二の死
「使用と取得が選べる!? ならここは取得だな」
手から巻物が消えてGUIが開き『鑑定スキル1を取得しました』の文字が現れた。
【名前 世界航】
【種族 人族】
【年齢 21歳】
【状態 健康】
【職業 】
【スキル ステータス開示・鑑定1】
【固有スキル 訓練所作成】
鑑定はレベル設定があるのか。
「鑑定、本」
魔導書グリモ(未開放) 等級 並 補正効果なし
概要
魔法の巻物を登録することで、所有者が魔法を取得・行使できる。
解放には使用者の血液による登録が必要。
手に持って魔法を使用した場合、発動成功確率が上がる。
作本と筆写のスキルレベルによっては補正効果が付くこともある。
おお、鑑定凄いぞ。そしてこの魔導書を使うには初めに登録が居るのか。
そうなると他人の魔導書は使えないという事か。
俺はナイフで、左腕をちょっと切って、血を出す。
指先は切らない。
だって、指先の怪我って地味に痛いし、治りにくいし。
その後は無事に、残った巻物を全て魔導書に、登録することができた。
一応登録前に、巻物を鑑定したところ、巻物の状態で使用すれば、100%の確率で魔法が発動するが、魔導書が消えるため使い捨てになる。魔導書に登録した場合は、練度によって発動率が変わるらしい。ゲーム当時は、能力値同様に練度も数値化されていたのだろうけど、ゲームではなくなったこの世界では、数値では示され無いようだ。
魔導書を左手に持ち、回復の頁を開く。
紙面には魔法陣と呪文が書いてあるので、右手を傷に当て呪文を唱える。
「万能なるマナよ、その力をもって、傷を癒せ。ヒール」
呪文は割と短くて簡素だった。
俺は全ての魔法を取得できるようだけど、魔導書に登録した時点で、練度が100%に達していたらしい。そして魔法を取得してわかったのが、呪文の長さとつぎ込まれる魔力量は比例していて、高威力の魔法には長い詠唱が必須のようだ。
つまり。
『呪文はイメージだ!』
といって、どや顔するのは無理だということだ。
一応、注つぎ込む魔力路が拡大すれな、短い詠唱でも多くの魔力を注げるようなので、そちらのスキルを習得すれば、誤魔化せなくはないが、そこまでする意味もないと思う。
そして、さっき唱えた基本呪文の最後は、何故『ヒール』なのか? 俺は、単純に開発者のミスだと思っているので、まだ見ぬこの世界の住人が、同様の疑問を感じていないことを、切に願う。
机を漁っていくと、鍵が一つと葉巻、それと変わったワンドが出てきた。
聖職者が葉巻をたしなむのか?
そんな疑問を感じた俺は、葉巻を鑑定する。
葉巻 使用中は、精神混乱系の攻撃に耐性がつく。
どうやら葉巻は嗜好品ではなく、アイテムだったらしい。
続けて俺は鍵とワンドも鑑定する。
鍵 教会の武器庫の鍵。
ワンド 閃光のワンド
サービス開始10周年を記念して配布された、とてもハッピーな品。掲げると閃光を発する魔法のワンド。閃光発動時は、一時的に使用者が全裸になるが、光の目つぶし効果が裸体を隠してくれる。
全裸時ステータス上昇補正あり
「馬鹿じゃねえの! 運営もう少し真面目にやれよ、そんなんじゃ潰れ、って、もう潰れていたよ! ほんと馬鹿だろ!」
元運営へ、決して届くことのない悪態をぶつけた後、見つけたアイテムをバッグに詰めていく。魔導書だけは頭陀袋に入れておこう。頭陀袋は死んでも無くさないみたいだからね。
その他、クローゼットやキャビネット、ついでに遺体もバッグに吸い込ませておく。大きさ的にはどう考えても入らないはずだけど、あの四次〇ポケットのように、家具が端から細くなって、バッグの中へと入っていった。
遺体は折を見て埋葬してあげようと思う。
幸いGUI上で操作すれば、直接触れずにバッグから、取り出せるようだからね。
武器庫を探すために、一旦部屋を出る。
事務室で本と服を回収して、休憩室から食器やカトラリー、炊事場から汚れの少ない、鍋などの調理器具も回収する。
礼拝堂に戻ると、当然そこは白骨だらけだ。
バッグに回収してやりたいが、先に回収した白骨に、司祭の遺体と明記されているので、遺体はスタックせず、個別収納になってしまうようなので、あきらめた。
このバッグ、同じ品なら99個までまとめられるけど、収納できる品数は25種しかないようで、遺体の数はそれを超えるのだ。バッグは、NPCだった司祭が持っていた物なので、たぶん高スキル持ちのプレイヤーが、作ったものとは違うと思う。彼らの製品が手には入れは輸送量も増えるのだろうな。
礼拝堂を見回すと、物陰にもう一つの扉を見つけた。
扉を開いて先へ進む。
右手に扉、左手に廊下があり、廊下に面していくつかのドアがあった。
「近いところから確認するか」
ノブを回すが開かない。
先程の鍵を取り出し差し込むと、すんなり入ったので、そのまま回す。
カチッ
プス
「あうっツ、罠か⁉」
鍵が開いたと思い、ノブを回そうとすると、突然手に針が刺さった。
針は緑色に染まり、刺さった部分から、溶けて汁を滲ませていた。
「まさか毒⁉何で教会に、毒の罠があるんだって、むしろ当然か」
ここは元ゲームの世界。
町の中にある教会の武器庫に押し入って、そこから武器を盗もうなんて奴は、プレイヤー以外に居やしない。
罠はプレイヤーに合わせた物になる。
すぐに針を鑑定する。
鑑定 針
接触すると強い痺れを生じる痺れ草の汁を塗布した毒針。
常温では毒汁が凝固するが、動物の体温では凝固した毒溶けだする。劣化が少なく、長期間使用できる。即死することはないが、数分で呼吸器が麻痺するため、窒息を引き起こして死に至る。
「体温で溶ける毒かよ!」
左手で針を抜き、バッグから毒消しポーションを取り出す。既に右手は動かないが、バッグの口を広げるだけなので、片手でもどうにかなった。そして栓を引き抜くために、歯でくわえた時に、はたと気が付いた。
『これ、死んでも問題なくね?』
蘇生ポイントはすぐそこにあり、邪魔をする存在は居ない。アイテムの回収に困る事もなく、少しの苦しみを耐えれば、貴重な毒消しポーションを使わなくて済むのだ。
『そうだ、今は待てばいい。もう舌も回らないから、直ぐに…』
…。
「っしゃー、俺復活!」
予定通りに復活して、バッグを担いで武器庫のドアを開ける。
ドアを開ける際に、邪魔になった俺の死体は、バッグの中にしまってある。
復活した時、俺の死体は全裸でドアの前に、倒れていたからだ。
たぶんゲーム当時はパンツなり、モザイクなりを装備していたのだろうけど、現実化した世界では、装備を剥かれた死体は完全全裸、パオーンも丸見えだった。
武器庫の中を見回せば、ずらりと並んだ打撃武器…という事もなく、普通に剣や槍が並んでいた。勿論メイスやモーニングスターに弓や盾などもあった。
「う~ん。…全部持っていくわけにもいかないから、それぞれ2つ…メイスは少し多めに持っていくか」
出番のなかったスタンドポール改を放り捨て、武器を鑑定しながら、出来の良いものを選んでいく。出来が良いといっても、ほとんどが普通等級なので、むしろたまに混じっている習作や、欠陥品などを避ける感じだな。
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