第23話 異世界到着後の備忘録。 ゆん視点1
気づいたときには知らない部屋で知らないベッドの上で横になっている自分がいた。
自分でも今置かれている状況をとらえられ切れていない。
「あのあとどうなったんだっけ。」
怒涛の日々に追われて、といってもまだ2日しかたってないけど何も自分のしたいことができなかったゆんはふと開いた就寝前のわずかな時間を記憶の整理に使うことにした。
ーーー
理不尽な
でもまあ詳しい説明は伸也がしてくれると勝手に思ってたし、それで弁償とか言われたら2人で償っていこうと思っていた。
説明に関しては私は口下手だし、まあ伸也もあんまりうまくないみたいだけど・・・私が口を挟まない方がいいだろうと思って、ちょっと心を別の世界に置いておくことにした。
第一知らないひととも話したくなかったし。
でもふと気づいたら隣には伸也はいなかった。気づくとふかふかな椅子に座っている自分がいた。わけがわからなかった。混乱した。でも、周りをきょろきょろするのも申し訳ないかなという思いから、自分の座っている椅子の目の前にある机をじっ・・・と眺めていた。
その机は色は赤とか青とか多色。表面がつるつるしてそうで、それでいてガラスのような透明感もある。それなのに木のような温かさも感じる。例えるとするならば・・・うーん・・・と頭を悩ませる。でも今まで生きてきた中で例えられるものが見当たらず、長考する。実際はこの緊張した気持ちを逃がすため、何か考えごとに没頭しようと勝手に脳が判断しているのか、はたまた本当に例えようとしていて話のタネにでもしようとしているのかもゆん自身わかってはいなかった。
ーーーー
放置されて数時間がたったころであろうか。突然ドアががちゃりと開く音が聞こえる。その音に驚き思わず体が数センチ飛び上がる。
「失礼します。お嬢さま私ともに御足労お願いします。」
丁寧でそれでいて否定できる声音ではないと直感が言っている。これは早く返事をした方が身のためですよお嬢様ー。そんなことを思いながら、身を固くしながら、そのお嬢様が返答するのを待つ。
・・・
・・・
「お嬢様?」
幾度かそう呼ばれて何してるんだろうお嬢様って人は・・・と思いながら初めてあたりを見渡す。そこには高そうな装飾の刻まれた、椅子やソファーしかなく、やっと自分のことを呼んだものと判断した。
「は、はいっ」
ちょっと上ずった声で返事をする。内心お嬢様という言葉に引っ掛かりを覚えながら。
「私と共に来ていただけませんか?」
「は、い。わ、わかりました。」
恐る恐る立ち上がろうとするが足に力が入っていない。でも迷惑をかけるわけにはいかない。自分に鞭打って立ち上がり、私を呼んだ人の後ろをついて行く。
廊下を1歩また1歩と歩みを進めるたびにドクドクと心臓の鼓動が速くなっているのが感じ取れる。顔が暑い。息切れがする。でも止まるわけにはいかない。知らない人と1対1で話すのもそうだが、自分のことを何度も呼ばせてしまったという事実に罪悪感が出てくる。
罪悪感という言葉と結びついて、どうしても出てくるいやな記憶。
・・・いつもなら・・・
いつもならそこで回想に入るのだが、今は自分で自分の記憶が流れ込んでくるのを押さえつける。
なぜならもし目の前で自分のことを先導してくれているこの人が次話しかけてくるときに早く返事をしないことでつかみかかってきたり、殴りかかってくるかもしれない。
人間の裏の感情はわからない。どの人もはじめはみんなやさしいく接してくる。でもそれは本心であるとは限らない。
注意しよう。
コツコツと長くまっすぐな廊下をひたすらついて行く。私にとって、この話しかけてくるかもしれないし、話しかけてこないかもしれない。この空気感が一番嫌いだ。いつでも身構えておかないといけないから。
伸也はどこに行ったの?
こんな時話せる人がいたら、この感情を、空気感を分かち合える人が隣にいたら。私はどんなに楽だったか。どんなに楽しかったか。今も。昔も。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます