第1話 小説を書き始めたきっかけ(1)
エッセイとは……エッセイとは……うごご……。
太陽系六番目の惑星は土星……気合を入れる掛け声はどっせい……おやつにもおつまみにもばっちなりな殻つきの豆は落花生……え? もう始まっている? 作法とか良いからさっさと書け?
こほん。それでは、まず小説を書き始めたきっかけから書こうと思う。
ある御仁が「小説を書き始めたきっかけ、カクヨムにて公開するきっかけは何か?」と問われていたからだ。
これを読んだ時、非常にコメントを残したかったのだが、私のきっかけを一から語り出すと物凄い長文になってしまうこと請け合いなので、ネットマナー的にどうかと思って、こっちで書こうと考えた次第。
……実際長くなった。
気がつけば六千字を超えていた。読みやすいように三つに分割しようと思う。
†††
私が小説を書き始めたのは十五年ほど前になるとどこかで書いた。
が、それ以前は絵描き志望だった。
正確に言えば、漫画描き。
小学校の頃からノートや画用紙に漫画を描くのが好きだったのだ。
授業中の退屈を紛らわさせるため、ノートの隅っこに当時ハマっていたミニ四駆の落書きを書いたのが発端で、自分でもよく描けたと思ったので、調子に乗ってクラスの友人たちに見せたところ、これがたいへん評判が良かった。
「絵、上手じゃん!」
友人からの何気ないその一言は、勉強もできない、スポーツもできない、つまんない子供だったと自覚していた私の劣等感を払拭してくれるのに十分だった。
きっとそいつは魔法使いで、その言葉は魔法だったのだろう。
その時から、私は創作という魔法にかかってしまった。
それから私は馬鹿の一つ覚えで、漫画と呼べないような下手くそな漫画を量産し続けた。もう一度褒めてもらいたい。もう一度上手だねって言ってほしい。その一念で描き続けた。
†††
……のだが、中学生に上がった時、ぴたりと漫画を描かなくなった。
うちの中学校が、部活動所属が強制だったからだ。
部活しながら漫画を描くというのは難しかった。
私はパソコン部を希望していたのだが、定員の関係で入部できず、泣く泣く運動部に所属したという経緯もあるだろう。ちなみに卓球部である。
しかし、卓球という競技が気質に合っていたのか、先輩たちが穏やかだったからなのか、三年間の部活動は思ったほど苦ではなかった。
むしろ、楽しかったさえ言える。
一年生でレギュラーに選ばれたし、部内ランキングでも上位に位置していた。どうしても一位、二位の連中には勝てなかったが、それでも三位と四位を行き来するくらいの実力は持っていた。
劣等感丸出しの小学校時代にようやく手に入れた漫画という自己肯定が、中学校ではあっさり手に入ってしまったので、漫画を描く必要性がなかったのだろう。
引退を間近に控えた三年のある時、ふと思い出してみたように漫画を描いた。
卓球部だったので、題材は卓球だ。
題名は「Battle Storm」。
全然卓球っぽくない表題と内容は、今でも古い友人の間では語り草である。
「お前のおかげでバトルとストームだけは英語で書けるようになった」という友人もいる。もはや語り草ではなく、お笑い
だが――三年間の時を置いて描いた漫画は楽しかった。
それを褒めてくれる周囲の反応も嬉しかった。
やっぱり絵が描きたい。自分はやっぱり漫画家になりたい。高校に入ったら美術部に入って、本格的に絵の勉強をしよう。そう決意し、高校受験に臨んだ。
†††
……が。
そんなエピソードがありながらも、いざ高校時に入部した美術部ではろくに絵など描かず、部員同士でMTGやらTRPGやらのインドアゲームばっかりやっていた。
結論から言えば、挫折したからだ。
美術部にはものすごく絵の巧い女子部員がいた。桁が違う。才能が違う。その子に比べれば、自分などちょっと絵が巧いだけの一般人に過ぎないと、嫌というほど思い知らされたのだ。
もし、私が中学時代に美術部に入っていれば、その当たり前の事実にもっと早くに気づけていただろう。しかし、当時の私はペンはペンでもペン・ホルダーの腕を磨くことに必死だったのだ。それはそれで後悔してはいないが、この程度の腕前で美術部の門を叩いた自分が恥ずかしくてしょうがなかった。
いっそ辞めようかとも思ったが、美術部というのは顧問の先生も技術指導の先生も週一くらいしか来なかったため、ダベる環境としては最高だった。定期的に開催されるコンクール以外は絵を描かず、同じようにやる気のない仲間たちとだらだらと過ごしていた。筆を取った回数よりMTGで極楽鳥をプレイした回数の方が多いと思う。
そんなある日のこと。
いつものように美術室でダベりながら、高校で最も仲が良かった友人Sとゲームの話題で盛り上がっていた。
そのゲームはストーリーがちょっと難解で、エピローグの描写についてはプレイヤーの想像に任せるといった感じの内容だった。
なので、私が友人Sに自己流の解釈を熱弁していると、
彼は「その解釈、嫌いじゃないぜ!」と笑顔で言ってくれた。
――すまない。うろ覚えである。
が、こういうニュアンスだったのは間違いないと思う。
彼の言葉を受けて、自分の中に疑問が芽生えた。
果たして自分は、本当に漫画が描きたかったのだろうか、と。
漫画を描くことは好きだ。
しかし、もしかしたら本質は違うのではないのだろうか。
私は自分が面白いと感じていることを、誰かに伝えることこそが好きなんじゃないのか。漫画はそのための手段に過ぎなかったのではないのかと。今まで考えてこなかったけれど、それ以外の方法があるんじゃないか?
では、漫画以外で自分の考えた設定やストーリーを読ませる方法は何がある?
そう考えた時、鞄の中に入れていた一冊のライトノベルが目についた。
小説家志望、白武士道の誕生である。
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