柴崎、三振マン。

「センター!! センター!!」


そろそろ日が少しずつ傾き始めた空に白球が上がり、それをセンターの柴崎がフェンスいっぱいのところでキャッチした。


「オッケイ! ナイス返球!」


柴崎は足速いし、肩も強いな。センターのバックスクリーン前からワンバウンドで2塁上にストライク返球だ。


さっきのフリーバッティングだって、30スイングで7、8発スタンドに放り込んでいた。


あまり聞かない大学のユニフォームを着てるけど、きっとバリバリ4番張ってたような奴なんだろうな。


俺は腕組みをしながらまたそんな事を考える。


もう2周り目の下位打線だけど、1球もレフトに飛んで来ないよ。


「ヘイ!! もう1丁センターに打てセンターに!! レフトも声出せよ、コノヤロー!!」


一応俺のが5つは年上なんだぜ? 柴ちゃんよ。



「いいね! ショート、ナイスプレー!」


「よーし、こっちは点取りまくるぞ!」


ランナー2塁で最後のバッターの時にやっと俺のところに飛んできたと思ったら、ショートがダイビングキャッチしやがった。


最後の最後で、レーザービームを披露してやろうと思ったのに。


まあでも、難しい打球が飛んできて下手にエラーするよりはよっぽどましと自分に言い聞かせて、バットを手に取る。


敵チーム。マウンドに上がった左ピッチャーのタイミングを取る。


なんだか体格のいい、もっちゃりとしたピッチャーたま。


なんとかズと胸のところに書いてあるが、全く読めない。


独立リーグのピッチャーなのか、はたまた社会人なのかもよく分からない。


とりあえず、がっしりとした体型のゆったりとしたフォームで、今日見たピッチャー中では今日1速いストレートとカーブ系の変化球を投げている。




「よっしゃあ!!」


後攻組の1番打者は、センターの守りでいいプレーを連発していた柴崎。


フリーバッティングでも、何発ものサク超えを披露しており、あとは実践的なバッティングはどうだろうかというところ。


相手左腕に対して高く足を上げてタイミングを取る柴崎。


「ストライーク!!」


初球、アウトコースいっぱいに重たそうなストレートが決まる。


マウンド上の左腕はがさつに足場をならしながら、左手を丸めて息を吹き込み、指先を温める。


対する柴崎が1度ヘルメットを外して汗を拭う辺り、あまりボールが見えなかったのだろうと考えがつく。


俺も他の後攻組と一緒に素振りしながらタイミングを図るが、今ではあまりいない2段モーションに近いくらいに足を上げてからのタメを作るピッチャー。


打席では多少ボールが見えにくく、タイミングが取りづらいのかもしれない。


「ストライクツー!!」


2球目は縦に大きく割れるように曲がるカーブ。あっという間に柴崎は追い込まれた。


「スイングアウト!!」


そして、簡単に三振した。


最後は柴崎から見て1番遠いところ。アウトコースいっぱいに投げ込まれたストレート。1番打者である柴崎のバットが空を切った。


「ちっ………」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る