ゴルベデス

紙とペン

短編小説

ゴルベデスが死んだ。いくら殺しても死ななかったゴルベデスが死んだ。


四回目に生き返った時は、ゲーム機を壊してやろうとも思ったけど、七回目からは少しほっとしていた。九回目でついに死んだ。死んじゃった。


ゴルベデスをこの手で殺した。毒ガスで目をくらませて、ラリアットで倒れたところを、ゴールデンバズーカで撃ちまくった。もはや無抵抗なゴルベデスを撃ちまくった。


Aボタンめっちゃ連打してた。


エンドロールが流れ終わるまで、まだゴルベデスが生き返るような気がしてコントローラーを放せなかった。楽しい時間がまた戻ってくることを祈っていた。もっとゴルベデスと戦いたかった。


ENDの文字が出るとともに、ボクは泣いた。周りの買い物客の目もはばからず、泣いた。店員が心配して声をかけてきた。


店員に、向かって泣き叫んだ。

「どうして死ななければならなかったんですか!!」

「どうして!!‥‥どうして」


急に体の力が抜けて、その場に座り込んだ。店員はなんか慌てていた。こんなに泣いたのは、マー君と別れたとき以来だ。やっぱりこのワンピースは呪われている。涙がワンピースにぽたぽた落ちた。いっつもこうだ。別れはいつも突然。気を抜いた時にやってくるんだ。


せめてサヨウナラだけでも言いたかったのに。ちゃんと言いたかったのに。


コントローラーを握ったまま、二時間ほどその場から動かなかった。家に帰ろうとも思ったけど、動けなかった。家にはゲーム機ないし。


ゴルベデスはまだ死んだままだった。涙で濡れたワンピースは少し乾き始めていた。


幸子は腕時計を見て、思った。


「あ、水曜日のダウンタウン始まる」

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ゴルベデス 紙とペン @kamitopen

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