2022年

11.何故複アカ騒動は起きたのか?

 先日お隣の「ノベルアッププラス」で起きた騒動がちょっとした話題になりました。それは「20近くの複数アカウントを個人で所持して、ポイントを稼いでいた」というものです。詳しい騒動についてはノベルアッププラス側のツイッターなりを見ていただければ分かることなので今回は割愛します。


 この騒動がなんで起きたのかといえば、それはもう簡単で、「投稿サイトにおいて、ポイントを稼ぐことが最重要とされる空気が醸成されている」ということだと思います。


 もっとかみ砕いて言うと、「ポイントさえ稼げれば、作品の内容なんてどうでもいいよねという空気」が存在していることを指し示しています。


 上記の複数アカウントを用いたユーザーはある意味で頭がいいんです。だって比較的新興投稿サイトである「ノベルアッププラス」を用いているわけですから。ポイント数で日間ないし週間のランキングに載るために必要なポイント数は「小説家になろう」なんかよりもずっと少ない。


 それを考えると、複数アカウントを使ってポイントを水増しするという行為をマンパワーだけで行えるサイトとして見たのは非常に賢いと言えると思います。


 話を元に戻しましょう。今、ネット上の「小説投稿サイト」ははっきり言ってもう役に立たなくなっています。こういった「ポイント稼ぎ」が出てきたのがその証左です。


 だって、もし仮に作品の質が優れていて、それがきちんとポイントに反映されるなら、わざわざバンされるかもしれない危険性を伴ってまで、複数アカウントを使ってポイント稼ぎをする必要はありません。


 これを「自作の質を向上させるのを怠って、複数アカウントを使って評価されようとしている」と捉えるのは簡単です。ですが、その「質の向上」と「数字」がきちんとリンクしているかは今一度精査する必要があると思います。


 正直、今回の例が「大して面白くない作品を、複数アカウントを使って見栄えを良くしようとする」という極めて利己的な事例であってほしいというのが個人的な本音です。ただ、恐らくはそうではないだろうと見ています。


 今、「小説家になろう」を筆頭に、投稿サイトで「日の当たるジャンル」と「そうでないジャンル」や、「評価される可能性の高い作品」や「そうでない作品」の格差が拡大しています。


 それぞれ均等に評価されるなんていうことは幻想なので、ある程度の差はあって当たり前ですが、現在のそれは、正直目に余るレベルになっている。


 今回の騒動を収めるのは簡単です。ルール違反として取り締まれば、今回の件は収まると思います。


 しかし、そのままでは「次の騒動が起きる火種」を残したままになってしまいます。


 なにも手段は複数アカウントだけとは限りません。グループで必ず評価ポイントを入れることを約束し、作品を浮上させる団体を作るということも可能でしょう。


 それ以外でも、全く異なる回線を用いて、複数のアカウントを所持する「団体」が存在した場合、恐らく無力です。


 こういった可能性を論じ、発生源を断つよりも、根本から「投稿サイトの空気感」を変えていくことが大事で、恐らく最短距離でしょう。


 今回は「ノベルアッププラス」で起きた問題です。だけど、この火種は恐らくどの投稿サイトにも残念ながらあります。


 「小説家になろう」の隆盛を見て、その「劣化コピー」か、いいとこ「相互互換」程度のシステムしか構築できなかった後発サイトや、その「数字さえもらえてれば何でもいい」という空気感の情勢に一役買った「数しか見ない自称プロ」は批判されこそすれ、褒められる要素は何一つないでしょう。


 繰り返しになりますが、今回の事例はあくまで「ノベルアッププラス」で起きたことで、「カクヨム」からすれば「対岸の火事」のように見えるかもしれません。


 しかし、断言しておきます。今回の騒動は「対岸の火事」ではなく「此岸の火事」です。複数アカウントというやり口が取られるかは分かりませんが、似たような数字稼ぎのロジックが「カクヨム」という「此岸」でも起こりえるということを、もっと理解するべきなのです。

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