ショートショート「ゴリの失恋」

棗りかこ

ショートショート「ゴリの失恋」(1話完結)


園長、ゴリが元気有りません。飼育員のロブが、言った。


なんだって?

ゴリは、そのユーモラスな風貌で、子供たちの人気を得ていた。

ゴリが恋していることは、園内で有名だった。

クジャクのハンナの方を、じっと見ているのを、何度も目撃された。

その度に、オスのクジャクが、羽を広げて威嚇する。


あれは、恋なんだ…。


ゴリの恋は、前途多難だった。

クジャク同士が、仲良くすると、胸を叩いて、不快の表現をした。

だが、ゴリの恋と思われていたのは、実は、ゴリの嫉妬だった。 嫁のいないゴリは、つがいの動物の、隣のクジャクに、強烈な嫉妬を向けていたのだ。


ゴリの恋は、アブノーマルです。矯正する為には、メスのゴリラを入れましょう。 園長は、頷いた。

サンフランシスコ動物園に、メスの一匹がいるらしいので、打診してみましょう。

サンフランシスコ動物園から、ゴリのお嫁さん候補がやって来た。


一応、貸し出しということで…。 向こうの飼育員との話はついていた。


だが…ゴリは、そのメスを見るなり、病気になってしまった。

やっぱり、ダメか…。 アブノーマルな恋の方がいいのか…。


飼育員も、園長も、メスを送り出すことで、一致した。

病気になる程、嫌なら、仕方ない。

ゴリが、別室で病に伏している間に、メスは、サンフランシスコに帰って行った。


ゴリは、そうとも知らず、猛烈に恋煩いをしていた。

悶々とする気持ちを押さえられず、ウオーっと、叫んだ。

大丈夫だよ、ゴリ。もう、メスはいないから…。

ゴリの動きが停まった。

かくして、ゴリは、嫁を貰い損ねてしまったのだった。


また、クジャクの方を見てますよ。園長は、呪わしげに頷いた。

また、メスを導入してみるか。


何度繰り返しても、ゴリは、病になってしまった。


ゴリの失恋…。


-完-







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ショートショート「ゴリの失恋」 棗りかこ @natumerikako

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