第2話 村での出来事
村についてから私は御者に病院へと連れて行かれた。
病院で少し休んで、村の宿で一晩お世話になることになった。
宿の装飾は既視感のあるものばかりで、とても違和感を感じた。
私は一度、この村に訪れたことがあるような気がする。
樹木の中を切り抜いて作ったような広々とした空間、アンティークな小さなライトや時計、古びた椅子やテーブルも見覚えのあるものばかりだ。
この村にきたのも、この宿に泊まるのも初めてのはずなのに...。
その時、脳裏に私とよく似ている女の人が、この部屋で目を瞑って椅子に腰かけて、ゆったりしている風景が思い浮かびあがる。
私は一体何者なのか... どうして自分の名前も、あそこで倒れていた理由も思い出せないのか、釈然としない気持ちでいた。
宿で一晩お世話になったあと、行く宛てもないので、村で鍛冶屋を生業としているお爺さんの家でお世話になることになった。
「数日間、よろしくお願いします!」
宿のお姉さんに連れられ、これからお世話になるお爺さんの家の前で大きな声で挨拶をした。
お爺さんに家の中に入るように言われたので、お姉さんに御礼をして、恐る恐る家の中に入った。
家の中はとても綺麗で、窓からは鬱蒼とした森が見える。本棚には、古そうな分厚い本が並んでいる。
お爺さんに声を掛けられ、私の部屋へと案内された。部屋には、木で彫られた動物の彫刻が陳列されている。
少し気味が悪く感じたが、よく見てみると、とても細かく丁寧に彫られていて、気味悪さなども感じなくなっていた。
今晩の食事は、ライ麦パンと鮭とシチューだった。最近、まともに食事が取れていなかったので、とても美味しく感じた。
食器を洗って、部屋に戻り、何となく本棚にある本を手に取った。
蒼の塔の徘徊する騎士という、なんとも読者に興味を湧かせないような題名だ。
お風呂が沸くまで時間もあるので、少し読んでみることにした。
本を読んでいると、私はあることに気付いた。本に出てくる主人公らしき女の子が私にそっくりなのだ。
私はゾッとした。偶然にしては、あまりにも私の今までの体験と似すぎている。
その時、忽然とお爺さんが現れた。
読書に夢中で、ドアが開いたことにすら気付いていなかった。
「すまない。村の近くに魔術師が現れて由々しき事態だったので、念の為に地下の倉庫に隠れてくれないか..」
私は小さく頷いて、本を閉じて本棚に戻した。お爺さんに連れられて、地下の倉庫に入った。
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