第六話 基本使用料は月額250円!?

 カクヨムを利用するためには基本使用料として月額250円(税込み)かかるとしたら――あなたはどうしますか?



 私たちユーザーはカクヨムにおいて様々な機能を使用しています。具体的にはどのようなものがあるか、挙げてみましょう。

 ①作品を保存、公開できる。

 ②ルビや傍点表記が可能なエディターを使用できる。

 ③自主企画を主催できる。

 ④近況ノートで情報発信ができる。

 ⑤ビューワーでは字体や背景色の他、縦組みの選択も可能。

 他にもあるかもしれませんが、大きな特色としては上記の五点だと思います。これはユーザーにとってはカクヨムを使うメリットといえますが、運営(経営)側にとっては負担(リスク)ともいえます。


 最も大きなリスクは①でしょう。

 ユーザー数に制限がなく、一人当たりが保存できる作品数・文字数にも制限はありません。公開されている作品が全てではなく、非公開の作品も合わせればどれ程のデータ保管容量を確保すればいいのか、専門外の私には見当もつきません。

 現在は文書データのみなので比較的抑えることが可能かもしれませんが、表紙や画像データの保存が同種の他サイトでは一般的になっていることから、いずれ画像データも保管できるようになるのではないかと予測しています。

 膨大なデータを保管しユーザーがストレスなくアクセス出来る、定期メンテナンスで利用できない時間が生じることもない。これに掛かる費用負担は相応のものではないでしょうか。


 ①については費用を掛ければ短期間でも対応が可能であることに対し、②~⑤についてはプログラムの開発期間も必要となります。これらの機能は他サイトで導入している例が少ないことから、差別化を図るための先行投資によりカクヨムが有する優位性の一つとなっています。

 いずれにしろこれら五つの機能については、開発から運用、維持管理まで相応の費用が掛かっていることは想像に難くありません。


 では運営側はその費用をどのように回収しているのでしょうか。


 同種の他サイトでは広告を掲載したり、課金アイテムを販売して副収入を得ている例もありますが、主としては書籍化作品による売り上げで利益を得ることを目的としているはずです。これは直接の出版だけでなく、出版社やレーベルとのタイアップ企画による収入も含みます。

 何らかの賞を取った方でも出版するまでには数か月、場合によっては一年程度かかることがあるそうです。これは運営としての収入もその間は得られないこととなります。

 私事で恐縮ですが、分野は全く異なるもののクリエイティブ系の仕事をしています。一つのプロジェクトに掛かる期間は短くても数か月、長いものだと二年を超える場合もあります。基本的には成果品が出来て初めて報酬を得られるので、その間の収入はありません。

 これは経営的にはかなりのリスクとなるので、少額でも定期的な収入を得る方法を見つけることが非常に重要となります。


 カクヨムにおいても運営には同様のリスクがあると思います。

 新規事業として立ち上げた初期の数年は、事業計画としても赤字が生じると見込んでいたかもしれませんが、五年目に入る今年度あたりからは黒字化が目標となるはずです。

 そのためには定期的な副収入を得ることは必須ともいえる条件となります。

 この考え方は、これから作家を目指す方にも言えることだと思います。

 書籍化が目標ではなく、作家として生活していくことを目標とするならば、生活するための副収入をどのようにして得るのか、アルバイトをしながらなのか、当面は会社勤めをしながら書くのか、あるいは意にそぐわないものでも書いていくのか。

 今から具体的なイメージを持つことは、将来に対してマイナスには決してならないはずです。



 話を元に戻しましょう。

 運営として定期的な収入を得る方法として、最も簡単なものは利用者から費用を徴収することです。

 しかし、これを導入するにはデメリットが大きすぎることも明らかです。有料としている他サイトがないことからも、ユーザーの大量流出は避けられないでしょう。

 そうなった場合は主目的である「書籍化できる作品の発掘」ということも難しくなります。

 そこで採用したのが広告掲載というプログラムだと推察します。

 広告収入の三割を運営で確保することで定期収入の方策を得たことになります。

 さらにユーザーの換金可となる設定を三千円としたのは、一ユーザー当たりの年間維持管理費用がその程度の額ではないかと考えてみました。


 ここからは裏読みとなりますが、年間で三千円に相当するリワードポイントを得ることはかなり難しいのではないかと思っています。

 つまり、ほとんどの人がこのプログラムに参加したとしても収入を得られないこととなります。言い換えれば、それは運営側の副次的な収入になるということです。

 そこまで見込んで還元額を設定したとすれば、3000円/年=250円/月を使用料代わりに得られればという意図もあったのではないでしょうか。

 そもそも三千円には届かないだろうという前提ですし、設定額を超える人気作家さんには全額支払うため、そのロスを見込めば実際には150~200円/月といった所かもしれません。


 この仮説を読んで、「それならなおさらプログラムには参加しない!」と思うか、「どうせ収入を得られないなら、サイトの閉鎖は嫌だし、運営を助けてやるか」と思うかはあなた次第です。



追記:もしも数か月後、簡単に三千円相当のリワードポイントが得られると分かった時は、みなさんも一緒に運営さんの太っ腹さを讃えていただければ幸いです。

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