を掴みにかかったがハーフバウンドになったボールをグラブで弾いた。
すぐに拾って投げようとした時には、柴ちゃんは1塁ベースに到達しようとしていた。
「2番ファースト、高田」
バッターボックスには、2番の高田さん。今日はまだノーヒットではあるが、送りバントの失敗を取り返そうと、この打席は燃えているはずだ。
「バッターは2番の高田。2点差ですから、バントはないでしょう。………ピッチャー投げました! 初球打った! 打球は三遊間……破っていった!! さあ、繋がりました、1アウト1、2塁! 打順はクリーンナップに回ります」
「3番サード、阿久津」
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