裏切り
目を開けるとぼんやりと白い物が目にうつる。
「娘さん、目を覚ましました!」
ここはどこ?
ツンとアルコールの香りがする。
病院・・・?
私、手首切ってそのまま倒れたんだ。
「佐奈!大丈夫?!」
お母さんが覗き込む。
冬馬と幸子もいる。
「バカヤロー!何で自殺しようとしたんだよ!何か悩みでもあったのか?」
冬馬は泣きながら言うと、助かってよかったと泣きじゃくる。
幸子も泣いている。
「お母さん、鏡知らない?紫の・・・」
部屋に置いてきたままだろうか。
「あるわよ、大事に持っていたから 持ってきたわ」
母から受け取ろうとすると手首が少し痛い。
「これ、お気に入りなの!」
「早く退院できるといいね」と鼻をすすりながら幸子は言う。
「うん、心配かけてごめんね」
面会時間が過ぎていき、みんな帰っていく。
「また来るからね」
冬馬と幸子が手を振りながら言う。
「ありがと」と、手を振り返す。
母親も二人のあとを追い、お礼を言っている。
数日後、私は退院した。
ショッピングがしたくなって母と別れて歩いてると、冬馬と幸子の2人がいる。
なんで一緒にいるの?
2人でペアリングを見てるようだった。
私は2人に声をかけようとするが、そんな勇気がない自分を責めた。
私は冬馬と付き合っていたんじゃないの?
その場で紫の鏡を取り出し、呟く。
「2人を引き離して!」
血は思う存分、気を失う前にあげたはずだ。
すると、工事中のはしごが幸子目掛けて倒れる。ガシャーンという音が店内を響き渡る。
冬馬の方は、怪我がなかったようだ。
幸子には悪いけど冬馬に近づくから悪いのよ。
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