第13話 遺物
古代文明と言う言葉は広く一般にも知られている。遥か昔に滅びた彼らの文明は多くの
だが彼らがエーファの民と呼ばれていた事を知るものは少ない。俺自身も昔に受けた座学で軽く聞いた位だ。
エーファの民は魔術・錬金術・鍛冶などのすべての技術において優れており、神々にも等しい力を得たと伝承に残っている。
それらが作りし
最初にこのダンジョンに古代人──エーファの民の文字が刻まれていることに驚きはしたが、心のどこかで否定していた。このダンジョンはエーファの民とは関係がないと。
しかし今、俺は三つの
「こんなのを持っていると兄上たちに知られたら、王国を挙げて奪いに来そうだな……」
「肯定──速やかな隠蔽を推奨」
「無茶を言うなゴレムス。ずっと地中に隠れていろと言うのか?」
「否定──
先程から俺に相槌を打つのは
土塊で出来た体は大きく、トールとシーラを縦に並べれば同じ長さになるくらいだ。その腕は俺の太ももよりも太い。
肩にはそのトールとシーラを乗せており、トールは楽しそうに、シーラは不安げにしている。
DPの使いみちの一つとしてこのゴレムスを選んだ。今後の開拓において力仕事が出来る要員が欲しかったからだ。まさか喋れるとは思わなかったが。
ゴレムスは最初、文様が刻まれた小さな四角い金属体でしか無かった。それを地面に置くとみるみる内に周りの土を吸い取って今の形になった。
力も強く、ダンジョンに潜ってかなり鍛えた俺とも力勝負では対等だった。これなら防衛にも使えるので万々歳だ。俺がダンジョンに潜っている間、領民を守れる存在が居るのは非常に助かる。
「ゴレムス、荷物を運ぶのを手伝ってくれ」
「了承──アンリ様に追従します」
ゴレムスはトールとシーラをそっと地面に下ろすと、残り二つの
ただし人の頭ほどの大きさがありかなり重かった。持てないことも無いが、ゴレムスの動作確認も兼ねて持たせることにした。
草原に通じる階段を登って外に出る。
瑞々しい匂いが肺の中に入ってきて何とも心地よい。地中の石碑の部屋やダンジョン内にずっと居ると気が滅入る。
「さて残り二つの
「ハイハイ! やっぱりダンジョンの近くが良いと思います!」
トールが元気一杯に答える。確かにダンジョンは危険なので、見張る意味でも近くに拠点を構えるのは良い考えだ。
「確かにそうだな。さてどちらから置こうか」
ゴレムスが抱える金属体をじっと見る。この二つは報酬として選んだときに本と一緒に出てきた。
本を開いて、流し読みをするが何やら専門的だ。『この金属体は生体金属と言い自己修復・形状記憶に優れており、生成時の魔術組成を記憶する』とか何とか。よく分からん。
本の著者名は『ゴ・オーケンハンマー』だ。聞いたことも無いが偉い技術者なのだろう。ちなみに本の後書きではル・カインを侮辱する言葉が延々と続いている。
文字の一つ一つに怨嗟が籠もっており、相当に仲が悪かった事がうかがえる。両者に面識があったのかは分からないが。
「ル・カイン……何者なんだ?」
考えても分からないが、碌でもないやつだろう。もし何処かで会うことがあれば注意せぬば。それにノスを捕らえた罪も贖わせなければいけない。
「お兄さん、
考えにふけっているとシーラが話しかけてくる。
「そうだな! よし
ゴレムスに指示して金属体を草原に置く。
少し待つと金属体は液体が弾け飛ぶように広がり、辺りの土や石を飲み込み始める。すると元の大きさからは想像できない程に大きな建築物になった。
まさに二階建ての石造りの一軒家。見た目は王都で見たものと似たようなデザイン。少し裕福な家族が住むような家だ。
「おお凄い。大草原の一軒家って感じだな」
ゴレムスの時も驚いたが、エーファの民の技術力は凄すぎる。なぜこれだけの力を持った文明が滅びたというのか。
「アンリ! 中を見てきてもいい?」
トールが喜色満面で伺ってくる。俺が首肯すると駆け足で家の中に入っていった。ガブリールも続いて入って、家の中はにわかに騒がしくなる。
「家を壊さなければいいんだが……」
「あはは……お姉ちゃんはああ見えて分別がありますから大丈夫ですよ」
苦笑してシーラが答える。
「シーラは見に行かなくて良いのか?」
「いえ、もし良ければお兄さんともう一つの
風が吹いてシーラの長く美しい金髪がなびき、見惚れそうになる。
いかん色ボケしている場合ではない。もう一つは生産関係の
「あ、ああ……それじゃあ家の向かい側に建てようか」
「警告──心拍数の増加を確認」
ゴレムスが茶々を入れてくるのでローキックを入れるが、予想以上に硬くて足が痛い。
ここの連中は領主を敬う気持ちが欠落している──と思う。
ゴレムスに命令して最後の
早く出来ないかと期待してしまう。
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