毒々しい知恵

金星人

第1話

「私は知恵を売る、宇宙から来た商人だ。あんた方は、それを得るために本だとかなんとか言うものを使いどえらい時間を費やして勉強して身に付けるそうだが、これさえあれば、そんな時間も労力も要らない。何だってこの注射を体に打てば、一瞬で脳にインプットされるんだ。もちろん知恵が得られるのだから、その快感も得られる。その辺で売ってるモノと比べちゃいけないよ。依存性の成分なんか入れてない。この中に入っているのは知恵とホモサピエンスに合わせた血漿(けっしょう)だけだ。それに値段は10円。どうだい?欲しいだろ?打てば一瞬でアイツより良い成績も、きっと身分も手に入るんだぞ?

…何だって?俺は死ぬ程勉強したから困ってないだって?

そうか、じゃぁこれなんかどうだ、今年の流行する面白いSNSアプリに関する情報が入ってる。でも流石に〝エリートさん〟の君なら何でも頭にインプットしているか…。

って知らないっ!?おいおい、まわりのやつらなんてみんな知ってるぞ。こんなの常識だぞ、常識。恥ずかしいなぁ、そんなやつ仲間に入れてもらえんぞ。

…そんなの知恵じゃないって?馬鹿言っちゃあいけないよ。頭にインプット出来るもの、これ全て知恵だ。知ってさえいれば君の人生に役立つのだからな。

え?要るって?よしよし、売ってやろう。たったの10円だ。安いもんだろう?はい、毎度ありぃ…」


翌年_____


「お、また来たね。今度は何が欲しいんだい?はい、これね。でもねぇ、もうあんまり売りたくないねぇ。うわっ!痛いって!そんな怒るなって、落ち着け、な?

何で売れないかって?そりゃぁ、こんな暑い夏の日に長袖って…。

腕見してみろ、

ボロボロなんだろ、

注射痕で

それでも売れと?

まわりだけが知ってるかも知れないと思うと不安で夜も眠れないって?

仕方ねぇな、ほれ、10円、毎度。


(…ニヤリ)」




ご安心下さい。彼らみたいな宇宙人はきっと来ません。

何故かって?あなたがそうであるように、地球人はスクロールするのに忙しくて注射を打つ暇もありませんから__________。

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