第66話 参考資料のあれこれ
ようやく連休を頂きました。
ただの二連休がこんなに嬉しいだなんて……やっぱりうちの会社ってどうかしていると思う(死んだ魚の目)。
とはいえ、洗濯や掃除、買い出しなど、溜まっている家事を片付けなければならないので、遊ぶ予定なんて入れていないのですが。
遊びに行くには時間が足りませんが、家のことを片付けても余裕がある。
なので、久々に自炊をしようと思い立つ私。最近はジャンクフードかコンビニ弁当しか口にしていませんでしたからね。たまには炊き立てご飯が食べたいのです。
私が自炊をする時は、だいたい麦飯です。
麦に以外にも赤米だの黒米だの混ぜたりしますが、基本はやっぱり麦ですね。
麦はすごい。
食物繊維、たんぱく質、ビタミン、ミネラル。白米だけでは補えない栄養素がこれでもかというくらい詰め込まれています。
私は米2~3合と麦1合で炊くのがスタンダード。比率に直すと25~30%くらい。麦の割合が50%を超すと、粘り気が極端になくなって箸で掴むのも困難になります。箸で食べるなら30%くらいが限度でしょうか。
実際、刑務所の麦飯は米7割、麦3割の比率だそうです。糖尿病を患っている服役囚が、刑務所生活で症状が緩和したという報告もあるそうですから、麦パワー恐るべしですね。
しかしながら、麦は米と違って煮えにくいため、古来は米より先に煮たり、あらかじめ細かく砕いたりと工夫が必要だったそうな。
江戸時代などは、都市部では薪(燃料)を得るにもお金がかかるので、短時間で炊ける白米の方が経済的に好まれ、結果、白米ばかりを食べる生活が基本に。そのせいで江戸患い――脚気を招き、大問題になりました。こういった裏事情も面白いですよね。
あ。私が麦飯を食べるのは健康に気を遣っているから、というわけではなく、かねてより執筆の参考資料のために麦を炊いていたら自然と定着した、という感じです。
何のための資料かと言えば、当時創ろうとしていたシェアード・ワールドであり、現在連載中の小説群の共通世界観『エインセル・サーガ』のためです。
サーガ世界において、人間の主食は米と麦です。
まんま、室町から江戸時代にかけての日本のようなイメージですね。
どうして、日本のような世界観にしようと思ったのかと言えば、若かりし頃に読んだ上橋菜穂子先生の「精霊の守り人」に感銘を受け、アジアベースのファンタジーを書いてみたいと思ったことがきっかけ。守り人シリーズに触れたおかげで、ファンタジーと言えば中世ヨーロッパという私の固定観念を見事に吹き飛ばしてくれました。キャラクターや土地などの名称はともかく、作中の描写がどことなく日本臭いのはそのせいでしょう。
また、文化や風俗をろくに知りもしないヨーロッパ圏を模倣するより、勝手知ったる地元をベースにした方が何かと参考資料の用意も楽だろうと思ったからです。
なので、物書き仲間たちに世界観を説明する時、私は「サーガ世界は『仏教が伝来しなかった室町時代』だと思ってくれ」と言っています。
なんで仏教(というか、それに該当する宗教)が伝来しなかったかというと、食肉文化を入れたかったから。中世日本の食事事情って本当に貧相なんですよね。食事描写はバリエーションを持たせたかったし、貧乳キャラが実らない努力の象徴である牛乳を頑張って飲むシーンを導入するためには殺生禁断の仏教は邪魔だったのです(え、そんな理由?)。
その代わり、肉食の代用品として作られた豆腐や油揚げなんかは存在していないのでしょうが。
実際、今でもサーガ世界には特定の宗教的な組織の存在は想定しておらず、アニミズムの延長である『古の信仰』くらいしか宗教要素がありません。
というのは、現代日本においてもほぼほぼ信仰は失われており、代わりに科学が人々の考えの基本となっています。「ファウナの庭」におけるミラン君とファウナの立ち位置が、現代社会における宗教と科学の対比のアナロジーだとすれば、それを描くためには余計な宗教要素を排した方がすっきりするだろう、と思ったからです。
ちなみに、この設定は友人Sからはたいへん不評でした。
S曰く「人類の歴史において、宗教は偉大な発明品の一つ。宗教の無い社会は存在しない」とのこと。
あれでしょ。戦う者、耕す者、祈る者の中世三身分でしょ。いや、それくらいわかっているんですよ。わかっているけど、わかったうえでやっているんだから勘弁してほしい。
それに、ファンタジー世界で宗教を登場させるということは、大なり小なり「神」を実在させるということになります。
信仰によって現世に干渉できる超存在が実在する(せっかくの架空の世界なのですから、概念上の神のみに留めることは少ないでしょう)というのは、最終的にSFに辿り着きたい私としては不都合の方が多いのです。
いや、超存在はいるんですけど、ファンタジー的な神とか悪魔じゃないというか、どちらかっていうと異星起源の知性体というか……まあ、どのみち現在掲載中の作品にはまったく登場しないんですけれどね。
いつか、こういった架空風土記みたいなものも書きたいなぁと思います。
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