かわをみにいったら、おとこのこが?!

 「……う~ん。はっきりしないわね、何だか。正直、優秀なスフィア使いが、透視能力にも優れていたって話、聞いたことないし。う~ん。」

 マフィンは、はっきりしないことが気になってしょうがなく。

 なおも証明方法を模索、悩み続けている。

 「!そうだわ。……私が考えていること、見抜いてみて?」 

 「?!えっ……?!」

 悩み続けた果てに、思いついたことは、マフィン自身に対して、力を使ってみてとのことで。

 思わぬそれに、目を丸くして。

 マフィンは、早速とばかり、立ち上がったなら、俺の側に歩み寄り。

 「立って。」

 「……ああ。」

 催促してきた。言われるがまま、立ったなら、マフィンは俺の両手を取る。

 「?!」

 急に、それも、女の子にされたがために、顔を赤くしてしまい。

 「……言っておくけど、変な気は起こさないでね。これは、ちょっとしたテストのようなものだから。」

 「は、はい。」

 変な気を起こさないよう、釘を刺された。

 両手を握られ、目を瞑り、マフィンは何か念じるように眉間に皴を寄せ。

 俺は同じように目を瞑り、彼女から伝わるものを感じ取ろうと全神経を尖らせた。

 「……?」

 なお、何のイメージも感じ取れない。

 目を開くが、マフィンはまだ、目を閉じたままで、念を飛ばし続けている。

 そのままマフィンは口を動かしてきた。

 「さあ、何を考えたか、当ててみて。」 

 と。

 「……。」

 俺は、……何も感じ取れなかったようだ、……何も言えない。

 「……?」 

 ふと、何か閃きが一つよぎり。俺はなんと、マフィンにハグをした。

 なぜそうしたか、分からないけれど、……何となく。

 すると、されたマフィンは顔を赤くし、また眉間に皴を寄せ、眉をひくつかせる。

 「……ちょっと……。変な気は起こさないでって、言ったわよね……。」

 「う……。ごめん、何も思い浮かばなかったんだ……。」 

 「……。」

 あれほど、変なことしないでと釘を刺したのに、と言い、目を瞑りながらも、怒りに今度は威圧を飛ばしてきて。

 俺は、謝るしかなく。もちろん、考えも読めなかったとも。

 マフィンは、小さく溜息一つ。

 目を開き、呆れていた。が、顔はまだ、赤いままで。

 「……ま、ないみたいね。私を勝手にハグしたことは、ほんと、どうにかしてやりたいけれど、テストがテストだし、不問にしとく。あんまり怒ると、大人気ないわ。」 

 「あ、うん。その、ごめんね。勝手にしちゃって。その、やっぱり、透視能力とかなかったってことか。」

 「……ええ。……それに、もう気にしてないわ。」

 ならば結果をと。

 結果として、俺にはそのような力はなかったと結論付けられる。

 ついでに、お咎めしたくもあるが、どうも不問にしてくれたようで。

 俺は、重ね重ね頭を下げた。

 「……。」

 「……。」

 要件はこれで終わりだが、この後言葉を紡げばよいものの、途端言葉がなくなり、互いに静寂がまた包む。

 マフィンは、俺をちらりと見たが、変なことで、目を逸らしてしまう。

 「?」

 何でだろうかと、首を傾げるが。

 「……ちょっとだけ、ときめいちゃったかしら……?」

 何か、小さな声で呟いていた。

 聞こえないように言ったつもりだったが、どうも猫の耳、聞き取ってしまう。

 「……ええと、マフィン?どうしたの?」

 聞くと。

 「!!……ううん!何でもない。気にしないで。独り言。」

 「……分かった。」 

 マフィンははっとして、こちらを見て。 

 手をあたふたさせながら、誤魔化してしまう。

 なら、素直に応じるしかない。

 「……。」

 「……。」

 そうなると、また静寂だ。

 まあ、用事も済んだから、このまま帰ってもいいが何だか、心残りがある。

 「!」

 なら、世間話の一つでも、しよう。

 失礼には当たるまいし、特段悪いことでもない。

 何も言わず、このままなのも、味気ないや。

 俺は、思いついた世間話を出そうと、マフィンに改めて向き直り。

 「ええと、村長さんは……。」

 「……それより、まだ話足りないなら、座りなさいな。」

 「あ、うん。」

 紡いだが、途中マフィンに言われ、素直にその場に座る。

 マフィンもまた、丁寧に腰掛けて、こちらを向いてきて。

 「……ええと、村長さんは?今更だけど。」

 改めて、思いついた話題を振る。

 今更ながら、村長さんはどうしているのだろうかと。

 いつもそうだが、どこにいる?

 家にいる場合もあるけれど。そうであっても、どこにいるか分からない。

 気配がしない。 

 「?お婆さまのこと?……味気ないチョイスね。」

 「う……。ごめんよ。何だか、いい話題が思いつかなくて。」

 話題のチョイスだが、聞いていたマフィンは、つまらなさそうに言ってきて。

 俺は、やっぱり間違えたかなと思って、謝る。 

 「謝らなくてもいいわ。世間話程度だし。そうね……。」

 「あ、うん。」

 だからといって、何もしないわけでもない。

 マフィンは、続けると意思を表明している。

 俺は、頷いて聞き入る。

 「……ふぅ。お婆さまは、谷伝いに、川と海を見に行っているわ。今日は、川や海の声を聞きたいって。」

 「へぇ。」

 マフィンが言うことには、そう、村長さんらしいや、川や海を見に行った、とのことで。

 感心し。

 「……。」

 「……。」

 だが、それだけで、これ以上のコメントが思いつかない。

 「!う……。」

 何か言わないの?ジト目でマフィンは訴えてきて。

 ……念ではない。普通に察しであるので。

 「……ええと。ま、まさか、大きな桃が流れてきたりしないよね?」

 「?!何それ……。」

 だから、懸命に言葉を紡いだら、マフィンは何だか可笑しそうな顔をする。

 「……でさ。割ったら、元気な男の子が出て来たり、なんてね。ははは。」 

 可笑しそうなマフィンに、中断されることなく俺は続けて。

 なお、最後俺は、何を言ったんだろうか、確かに可笑しいやと乾いた笑いをしてしまう。

 「……聞いたことない?元ネタ。昔話だよ。」

 「いいえ。何その話。」

 「……知らないか。」

 元ネタとして、ある昔話も言おうとしたが、分かりやすい触りも、知らない。

 どうやら、マフィンたちの間では、このようなお話はないのかもしれない。

 「でも……想像すると、なかなかシュールだわ。それ、お婆さまが背中に抱えて持って帰ってくるっての?ぷふっ。可笑しい。」

 そうであっても、想像してマフィンは、笑顔になって、軽く笑う。

 「……あはは。」 

 俺も釣られて、笑った。

 「あ!……すっかり忘れてたわ。お茶、出さないとね……。」

 「!」

 笑いによる衝撃に、マフィンはすっかり忘れていたと、思い出すことがあり。

 どうやら、俺やアビーに出す、お茶を用意し忘れていたみたいだ。

 「……いや、マフィン。いいよ。用事はもう、済んだみたいなものだし。後でアビーたちも呼んで、帰るよ。これ以上長居しても、何だか、悪いや。」

 俺は、遠慮をする。

 用事はもう、済んだのだから、わざわざ用意してくれなくても。

 手を煩わせるのも、悪い気がする。

 これから、アビーたちを呼んで、帰る。

 そうして、視線を外に移すが。

 「……あれ?」

 いつの間にか、全員見当たらない。

 外庭が、静かになっていた。

 縁側から俺は体を乗り出し、辺りを見渡し、耳を澄ます。

 ―……ひゃ~っく!も~い~か~い!!

 ―も~い~よ!!!

 「……。」

 遠くから、アビーや子供たちの声が聞こえてきて。

 こちらが色々やっている間に、アビーたちは別の遊びをやっているみたいだ。

 かくれんぼ。

 ―よ~し!おねーちゃんが捕まえるぞ~!うーがおー!

 アビーが鬼のようだ、やがて、駆け出す音も響いて来る。

 「……お茶、用意するわね。」

 「……うん。ありがとう。よろしく。」

 マフィンは、俺が固まっている様子と、アビーたちの様子を感じて、まだ、時間が掛かるわねと、お茶の用意をすると言ってきた。

 俺は、断ることもない。

 時間が掛かるなら、頂くか、と。アビーらしさに、呆れ半分、笑顔も添えて。

 

 外の静けさに、時折聞こえる子供たちの歓声、中の静けさ故に、よく聞こえ。

 「!」

 マフィンが戻って来た時に、机に置かれた茶碗の音もまた、よく聞こえる。

 用意してくれた。

 香りからすると、緑茶のようだ。

 勧められて、手に取り飲むと、ほんの微かな苦みと渋みに、後に不思議とくる甘みと、香ばしい匂いがして、緑茶なのだが、不思議な品種なのだと思う。

 感じる爽快が、言葉ない沈黙の中でさえ、彩を与えてくれる。 

 言葉なくとも、満たされた感じがする。

 「へぇ。」

 久し振りもあるが、その感覚に、感嘆の溜息をつく。

 今まで、いや、前世でも口にしたことはあるが、このような満たされたのは、初めてなのかもしれない。 

 「?」

 マフィンは、そんな俺の様子を見て、不思議に思い。

 マフィンにとっては、この緑茶は、特別な物でも何でもないらしい。

 俺が、そんな風を見せるのが、不思議に感じられたのかもしれない。

 そのマフィンに俺は、飲み切った茶碗を渡しては。

 「ありがとう。美味しかったよ。」 

 「!……そう。」

 お礼を告げる。

 マフィンは、頷くだけであり、その先はない。

 言葉ない寂しさあれど、満たされた感じが、補完する。

 お茶の効果か、静寂さえ良きものとして。

 俺は、そっと微笑みを浮かべた。

 ……これはそう、長閑なのだと。マフィンもまた悟り、静かに去る。

 だが……。

 「マフィンや!!大変じゃ!!!!」

 「?!お婆さま?!」

 「?!」

 そんな長閑さ壊す、村長さんの叫びが玄関から聞こえてきた。

 途端、空気は一変する。マフィンもそうだが、俺も何事かと思い、玄関に向かうと。

 玄関先には、誰かを背負う老婆の姿があり。

 いつもは、杖を突いて歩いているような人だが、この時は丁寧に背中に、子供を背負っていて、見た目らしくはない。 

 加えて、必死な感じだ。

 「!!男の子……っ?!」

 マフィンは、背負われた子供を見て、一言、驚いたように。

 「ああ!川と海の間に、流れ着いておったわ!」

 「!!……。」

 「?」

 村長さんが続けることに、聞いたマフィンは、目を白黒させて、かつ、俺とその子供を交互に見る。 

 「!」

 何も言わないが、何となく訴えていることは分かる。

 俺が話した、桃から生まれてはいないが、男の子が、それも川で拾ったということが、実現したということ。

 「……って。そんな場合じゃないわ。お婆さま、この子は……。」

 「獅子の子じゃ!レオを呼んで来い!」

 「?!」

 マフィンは、思い浮かんだ悠長を、振り払い、より事情を詳しく聞くと、ライオンの人の子供らしい。

 だからで、村長さんは、レオおじさんを呼べと訴えた。

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