第5話 階段

階段は苦手だ。


上るうちに、何階にいるのかわからなくなるのだ。


学生の頃は、よく校内で迷子になった。

階段を上った先に、あるべき教室は無い。


プラナリア in Wonderland。

不思議の国に迷い混んだような、非現実感。


ここはどこ?


わたしは、だれ?


しかし、最近は、階段に惑わされることはなくなった。


階段を上るにつれ、息切れし、

「今、二階…」

「もう少しで、三階…」

と、いやでも何階かを意識しているからだ。


おかげで、四階建ての保育園でも迷うことなく、息子と娘の教室にたどり着けている。


年をとるのも、そう悪くはない。


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