小説書いてたら後輩で毒舌な書籍作家さんに罵倒されている件について

みなと

入部したいんだけど

 突然だけど俺の話をさせてもらいたい。

 俺、星宮千尋ほしみやちひろ高校二年生。

 ネットの小説家になれるで自作の小説を書いて投稿している。

 そろそろ書き始めて一年になる。

 一年というのも俺が小説を書き始めたのはこの天籟てんらい高校にはいってからだからだ。

 俺の通う天籟高校は必ずどこかの部活動に入部しなければならない。

 特にやりたいこともなかったからどこに入るか悩んでた俺は当時読み専だったこともあり、この部活を見つけたときは迷わず入った。

 それが『ネット小説部』。

 俺はこの部に入ってから小説を書き始めたんだ。

 その理由は先輩達に勧められたからなんだけど。

 楽しいから一度書いてみろよとか色々な理由で勧められて書いてみるともうハマったよな。

 感想なんかで褒められたら超嬉しくて舞い上がっちゃうし、また感想貰うために頑張ろうってなるんだよ。

 こうして一年間書き続けてきた俺はこれからも書き続けていくつもりだ。

 この部活も先輩達がいなくなって俺一人になった。

 後輩が入ってくるのを期待しているとまさかあんな奴が入ってくるなんて。




 × × ×




 今日から今年入ってきた新入生が部活動を見て周り仮入部もしくは正式入部をすることができる。

 うちの部は人が多くいるわけでもないから勧誘はわざわざ出向かずにチラシを張り出してるだけだ。

 果たして何人が来てくれるだろうか。


 コンコン

 パソコンで執筆をしていたら新入生が来たようだ。

 初日から来るなんて今年は入部希望者がいっぱい来るかもな。

 そう考えながら気分良くドアを開ける。


 ドアを開けた先にはほんのり青みがかった銀色の髪をサイドテールにして肩にかけている青い瞳をした美少女が立っていた。

 美少女だ。あれ、ここ二次元?

 妄想が現実になっちゃた?

 俺こんなキャラ書いたっけ?


 などと驚きでそんなわけもないと思っていながらも現実ではないと思ってしまう。


「入部したいんだけど」


 俺が現実から目を背けて立ち尽くしていると目の前の二次元から出てきたような美少女から声をかけられる。


「あ、ああごめん。入部届はある?」


 そう聞くと無言で紙をこちらに突き出してきた。

 あれ、なんで無言なんだろ。

 恥ずかしがってるのかな?


「はい、受け取りました。入部を認めます」


 別に拒否する理由もないから何も気にせず入部を認める。

 そして入部届を見て名前を確認する。

 えっと、神無月かんなづきセレナか。

 セレナってカタカナで書いてるけどキラキラネームって当て字だけじゃなくカタカナもなのか?

 まぁこんな名前はこの部じゃ関係ないんだけどね。


「ところでペンネームはある?」

「……教えないとダメなの?」


 そう言い少し不機嫌そうに見える。

 なんでペンネーム聞いて不機嫌そうなんだろ。

 あ、そうか。人気がなくて恥ずかしいんだ。


「そうだね。人気なくてもバカになんてしないから」

「はぁ? それがバカにしてるじゃない! どう考えてもあなたより人気あるわよ!」


 優しくしたつもりなのに何故かキレられた。

 なんでだ、何がダメなんだ。


「……ルナよ」

「……え?」


 別にこの……え?は聞こえなかったとかではない。

 神無月の言った名前が聞き間違いかと思ったからだ。

 ルナといえばハイファンで異世界転生物などを何作かを書いている。

 そしてそのどれもがかなり面白く中には書籍化をするほどの作品がある。

 そんな尊敬してた作者さんが美少女で後輩、そして同じ部活に入部してきたのだ。

 これで驚かない人はいないだろう。


「ほんとにルナなのか?」

「そうよ。私が書籍化して超絶人気を誇っているあのルナよ」

「そうなのか。おお、あのルナに会えるなんてめちゃめちゃ嬉しいな。あ、そうそう俺のペンネームはヒロだ」

「ヒロ? 知らないわね」


 え、嘘でしょ。

 俺の作品知らなくてもルナの作品に何度も感想送ったことあるから知ってると思ってたんだけど。

 そういやルナって感想に返事してないけど見てないってことはないよな?


「俺、感想送ってるんだけど」

「読んでないから知らないわよ」

「はぁ!? 感想読んでないのか」


 あれは読者からの有難い言葉なのに。

 流石に酷評までは読みたくないけど。

 こいつありえねぇわ。

 それなら感想受け付けないにしとけよ。

 なんで受け付けてんだよ。


「そうよ! 悪い? どうせ感想読んだって私の作品に影響与えるものなんてないの! それなら読む必要ないじゃない!」


 そうだよ、お前の作品はそれぐらい面白いのは確かだ。

 けどな、


「面白くてもそれ読んでくれる読者いなきゃ意味ないだろ。その読者を無視すんな」

「なによ! 指図しないでよ! 全くうるさいわね、今日はもう帰るわ」


 そう言いルナは歯を食いしばりながら俺を睨みさっさと立ち去っていった。

 部活時間に下校すんのは原則として認められてないけど、まぁ一年は今はいいか。


 結局睨んで来てたけど入部届は取り返してこなかった。

 明日も来るんだろうか。

 ……どうしよ、上手くやってけんのかな?

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