過去
とある高地1
「アンタ、それで、実戦経験は?」
ああだこうだと、
オウルなりに
アウィスもオウルも
しかし、
そして、少年ではなく、
オウルのぞんざいな
若い士官は、いかにも
「なんだと!? それが王国陸軍士官への口の
「で、どうなんだ? 王国陸軍……士官様」
「実戦は……これがはじめてだが、この手のことは士官学校で
「演習、ね」
「それがどうした。我々は指令部で作戦会議がある。諸君らは待機せよ。許可なく持ち場を離れるなよ!」
そう言うと王国陸軍士官は取り巻きを引き連れて、指令部が設営されている
「おい、アウィス」
「ん?」
「〈
「……のはずだが」
「だったら、俺たちは、その作戦会議とやらには出なくてもいいのか?」
「さあな。たぶん、別の……俺たちがあずかり知らない“士官様”を集めて開くんだろ」
王国近くの山深い森の中に住まう〈
彼らは〈
「くそっ! 困ったときだけ呼びつけやがって!! けっきょく、俺たちは
「まあ、そう言うな。どうせすぐ出番がやってくるさ」
アウィスはお気軽な調子で口にしたが、オウルは聞き逃さずイヤな顔をした。
「おいおい。よせよ。お前の“
そのとき、
「くそっ! こんなところにまで入り込ませやがって、いったい王国空軍様はどこ行った?」
「そんなことより、オウル! 頭をさげろっ!!」
次にヒューンという音、こちらに向かってくる。近い!?
衝撃。大量の
これはもう、当たり所が悪ければ、ヘルメットの有無など関係なさそうな大きさだ。
今頃になって機関銃の速射音が聞こえてくるが、いまさら遅い。弾の
アウィスとオウルが恐る恐る頭を上げると、司令部の
「おい!?」
「ああ。あれが?」
「俺もはじめて見たがまずまちがいないゼ。
「なるほど。見事なものだな。分厚い
「
いや。腕も爆弾もそうだが、
地形を読み対空砲火を
「しかし、
「ああ、まったくだ。FAEだったら、間違いなく月まで吹き飛ばされてたところだゼ」
「オウル、これからどうなると思う?」
「そりゃあ、オマエが敵の指揮官だったらどうするよ?」
「敵の命令系統がメチャクチャとくれば……全軍突撃だな!」
「
そんな話しをしているふたりのもとに、王国陸軍の下士官がやってきて遠慮がちに声をかけた。
「〈
「?」
「や、
「そりゃあ。カタチのうえではそうかも知らんが……」
「カタチとおっしゃられても……」
兵士は、
「おい。オウル」
「あぁ。
* * *
結局、
そのため、
それに、無理に人力で掘り返すという作業は作業者にも危険が
それにまして何より、敵への
「
王国陸軍下士官は、後方の
「ああ。敵は来ない、と思うほうからもやって来る。裏をかく、というのが
「はあ」
「アウィス、どっちにする?」
オウルが、やはり裏手の
「俺はどちらでもいいが、オウル、オマエはあっちに行きたいんじゃないか?」
「
「だろうと思った。じゃあ、まずはこっちを
「集められるだけの
オウルとアウィスは、弾薬庫も
* * *
「迫撃砲はダメだったが、こんなものがあった」
アウィスは、円筒形のものを手にして戻って来た。
「
「あと、こんなものも……」
オウルはアウィスが
「まだ、試してはいないのだが……」
「例のヤツか? 弾薬が十分ならイケルかもしれねえな。まかせていいか?」
「ああ。やってみる」
アウィスは返事をすると、王国陸軍兵たちに指示して平らな場所に重機関銃を仮固定しはじめた。
* * *
「いけそうか?」
オウルは、
「ああ。コイツはやっぱり単発射撃できるヤツだった」
「いいね。弾は?」
アウィスは弾薬ケースをあごで指す。連続射撃するには心もとないかもしれないが、単発射撃するには十分な量だ。
「そりゃあ。ますますいいね」
「まあ、コイツが活躍するのは後だろうがな。そっちはどうなんだ?」
「誰に言ってんだよ。期待してていいゼ」
「そりゃあ、楽しみだ。やれるだけやってやろう」
「ああ。いつだって俺たちゃあ、それしかねえからナ」
* * *
「本来ならば、“士官様”たちのように……」
オウルは、口元で
「……“演習”でもなんでもして、気心知れたところで、というのが手順だろう。だが、そう
そこでオウルは、王国陸軍兵たちの顔を順々に見た。
「それは違う! 兵士を育てるのは“実戦”だ。それに、ここには共和国軍も恐れる“
オウルは、ワザと共和国軍が蔑称として〈
王国陸軍兵の目が
「……それも、ふたりもだ」
アウィスも、王国陸軍兵たちにうなずいて見せる。
「〈
そうだ、そうだ、と王国陸軍兵たちもうなずき合う。
「さあ、皆でもう一度、王国首都の
オウルは語り終えると、アウィスの顔を見た。
「
アウィスは引き
* * *
「なかなかの役者っぷりだったな、オウル(笑)」
「笑うなよ。他にやるヤツがいねえんだから、しゃーねえだろ。次はオマエがやれよ、アウィス!」
「イヤイヤ、次の機会もオウル、オマエに
「こういうときばっかり、
後で〈
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