〈感謝✨400PV〉もしも白雪姫が美しくなかったら
プラナリア
第1話 あるところに、白雪姫という美しくない女の子がいました。
ある冬の朝。若い王妃は
窓の外には雪が降り積もっています。
王妃は清らかな雪を眺め、膨らんだお腹を撫でました。王妃が縫っているのは、産まれてくる赤ちゃんのための、産着でした。
その時、王妃は誤って、針をチクリと自分の指に刺してしまいました。王妃はその細い指先をかざし、怪我を確かめようとして、紅い血と窓の白い雪の美しさに思わず見入りました。
「神様どうか、
そう呟いた王妃自身が、
やがて、待ち望んだ赤ちゃんが産まれました。
王様が赤ちゃんを抱いた時、窓の外に雪が舞い始めました。王様は雪を眺め、赤ちゃんを白雪姫と名付けました。雪のように清らかな、天からの贈り物。
皆は「なんて可愛らしい」と喜びました。
くるくると縮れた黒髪、浅黒い肌、まるまるとした頬。
意思の強さが表れたような太い眉。睫毛は長くないけれど、くりくりした瞳。ぷっくりした唇。
美しくはないけれど、愛嬌のある顔立ちのお姫様。
「王様によく似ておられる」と誰もが笑いました。
ただ一人、お妃様を除いて。
お妃様は、赤ちゃんを飾り立てました。レース、フリル、リボン。お手製の可愛らしい服の数々。
くるくるの髪を特製の櫛でとかし続けました。自分のように、まっすぐでつややかな髪になるように。
毎日、肌が白くなるようにと、取り寄せたクリームを塗り込みました。厚く、厚く。
けれども、白雪姫は、お妃様が夢見た美しい女の子には、どうしてもなれませんでした。
お妃様は、白雪姫が成長するにつれ、冷たい言葉を浴びせるようになりました。
「どうしてそうなの?」
「お前はダメね」
お妃様自身もそんなことは言いたくないのに、言わずにはいられないのでした。
そんな白雪姫が不憫で、王様は白雪姫をたいそう可愛がりました。白雪姫の祖母、お妃様の母である前女王も、白雪姫がお気に入り。「本当に賢い子だ」と褒めました。
するとますます、お妃様は白雪姫に辛く当たるのでした。
お妃様は、魔法の鏡を部屋に飾るようになりました。それは、お妃様に取り入ろうとした男からの貢ぎ物でした。
お妃様が鏡にその身を映すと、「世界で一番美しいのはあなたです、お妃様」「あなたは愛されています」と鏡はささやきます。
その瞬間、お妃様はたいそう幸せそうに微笑むのでした。
お妃様は自分の部屋に入ってはいけないと、白雪姫にきつく言っていました。
ある日、白雪姫は、窓の外に見たことのない鳥がいるのを見つけました。キレイな真っ白の羽、美しい声で鳥はさえずりました。
「もっと近くで見れないかしら?」
鳥が飛び立ち、木の枝に止まりました。お妃様の部屋の窓辺の近くです。
「お母様は、今朝はお出掛けになった。まだ戻らないはずだわ」
白雪姫は、そっとお妃様の部屋に忍び入りました。
黒檀の窓辺に駆け寄ると、白い鳥がすぐ近くで鳴いています。白雪姫はその艶やかな羽を眺め、美しいさえずりを楽しみました。
やがて鳥は飛び立っていきました。
「さよなら、キレイな鳥さん」
満足した白雪姫がお妃様の部屋を出ようとした時、キラリと何か光ったような気がしました。
「何かしら?」
見ると、美しい布がかかった、大きな鏡のようです。お妃様が慌てて出ていったとみえて、布が完全には鏡を隠しきれず、窓から差す光に反射しているのでした。
白雪姫は鏡に近づき、何の気なしに布をめくってみました。大きな鏡に、等身大の自分が映っています。
不意に、鏡が妖しく光り、ささやき始めました。
「世界で一番美しいのは…」
白雪姫は大きく目を見開きました。
「どういうこと…?」
「何をしているの、白雪姫!!」
突然の叫び声に、白雪姫は体を震わせました。見ると、お妃様が真っ青な顔をして立っていました。
「なんてこと…!」
お妃様は白雪姫の前に立ち、頬を思い切り叩きました。白雪姫はからだごと倒れ、その頬は紅く染まりました。
「ごめんなさい、お母様…」
お妃様の頬を、涙がつたいました。
それから間もなく、お妃様は自分の部屋に狩人を呼びました。
「白雪姫を、森に連れていきなさい。誰にも知られないように…」
鏡の前で、声を震わせ、美しい顔を強張らせて、お妃様は命じたのでした。
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