相方
勝利だギューちゃん
第1話
「あなた、久しぶりだね」
「そうだな」
「楽しみでしょ?」
「いあ、そんなには・・・」
「またまた・・・」
今、僕は妻と一緒に、故郷に向かっている。
高校卒業と同時に、殆どかけおちで飛び出した。
「みんな、元気かな」
「訃報のニュースが来てないので、くたばってないだろう」
「最近まで、住所教えてないし、まだ10年も経ってないけどね」
「違いねえ」
列車いゆられながら、目的地へと走る。
「変わったね」
「何が?」
「電車」
「どうして?」
「出てくる時は、まだ非電化で単線だったのに・・・」
「そこかい」
妻の言葉に、つっこみを入れる。
「温かく出迎えてくれるかな、みんな」
「悪い人はいなかったろ?」
「そうだけど・・・でも・・・」
「気になるか?」
「うん」
やはり、妻も女か・・・
不安な気持ちが、強いようだ。
普段はむしろ、男勝りだが。
車内アナウンスが聞える。
「あなた、着いたよ」
「さすがに、特急は早いな」
「出てきた時は、鈍行しかなかったのにね」
「特急に乗れるなんて、出世したのか・・・」
「大袈裟でもないけどね」
目的の駅に降り立つ。
「心の準備はいい?あなた」
「ああ」
やはり、仕切られてるな。
まあ、この方が妻らしい・・・
「俺、頑張るよ」
「うん。男はその意気」
駅舎を出た。
すると、そこには・・・
かつての、同級生たちがいた。
「おめでとう」
「出世したね」
「いつも、見ているよ」
歓迎の言葉が、投げかけられた。
僕と妻は、妻夫漫才師を夢見て、飛び出した。
しかし、当たり前だがそんなに甘くはなく、苦しい時代が続いた。
そして、最近になりようやく、光が差しだした。
正直、まだ会わせる顔ではないが、もういいだろう。
「あなた、行こう」
「ああ」
もうすぐ、新たな命が生まれる。
この子のためにも、がんばりたい。
相方 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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