そうだんはなぁに?

 だが、子どもにしては勢いがあり過ぎて、直撃したら誰かケガでもしかねないと思う。

 「わぁ?!大和お兄ちゃんごめん!!!」

 子供が一人、謝りの言葉を述べ。多分、直撃したと思ったのだろう。

 俺は、首を横に振り、平気だとして。

 かつ、スフィアを操作して、膜に包まれたボールを、子供たちの場所まで運ぶ。 

 「!おー!ウィザード!!」

 「きゃはは!すっごーい!」

 感嘆の声が、子供たちの方から聞こえて。ボールを俺にぶつけそうになったことなんて、どこかに行ってしまったかのようだ。

 俺が、ボールを送り届け、離すと。

 「?!」

 突風のような勢いで、誰かの影が出現し、ボールを奪い。

 土煙上がったが、晴れるとそこには、いつもの服装のアビーがいた。

 着替えてきて、整えたら駆け出してきたのだろう。

 ボール取ったアビーは、大きく口角を上げて。

 「キャッチ!じゃ、あたしの番だね!!いっくよー!」

 「!わー!おねーちゃんが取ったー!逃げろ逃げろ!!」

 俺に一瞥したなら、アビーは子供たちに向き直り、遊びに加わっていく。

 子供たちは、歓声を上げ、散り散りに。

 その子供たちの内、一人目掛けて、アビーはボールを投げ放った。

 「?!ちょっ……?!」

 なお威力は察して欲しい。

 地面にバウンドしたなら、爆発音を上げてそこを大きく抉り、まだ勢い衰えぬまま、子供たちに向かい。

 俺は、突っ込みを入れてしまいそうになる。 

 子供たちもそうだが、アビーもアビーだ、手加減知らず。

 ケガでもしたら、どうするんだろう?

 「うっ?!」

 言わんこっちゃないと、子供たちの内一人に直撃する形になり。

 呻き声を上げたように見える。

 が、違った。

 そう見えただけで、よく見ると、その剛速球、しっかり手で受け止めていて。

 「よ~しっ!俺っちのボールだ!うりゃー!!!」

 勢いほとんど変わらず、受け止めた子供は、アビーに投げつけていった。

 「……。」 

 杞憂に終わったようだ、俺の想像以上のタフさのようで。

 子供のくせに、その頑丈さに、こちらは敬服せねばなるまい。

 さすがは、レオおじさんの子供。

 やがて、何だか微笑ましくなり、こちらも感じる楽しさに、頬が緩んでいき。

 ……そうだったのだが……。 

 「……ちょっと……!」

 「!!」

 何だか、地の底から響いてきたような、おどろおどろしさ感じる声が、俺の後ろから聞こえてきて。

 思わず、飛び上がる。

 さて、何がと、ゆっくり振り返るなら、顔を手で隠していて、表情は読み取れないが、床を尻尾でバシバシ叩くマフィンの姿があった。

 悲哀から、怒りに変わったか?そう感じる。

 見て俺は、若干冷や汗が出てきて。

 「……女の子が泣いているのに……フォローもしないなんて……。」

 「うっ……。」

 おどろおどろしい口調のまま、マフィンは言ってくる。

 俺は、後ずさりし。

 だが、何も言わないままだと、火に油を注ぎかねない。

 何か、言わないと、と思考を巡らせたなら。

 「……い、いやさ。……そっとしておくのも、ありかなって。無理に何かして色々面倒なことになるのも、さ。……あはは……。」

 導き出した言葉、紡ぎ。 

 ただし、正直何を言えばいいか、分からないままだったがため、何だか、苦し紛れの言い訳かもしれない。

 「……そう……。」

 けれども、聞いてマフィンは、そう頷きの言葉を述べただけで。

 「……。」

 「……。」

 何も、その先を言わない。

 そのためか、外とは打って変わって、内は相変わらず嫌な静寂のまま、それも、気まずさを伴って。

 「……ねぇ。」

 「う、はい……。」 

 その静寂を解いたのは、マフィンで。

 この時上げた声は、トーンも戻りつつあるものであり。

 後退気味であった自分も、少しマフィンに戻り、聞き入ろうとする。

 「……今日、何しに来たの?」

 「……あ、うん。そうだね……。」

 続きを言ってきた、それも、予定を。元に戻ったと俺は、安堵し、紡ごうとして。

 「……でも……。」

 「?」

 俺の言葉が出来上がる前に、釘を刺すように途中言ってくる。なお、トーンがまた落ちてきたのに、少し寒気がするも、何だろうかと首を傾げて。

 「……もし、私をいじめに来たとか、暇潰しに来たとかだったら、……。」

 「?!」

 そう釘を刺してくるも、途中言葉を区切り。

 代わりとして、威圧を放つ。威圧に当てられ、俺は、背筋を凍らせて。

 マフィンは、顔を露にしないが、長い髪の毛を、風もないのになびかせ、かつ何をしたか分からないが、家をカタカタ揺らし。

 「!」

 見れば、光が所々から溢れ。感じることは、スフィアがそこかしこにあり。

 大きく、派手な音がしたと思うと、沢山のスフィアがマフィンの周りに、集まり、整列し、俺に向けて光を収束させる。

 マフィンの手の間から見える瞳は、スフィアのように嫌に鋭く輝いていて。

 《警告!ロックオン。》

 「うっ……。」

 盾が危機を告げる。

 俺は、恐怖し、つい構えたなら、同じようにスフィアを展開してしまう。 

 何だか、これだと火に油どころか、ガソリンを注ぎそうだ。

 ごくりと、生唾を飲み込み、思考する。

 このまま、下手なことを言うと、……レーザーで焼かれかねない。

 「……う……。その……。レオおじさんに頼まれてきたのと、ちょっとした、相談をと……。」

 「……そう。」

 思考の果てに、注意しながら言葉を紡ぐと、マフィンは言って、毛の逆立ちをやめ、スフィアたちを帰らせていく。

 「……。」

 その様子に、俺は安堵して、その場にらしくなく、へたりと座り込む。

 なお、展開したスフィアは、元に戻しているので、そこはらしいのに。

 その、予定を聞いたマフィンは、顔を上げて聞いてくれるようで。

 なお、泣き晴らした後のある、赤い目をしていて、見たなら、申し訳なさが込み上げてしまう。

 微かに、鼻もすすっているのも、まだ立ち直れていないのかもしれない。

 「……で。レオおじさまの頼みってのは、何?」

 「!……ああ。そうだね。」

 話を聞いてくれるようだ、始まりに聞いてきて。

 俺は、安堵に若干反応が遅れたが、持ち返し、本題を紡ぎ出す。

 「……レオおじさんから、カメラを借りていて……。現像を頼まれたんだ。いつもそうしているから、って。」 

 本題を述べたなら、バックパックを呼び寄せ、まさぐり、借りてきたカメラを取り出し、マフィンに見せる。

 「……ふぅ。そうなの。また、家族写真でも撮ったのね。」

 マフィンを訪ねた本題の一つに対し、カメラを見つつ、マフィンはいつも通りのことかとばかりに、溜息ついてコメントして。

 「よく来るんだ……。」

 「ええ。」

 いつも頼んできているだろうからかと、俺は試しに聞いてみると、包み隠すこともなく、頷いて。

 「いつもよ。カメラを買った時から、いつも来るの。家族の写真を現像してくれって。私としても、別に悪い気はしないわ。あんな大家族、まとめるレオおじさま、素敵だし……。」

 「へぇ。」 

 「……ん。貸して。現像しといてあげるわ。」

 内容はその通り、よく訪ねてきていたと。

 感心に頷いたなら、マフィンは手を差し出してくる。

 貸してくれということで。

 俺は頷き、マフィンにカメラを手渡した。

 丁寧に受け取って、マフィンは、大机の、自分のすぐ側に置いたなら、また、こちらに向き直ってくる。 

 「大和、あなたは?相談があるのでしょ?……一応言っておくけれど、アビーのことで相談だとしたら、手遅れよ。裸で走り回ってもおかしくないくらい、奔放な娘だから。」

 「!ああ。分かった、相談だね……。……って、別にアビーは関係ないよ。」

 要件はそれだけじゃない、これで終わりじゃない。マフィンは促してくる。

 が、途中釘を刺される。

 アビーのことについての相談は、受け付けないとのことだ。

 今まで散々言っても、どうにもならなかったのだろう、その言葉には諦めも見えていて。

 なお俺は、アビーのことを悪く言いやしない。

 「分かっているわ。」

 「良かった。……で、相談なんだけど、〝夢〟の話なんだ。」

 「……。」

 それが本題じゃないのは分かっていると区切り、勧めたなら、俺はマフィンに夢のことについて相談することにする。

 少し気になりやする。

 ただの夢かもしれないが、でも、占いとか何か、アドバイスが頂けたらと。

 思ったのだが、マフィンは返って、呆れた表情になり。

 「うっ……。」

 その呆れられに、この先を紡げそうもない。諦めそうになったが。

 「はぁ。……要するに、夢占いをしてくれってこと?」

 「……あ、……うん。そう、……だな?」

 呆れながらも、マフィンは代わりに言ってくれたが、なぜか腑に落ちない。

 そうじゃない気が、してしまい、首を傾げる。

 「……腑に落ちないって顔ね?」

 「……かもしれない。」

 見抜かれる。

 素直に頷いては。

 「……話してみて?内容によるわ。場合によっては、夢占いじゃなくて、予知の類かもしれないから。」 

 「あ、分かった。」 

 それがただの夢でしかないか、あるいは腑に落ちるほどのこと、例えば予知とかであるかは、話してみてと続けられて。

 俺は、頷く。

 頷いた上で、見た夢のことを包み隠さず話してみる。

 「……という内容なんだ。何かの予知か?それとも、妄想か。アビーに聞くとマフィンに聞いてみてと言われたから……。」

 「……。」

 話したら、マフィンは訝しげな表情をして、眉をピクリと跳ねて聞き入る。

 その様子に、何か妙だと言わんばかりで。

 マフィンは、そうして、熟考するように顎に手を持っていき、天井と俺を交互に見た。

 「……。」

 「……?マフィン?」

 気になりはする。マフィンに聞くと。

 「……予知じゃないわね。透視能力?かしら。」

 「!」

 答えをマフィンが紡ぎ出してくれた。

 のだが、自信はない。マフィンは、自信満々な表情ではなく、やはりまだ、訝しいと言わんばかりで。

 「……透視能力……。」

 俺は、言われた言葉を復唱して。

 「そう、ね。遠くの場所を見た、となると、そうとしか考えられないわ。気になる点はいくつもあるけれど。例えば、ウィザードとか。参考になる資料がないから、これ、とは言い難いのよ。」

 「はぁ……。」

 詳しくはあるが、繰り返し、はっきりとしない。

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