第25話 脱出、もとい脱獄および逃亡

「くぁああ...よく寝たー」


 のびをして体を起こす。今日も窓から差し込むお日様の光がまぶしくて

 起きたという形だ。


「昨日は何があったんだっけ...?」


 寝起きにより頭が回っていないのが自分でもわかる。

 ・・・

 ・・・

 ・・・


「んーなんだっけ」


 20分くらいだろうか、そのままの状態でぼーと考えていたが、どうも記憶がはっきりしていない。ていうか数日間のあるか記憶が怪しい。


「あれ昨日まで拷問みたいなのされてたんだっけ?じゃあなんで来ないんだろう・・・」


 まあそのうちおもいだすだろ。そんなことを考えながら牢屋の扉に手をかけてみる。なんで扉に手をかけたかって言ったら、


【ガチャガチャ】


現実はそんな甘くなかった。普通に開いてない。

それよりも、遠くから声がする。思わず聞き耳を立てる。


「今日も暇だよなーなんかすることないの?ここ誰もいないしさー」


「お前また忘れてんだろ、この間急に落ちてきた異邦人をとらえてるじゃん」


「??あーあの髪の毛があって黒いやつかーそんなのもいたわー」


「お前さーただ捕らえとくだけでいいって言われてたのになんで拷問始めたんだよ。怒られるのはこっちなんだぞ!?」


「あーやっと思い出してきた。いやーごめんごめんだってさーあいつ俺にないもの持ってるじゃん。そうゆうのはぼこぼこにするに限るじゃん?しかもあいつ髪の毛生えてるし」


「もう完全な私情しじょうじゃん。にしてもお前なんで髪の毛生えてるやつを拷問したがるのさ?俺らには立派ながあるってのに」


「は?お前トサカなんかがかっこいいとでも思ってんのか?俺らのようなはこれのせいで一生髪型変えられないんだぞ?それに比べて生族せいぞくのやつらは自由自在に印象を変えられるんだぞ?うらやましいと思わないのか?おれはそう思ってる。」


そいつはむしゃくしゃした様子で赤く染まったそのをかきむしる。


「あーなんか髪の毛のこと考えたらむしゃくしゃしてきた。おい俺あいつ殴ってくる。」


そう言って飛び出していったやつの背中にもう一人(?)が話しかける。見た目は変わらないが、怒りやすいか無気力な部分かが2人の唯一違いを見つけられるポイントだろう。


「ほどほどにしとけよ?あと鍵閉めるの忘れるなよ?じゃあ俺はパトロールしてくるわ、じゃあな」


そういって『くわー』っと大きなあくびを浮かべ地上へと出て行った。


ーーー

・・・なんか茶番始めたと思ったらこっち向かってきたぞ?

いやな予感がして伸也は思わず後ずさる。


「おいてめぇ、起きてるとはいい度胸じゃねーか、ちょっと面かせや」


怒りを隠そうとせずなんかひと昔前のヤンキーみたいな口ぶりだ。ってか面かせって言われておとなしく従うやつどこにいるんだ・・・?いやごめん怖さに負けたらあるかもしれないわ。


「あーもうじれってぇな・・・」


そう言いながらがちゃがちゃと扉を揺らし、鍵を開けようとする。

そして鍵が開いたかと思うと思いっきり扉をあけ放ちこちらにむかってきた。

鼻息を荒げながら来るその様子は見てて、闘牛のような勢いだ。まあ見た目完全に鶏なんだけどね。

ーーー


「ふんっ覚えとけよ」


ひとしきり暴力をふるった後満足した様子で帰っていった。


【ガラガラガラ・・・バンッ】


「やっと終わったか」


顔の痛みに苦痛を漏らしながら牢屋の扉をぼーっと見る。そこで記憶が途切れた。

ーーー



やっとぼーっとしてた意識がはっきりしてきた。あのあと急に眠気が襲ってきたからちょっと寝た・・・つもりでがっつり寝た。次に目を開けたときはもう夕暮れ時だった。窓から赤いようなオレンジ色のような日差しが差し込んでいる。


「もう脱獄したい。」


こんな痛みに耐えながら生きていかなければいかないのか、もうここから出ることはできないのか。そういう思いから心に不安を抱く。


「第一おなか減ったな・・・」


もう長らくご飯を口に入れていない気がする。


「開いてないのかな・・・どっか」


頭には脱獄して街に行ってご飯を食べたい。そんな気持ちしかなかった。

とはいっても手に届く場所にあるのは、扉だけ。


「扉、開いてないかなっ」


希望を扉にかけ、扉へと歩き、力任せに扉を引く。


【ガラガラガラ バタンッ】


鍵などかかっていなかったようで、なんのためらいもなく軽々と扉が開く。はやく、はやくここから出よう。その一心で紅に染まった明かりのこぼれる方向へ一心不乱いっしんふらんに走る。まあおなか減って走ってられるほどスタミナが残ってないから早歩きみたいな状態になってるけど・・・

ーーー

伸也が脱走してから数時間後…


「あーあ逃げられちゃったじゃんどーするの?この落とし前」


「は、はいっ す、すいません」


とある室内で、メイド服を着た高圧的な態度の女が、鶏姿の男に説教をしていた。


「ちゃんと教育しなきゃ。あの計画に間に合わなくなっちゃう。」


鶏姿の男目線から見ると、その女は黒い闇をまとった悪魔のように見える。

口調はやさしめではあるものの、ところどころ語気が荒い部分から怖さを全身にひしひしと感じる。

女は一つ溜息をついた後一言男に嗜める。


「お前らこのままだと死ぬぞ?こちら側には勇者適正者がいるものの戦力的にはまだまだなのだから。もしあの計画によってお前らは享受できないかもしれないのだから。」


そう言って女はメイド服を翻すとすたすたと歩いて行った。


残された鶏姿の男はぺたりとその場に座り込む。


「いつ見ても怖いなぁあいつ。まあ確かに言ってることは正しいんだけどさー」


『俺たちは選ばれたんだ。その権利をなくしてたまるか。』


そう心の中で覚悟を決めるのであった。

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