悪魔と男の子
金星人
信じていたもの
ここはとある村。ここにある男の子が居ました。髪は金色で目は青色をした、とても美しい少年でした。運動が大好きで、学校では友達とサッカーをよくしていました。困っている人がいたら迷わず手を差しのべる____まわりからの信頼もとてもありました。
ある日の放課後、サッカーでよく遊ぶ友達の一人が教室の席に座ったまま、帰ろうとしませんでした。彼は目が大きく、髪は黒色でストレート、普段は明るい子でした。しかし、今はガタガタと震えていました。まるで何かに怯えているかのように__。男の子がその子に
「どうしたの。はやくサッカーしに行こうよ。」
と声をかけました。すると、その子は言いました。
「見ちゃったんだ…」
「見たって、何をだい?」
「そ、そんなの、恐くて言えないよ。助けて、僕は喰われてしまうかも知れない、忘れられてしまうかも知れない。恐い、恐いんだ。
もし僕が居なくなっても、別の何かになったとしても、僕を、この僕のことを覚えていて、お願い…」
「一体どうしたんだい。とにかく校庭に行ってみんなで先に始めてるよ。待ってるね。」
「…。」
男の子にその後みんなと仲良くサッカーをしました。しかしその子が来ることはありませんでした。
その子はその日から姿を見せなくなりました。男の子とその友達たちは少し心配になりました。しかしそれ以外は何も変わらない日々。彼らは毎日楽しく学校生活を送りました。みんなでサッカーをしたり、どこかへ遊びに行ったり。みんなの絆はどんどん深まり、思い出がどんどん増えていきました。
そんなある日、男の子は先生に呼び止められ、ある部屋に向かわされました。入ってみるとそこは、窓はどこにもなく真っ白な壁しか在りませんでした。壁といってもあまりにも白く、どこまで続いているのか分からず、天井もよく見えませんでした。今たっているところも床があるのか感覚も定かではないように思えてきました。気づけば自分がどこから入ってきたのかも分からなくなりました。本当に真っ白の中___。
「恐い、助けてよ、ここはどこなの。」
叫んでも誰も居ません。
「僕はどうなるんだろう。何でこんなことに…」
自問自答しても答えは出てきませんでした。
喉は渇き、お腹もすき、意識も定かではなくなってきました。
どれくらい経ったのかも分からなくなり、この白さに飲み込まれてしまいそう、
そのとき何処からか声が聞こえてきました。
「だれ?」
男の子が訊くと、
「君は悪い子だ。あの子は君に殺されたんだ。この世で最も残酷な殺し方をしたんだ。私は偉い人だから、君を裁く権利がある。いずれ君も殺される。だって君は悪い子だから。」確かに先生の声でした。
「何の事?殺した?僕そんなことしてないよ?全然分からないよ。助けて、先生なんでしょ、」
男の子がそう言いきる前に飲み込まれてしまいそうな程大きな火が現れました。男の子は恐ろしさの余り、足がすくみ立つことすら出来ません。迫ってくるにつれて段々と意識は遠のき、目も開けられなくなってきました。
気がつくと、何人かの消防隊の人たちに囲まれて居ました。
「おぉ、この子だけは助かったか。良かった、良かった。怪我もしてないし、このままお帰り。あそこに君のお母さんが来ているよ。」
「おじさん、何があったの。」
「どうやら誰かが、子供達がたくさん居る昼間を狙って放火したらしいんだ。発見が遅くなってしまって学校は燃えてしまったんだ。君以外は残念ながら、先生も含めて誰も見つかっていないよ。」
あたりを見回すと学校は崩れかかったぼろぼろの骨組みがまだ燃え盛る炎の向こうに微かにあるだけでした。お母さんは
「良かった。本当に良かった。生きててくれて。帰ったら美味しい料理たくさん作ってあげるからね。」
お母さんと手を繋いで帰った男の子は、しかし、不思議にもお母さんの手が酷く冷たく感じました。
帰ると、お母さんはたくさんの料理を作ってくれました。特に、おうちで採れた野菜がたくさん入ったシチューはお母さんの得意料理でした。早速男の子は木のさじですくって一口食べました。しかし、男の子は不思議なことに何も味がしませんでした。さらに今は全くお腹が空いていないことにも少し驚きました。それでも完食し、男の子はお母さんに
「ごちそうさま」
お母さんは無言でした。どこか遠くを見ているような___
『何か変だな。どうしたんだろう。』
「お母さん?」
___何も反応がありません。あたかも僕がここにいないかのような、もともと僕はここには存在していなかったかのような___
こういうときはお風呂に入ってさっぱりしようと思い、風呂場へと向かいました。そして洗面台にある鏡を見たとたん____
それを見て僕は
「君の言っていたことが分かったよ。
お前は、これを見たのか。」
終
悪魔と男の子 金星人 @kinseijin-ltesd
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