願い
「ごめんなさい、私てっきり冬馬が幸子と一緒にペアリング見ていたから付き合ってるのかと思っていたの」
『ふざけんなよー。俺はそんな男じゃないぜ!佐奈が一番知ってるだろう?』
「そう・・だよね、うん・・・わかってる」
私はやってはいけないことをしてしまった。
取り返しのつかないことをしてしまった。
どうしよう。
「とりあえず幸子の入院している病院行ってくる」
『ICUに入ってるんだからムリだよ』
あぁ、そうか。
気が動転している。
「ちょっと用事を頼まれたから買い物に行ってくるね」と言い電話を切った。
紫の鏡に呟く。
幸子が目覚めますように、と。
鏡から私の顔が現れ、
『願いを叶えてほしい?』
鏡の中の自分が微笑む。
「幸子を助けて・・・お願い」
『今までの幸せは願わなくなるわよ』
またお母さんが私を殴るのか・・・。
またイジメに遇うのか・・・・。
冬馬と離れるのか・・・・。
それでも幸子を助けたい!
「お願い・・・!幸子を助けて!」
一粒の涙が鏡に落ちた。
鏡が光を放った!!
携帯電話が鳴った。
『佐奈、幸子が目を覚ましたぞ』
冬馬からの電話だった。
願いは叶った。
血を流してないのに、何故?・・・?
涙・・・で願いを叶えてくれた?
鏡はひび割れていた。
病院へ行こう!幸子に会いに行こう。
病院へ向かうと冬馬がロビーで待っていた。
「幸子、目が覚めたの?」
「あぁ・・・、行こう」
冬馬と私は幸子のもとにいく。
病室に入ると幸子は横たわっているが目を開けている。
幸子の側に駆け寄ると幸子が口を開く。
「佐奈・・・?」
本当に生きていてくれてよかった。
「吉井くんも来てくれたの?」
はにかみながら幸子は言う。
「あぁ・・・」
鏡の力で私と冬馬は付き合っていたけど、あの鏡が割れたってことは冬馬とは幼なじみのままなのかな・・・。
「佐奈、2人で話がしたいの。吉井くん席を外してくれない?」幸子が起き上がろうとするのを手伝いながら、冬馬は承諾する。
冬馬が病室から出ていく。
「話って何?」
椅子に座ると、幸子と目線が合う高さだ。
「夢の中で佐奈が泣いている夢を見たの。幸子を助けてって泣いてる夢を・・・」
願いは叶った・・・。
最後の願いが・・・。
「ありがとう、佐奈」
幸子が泣きながら言う。
そう言われると、私の誤解で幸子をこんな目に遇わせてしまったのにお礼を言われるなんて・・・。
「ごめんね、幸子」
幸子が私の頭を撫でる。
「佐奈、退院したら遊びに行こうね」
首を縦に振りながら、幸子のベッドに顔をうずめる。
あの紫の鏡はもう使えないけど、もう必要ない・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます