自殺志願者

リオラ

第1話

目が覚めた。


そこは病院の一室だった。


私は退院しようと思い荷物を持って出て行くことにした。しかし、何やら看護師のような人達がやって来て止められる。私は、

「もう大丈夫ですので」

と言って、去ろうとするが、数の暴力には敵わず、その場に留められてしまった。おまけに病室に鍵をかけられた。窓を見ても割って出られるような窓ではない。ここから早く出るためには騒ぎを起こさない方が良い。私はベッドに横たわった。


…しばらくすると医者と看護師がやってきた。医者は私の状態の確認を行った後、私に聞いた。毒薬の入手経路やなぜ飲んだのかを…。私は、

「毒薬は自然に映える薬草やきのこを調合して作った。飲んだのは死ぬためだ」

と淡々と告げた。

「なぜ死のうとしたのか」

「将来に希望が持てないからだ。就職に失敗し、非正規雇用で食いつないできた。これまで何度も正社員の職に就こうと努力したが、こんな状態で取ってくれるところなど見つからない。不採用通知の嵐で自己肯定感はボロボロ。45という年齢も原因かほとんど書類選考で弾かれ、やっと面接に行けた会社でも転職の多さや合間に空いた経歴の穴など突かれ。無理矢理ポジティブな方に気持ちを持っていって自分を騙しながら面接するのも辛いとこだが、そうまでして受けた会社も不採用ときたもんだ。もちろんそんな事を考えない新しい考えの会社もある。しかし、そういうところは競争率も激しいし、若い起業家が多い。今後そういうところは増えて行くとは思うが、年功序列などの古い考えなどで嫌煙され、私は時代の変化に取り残されるだろう。年齢を気にせず接するという考えが育つまで、まだまだ時間がかかる。お金も無ければ新しく何か始める気力もない。こんな中途半端でやる気のない人間が生きている価値なんてあるか?ないだろう。私は居場所を見つけられなかった。大人しく消えようとしたんだ。私にはやる事がある。だから行かせてくれないか?」

「それはだめだ。休みなさい。」

「…そうする。」

そう言って布団にもぐりこんだ。

医者はその様子を見て考えこむ。

そして、これ以上話はできないなと思い看護師と共に病室から立ち去った。


…どれくらい寝ただろうか。

一日?二日?どちらにしても、時間は無意味だ。これが20代なら貴重な時間だっただろうなと苦笑する。昔に戻ってやり直せたらと何度思った事か…本当に失敗だらけの人生だった…。


病室でぼんやりしていたら再び医者が入ってきた。

「気分はどうですか?」

「よく寝られたので、爽快です。」

「それは良かった。まだ死にたいと思いますか?」

…少し考える。いいえと答えたら早く出れるだろうか?そんな気はしない。後、これ費用とかどうなってるんだ。勝手に入院させたんだから払わなくてもいいよな。そもそも払えない。

医者は黙り込んでる様子を見て話を変えた。

「大丈夫です。ゆっくり休みましょう。」

「一つ聞いていいですか?費用とかはどうなってます?払えませんよ。だから直ぐにでも退院させてください。」

「できません。それに費用は心配無用ですよ。安心してください。」

「そうですか…。それなら良かった。」

費用の心配はしなくても良さそうだ。それに自殺ならいつでもできる。寝るだけの生活がしばらくできるのなら今はそれに甘んじようと思った。



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