1-34


「あなたが言っていた通りだったわ。二体とも刺青がある。黒い蝶と黒い幼虫のね」


 俺は後ろを向き、ピンクにウインクしながら「ほらな」と言ってやった。すると直後に舌打ちが聞こえ、ズワイはズワイで。


「あるにはあったわ。で、それがなんなの? それに探しに行くってどこへ?」


 俺は説明した。嘘を交えてな。ただ本当のところを述べるとすれば、蝶と幼虫の刺青は組織のマークじゃなく、いわば組織内での義兄弟のマークだ。マドゥームの特徴は必ず一対の組を持っていることだった。兄は蝶を、弟は幼虫を掘る。それだけだが、俺が奴らを見分けていた方法はそれだった。ここまで本当だ。で嘘の方は、惑星アクーに行くことに関してだ。アクーには裏組織に詳しい情報屋がいるからそこから探る。アクーはATGの勢力下にないから、レンジャーじゃない俺が単独で向かう。ついでに金を少々くれ。これが嘘だ。最後は別に嘘でもないが。


 ズワイはしばらく黙り込んだが、一度頷いて「分かったわ」と言った。ふう、と安心するのもつかの間だ。続けて


「でも、私の立場上だとあなたを外、それもATGの勢力圏外に向かわせることなんかできないわ。あなたはまだ疑わしい人間。あなたは確かに艦長の殺人犯を殺してここの人々を助けたけれど、マドゥームの兵士を使った自作自演かもしれないわ」


「何?」


「二人を殺したのも口封じかもしれない」


                                  続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る