第78話 電波のあれこれ

 コロナの猛威は留まることを知らず。ゴールデンウィークはステイホーム。

 自粛自粛の毎日ですが、頑張って乗り切りましょう。


 私はと言えば、職業が最前線寄りなのでいつもどおりに仕事をしていますが、念願のスタッフ増員によって格段に仕事が減りましたので休暇が増えました。


 なので、休暇中は私もステイホーム。

 やっとのこさリメイク版「聖剣伝説3」を購入いたしましたので、これで暇を潰そうかと思います(……執筆は?)。


 いやもうね……リースがですね……ふふふ……。

 思わず、カメラのコントロールがですね……むほほ……。(ドン引き)


 そんなこんなで、久方ぶりの聖剣伝説ワールドを楽しんでいて、ふと思い出したことが一つ。


 何か物作りに携わった人間であれば一度は経験したことがあるかもしれませんが、世の中、不思議と同時期に似たような作品が生まれることがあります。


 この現象を「同じ電波を受け取った」とか「同じ星を見た」、などと表現するのは私の近辺だけでしょうか。島本和彦作品で触れられていたような気もしますが。


 例えば、マナ。

 マナと言えば、現在ではごく一般的に「魔法的なエネルギー」と認識されます。

 アニメやゲーム、漫画といった様々なメディアで採用されている言葉ですから、それを読んで育った方々には、ある意味基礎教養と言っても過言ではありますまい。


 私が最初に触れたマナという概念は、1993年に発売されたSFCソフト「聖剣伝説2」。お、冒頭に繋がりましたね。


 幼い私は聖なる剣と精霊、そして世界の根幹を成すマナの樹の設定と、故・磯野氏の荘厳な原初の森のイラストに魅了され、誕生日プレゼントに買ってもらって以来、狂ったようにプレイしていました。


 それから六年後。

 私は世界最初のTCGトレーディング・カード・ゲームたるMTGマジック・ザ・ギャザリングに出会います。


 MTGは現在も続く私の趣味の一つですが、このゲームにおける重要な要素である「土地」。そこから生ずるエネルギーにしてカードを使うためのコストであるマナ。当時の私がこのシステムをすんなりと受け入れられたのは、散々やりこんだ聖剣伝説シリーズで下積みをしていたからに他なりません。


 ある時、ふと気づきました。MTGが世に出たのは1993年。

 奇しくも、聖剣伝説2と同じ年に発売されたのです。

(まあ、1991年に発売された初代聖剣伝説にもマナの概念はありましたので、まったくの同時期というには若干の語弊がありますが、それでも短い間隔なのは間違いないと思います)


 当時に限っても、マナという概念を扱っているのはこの2タイトルだけではなかったでしょう。マナという概念そのものは太平洋の島国で見られる文化観ですし、一般認知の先駆けという意味ではラリイ・ニーヴンの幻想小説が初出と言えます。


 とはいえ、同時期にマナを基幹とした有力な作品が登場するのは偶然で片付けるにはいささか奇妙に思います。私はこの不思議な符丁の一致の発見を機に、クリエイターが同時期に同じ発想に行きつく「電波」のような存在を意識するようになりました。


 ちょっとズレますが、オルタナティブという言葉もそうです。

 どういうわけか2000年代初頭にあちこちでオルタナティブ、オルタネイティブといったワードを目にするようになりました。


 オルタナティブそのものは英単語(二者択一、既存の物に取って替わるもの)ですので、何らかの形で使われていても別段不思議ではないのですが、これもまた時期が重なって登場したように思えます。


 例えば――

 仮面ライダー龍騎における疑似ライダー・オルタナティブ(2002年)。

 英雄の別側面をオルタナティブと称したFate/stay night(2003年)

 あいとゆうきのおとぎばなし、マブラヴおよびマブラヴ・オルタネイティブ(2003~2006年)。


 発表時期にズレはあれど、製作・立案の時期は非常に近しいと思われます。

 私が把握し得ない何かに便乗したのかも知れませんが、それにしたって……当時は本当に集合無意識はあるのかもしれないと思いました。あ、そういえば、集合無意識という概念も一時期流行りましたね。


 一説によれば、人が死に瀕した時、お花畑を見たり、川をイメージしたりするのは全人類共通らしく、同様のヴィジョンを垣間見るのは脳の規格が同じだからなのだとか。


 似たようなもので、水木しげる先生も妖怪千体説を唱えていますね。

 人間が想像し得るモンスターのパターンは1000種類くらいが限界で、だからこそまったく異なる人種、文化圏であっても、似たような怪物が生まれるのだそうな。なので、「これは自分しか思いつかないアイディアだぞ!」と思っていても、同様の答えに辿り着いた人間は間違いなく存在します。


 故に、創作業界は出した者勝ち。

 カクヨムの物書き諸兄も、一生懸命考えたネタが誰かと被り、先を越され、悔し涙を流したこともあるのではないでしょうか?


 私は――あります。

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