生きているけど死にかけている。
りょう。
第1話
よくわからないけど、腕を折ってみたくて持っていた傘を真横に突き出した。
すでに近くまで来ていたトラックに傘は引っかかり、私の腕を考えられない程真後ろに引きさいていた。
その激痛は今までに感じたことのない刺激となって脳へとかけめぐると、私は意識を失った。
それは悪魔のささやきだったのだろう。
なぜ腕を折ってみたくなったのか気がしれない。
ただ、現実に私の左腕はもがかけ、そして今まで通りには機能しなくなってしまった。
特段ピアノを習っていたとか体操をしていたとか、全くと言っていいほど特技がない私には、キーボードが打てなくなる事による打撃の方が強く感じる。
ただ、無難に手を前に出すだけなら、この調子だと問題なく行えるようになると先生からは話があった。
だからそう、別に、今やっているただ入力をこなす事務仕事には全くもって影響がないらしい。
ただ、今後左腕を使うことが不便になるだけで済んだ事は本当に運が良かったことだと懇々と説明をされたのは非常に億劫ではあった。
私には何もない。
何もないから何か刺激が欲しい。
その腕の痛みは、私の中でとても快感であるように頭に残ってしまった。
けれども言い訳をきいてほしい。
「ちょっとくらい大丈夫だよ」
そんな声が聞こえた気がしたから、腕を真横に出していたと。
甘く、痺れるような声が聞こえたから、私は従ったまでなのだと。
その声が聞こえたら、私は東京タワーからだって飛び降りてしまえそうだ。
だって私は、ちょっとくらい死んでみても大丈夫な人間だから。
生きているけど死にかけている。 りょう。 @ryo_tamaki_syo
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