第17話 終章

 ◆


「おはよー、若奥様!」

 大学の門をくぐるとミコが後ろから抱き付いてきた。

「おはよう、ミコ」

 僕はミコに微笑んだ。

 ミコが真っ赤になって、僕からぱっと体を離す。

「やだ……烈……色っぽくなった。くっそ~、この若妻め! やったな? やったんだな? 後で聞かせろよ~、若奥様の閨房術けいぼうじゅつ!」

 ミコが声を潜めて言う。

「だ、誰が言うか! 恥ずかしい!」

「ふひひ、でも烈、一コマ日記に描いていたでしょ? 二匹の白豹がくるまって寝てるトコ。あれが初夜?」

「え? あれは白無垢姿で僕が紅にお姫様抱っこされたシーンだったんだけど……」

「なにそれ! 白無垢でお姫様抱っこって! うわ~、それは読めなかったわ~、このヘタ馬神うましんファン第一号のミコ様が! く~」

 ミコが悔しそうに地団駄じだんだを踏む。

「なんで白豹が寝てるんだよ……」

 相変わらず僕の一コマ漫画は誤読される。

 ……まぁ、いいか。

 僕の作品は皆に読まれている。好きだとも不快だとも言う人がいる。それは人それぞれの受け止め方だ。

 僕はミコと別れ、経済学部の校舎へと入っていった。

【終】

2018/11/08脱稿

同人誌初出

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