蒼の塔の徘徊する騎士
CastleJP/やま
第1話 はじまりの洞穴
「ん..?ここはどこだ...」
気が付いたらどこかわからない薄暗い場所にいた。自分が誰なのかもわからない。
さっきまで何をしていたのかも思い出せない。
視線を動かせば、風化した建造物がちらほら見えるが人がいる気配がない。
地面にはたくさんの建物の瓦礫や動物の骨らしきものが転がっている。
建物にはいくつか共通点がある。壁に見覚えがあるような模様が描かれている。
そしてドアがない。気味が悪い。
そのときだった。嘔吐を催すような眩暈がいきなり襲ってきた。
私は閑かに倒れ込んだ。体も思い通りに動かすことができない。
私はそのまま目をそっと閉じた。そしてそのまま眠りについてしまった。
何時間経ったのだろう。ふと目を覚ました時に私の体に振動が伝わる。
地面にも違和感を感じた。私は地面を触ってみた。
すぐにわかった。
私は馬車に乗せられている。
「誰か私が倒れているところを発見してくれて助けてくれたのだろうか。」
私はそう思い至った。だが、この馬車はどこに向かっているのだろう。
とても嫌な予感がする。不安が脳裏をよぎった。
周りを見渡してみると、椅子の上に水筒と一切れのパンと手紙が置いてあった。
手紙には、お腹が減っていたら少ないですが、水とパンを召し上がってくださいと書かれていた。
お腹が減っていたので、ものの数分もしないうちに食べた。そして目の前にいる御者に恐る恐る話し掛けてみた。
私は食事を出してくれたことに感謝していくつかの質問を問いただしてみた。
御者が言うには、御者の住んでいる村に灰色のマントをしたおじいさんが私を抱えてこの子を村の病院で診て欲しいといってた。
だが、その村には病院はなく、断ることもできないので、仕方なく数キロ離れた大きな村にある病院に連れていく最中だったらしい。
御者に名前を聞かれたので、適当にリサという名前だということを教えた。
気付いたら体調も良くなっていたので、御者にこれ以上迷惑を掛けたくなかったので
ここで降りることを伝えた。御者には、せっかくだから病院まで送って行ってあげるといわれた。
ここで降りてもこれからどこに行けばいいかもわからないし、自分の名前すらも思い出すことができないので、降りるか降りないか逡巡したが、病院のある村まで馬車で送って行ってもらうことにした。
それに村で何か手掛かりを掴むことができるかもしれない。御者には申し訳ないという気持ちでいっぱいだ。見ず知らずの人にこんなにまで優しくしてもらったのは初めてだ。
そのとき、私の脳裏に私が大きな影に足を引っ張られていく様子が過る。
私はゾッとした。精神が今にもおかしくなりそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます