お茶を琵琶湖色の彼女に飲ませる。

 琵琶湖を表現したコップに、ほうじ茶を入れた。すると……

「きゃああ! 洪水よ!」「なにこれ、おしっこ?」「ほうじ茶みたい。なめてみたら」「何事かしらこれは! 溺れてしまいますわ!」

 コップの底に、四人の、極度に小さい女の子が住み着いていたようだ。

 昨日から机の上に置きっぱなしだったから、それもあり得る話だろう。

「ああ、ごめんなさい君たち。悪気はなかったんだ」

「びしゃびしゃよ! 責任とりなさい!」「まあまあ桐子ちゃん落ち着いて」「私、ほうじ茶プール初めてだから面白い……かも」「なかなかの味ですわね。茶葉の産地はどこかしら?」

 お嬢様系の女の子だけが俺に質問してきたから、

「コンビニのやつです。えーと、国産です」

「そんなこと聞いておりませんわ。具体的な産地ですわよ。それぐらいお分かりになって?」

「すいません、分かりません」

「お調べになって頂戴。わたくし、社長令嬢ですの。あなたの人生なんかお小遣いで買収できますのよ? おほほ」

 一分後。

「何? 水面にアルファベット?」「URLかな」「プカプカ浮いてるから、これにつかまったらいいと思う……かも」「この/にでもつかまりましょう」

 彼女たちは水面に突如浮かんだhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054894037130というURLにつかまり、沈まないように努力している。

「わたしたちの家が! どうすればいいの?」「桐子ちゃん落ち着いて」「私も落ち着いた方がいい……かと」「ですから茶葉の産地を教えなさいと」

 やっぱりお嬢様だけが質問してきた。同じ質問だから困るなぁ。

「東京です。たぶん、東京の田舎か島嶼部とうしょぶでしょうね」

 本当は製造者の住所が東京なだけ。具体的な地域表示が東京しかないから。

「そうですか。道理どうりでまずいですわ。宇治で飲んだ絶品とは比較に値しませんもの。まるでし尿ですわ。汚らわしいですわね」

「でもそのURLはきっと、宇治の茶葉でできてますよ。少しはおいしくなるんじゃないですか?」

「黙りなさい。確かにこのURLは茶葉でできているようですが、触り心地的に、そうですわね、高知県産ですかしらね。あまり味に期待できませんわ」

 高知県民の皆様、彼女は社長令嬢ゆえ礼節がなってないです。ご容赦を。

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