第18話 アトリの憂鬱
こんちわ!私は長浜アトリ(ながはまあとり)っつーもんですわ。
栗ちゃんの友達としてよろしゅうしてもらってるさかいに。
見た目は派手やけど根は真面目やで。いやホンマホンマ!
こう見えても地元でも中々の進学校に通てるんやで。いやホンマやさかいにw
え、下手な関西弁がウザい?ふーんお兄さんそんなこというんだー、へぇーあっそう。じゃあやーめた。
今日は栗のお兄さんと一緒に買い物に来てるの。本当は親友の大津美穂(おおつみほ)と来たかったんだけど、美帆が今日は彼氏とデートなんだって。
あの子、おとなしそうな見た目のわりにけっこー男遊びが激しいんですよー。あーやだやだ、栗ちゃんを見習ってほしいですー。
でまあなんで栗の思い人のお兄さんと買い物に来ているかといいますと、栗は来週誕生日なの。なんでしゃーなしお兄さんについてきてもらってます。
栗はブラコンなんで私や美帆からの誕プレより、絶対お兄さんからのプレゼントのほうが嬉しいはずなんだよね。
でも横で陰気そうに歩いてるボンクラはそれに気づいてなさそうだし。
てゆーかこの人のどこに魅力があるんだろう。確かに顔は悪くないと思う。でもまとってる雰囲気というかオーラが絶妙に陰気臭い。
髪の毛もぼさぼさだし、前髪で目が隠れがちだから余計暗く見える。
「ちょっとーお兄さん、こんなギャルと一緒になんてお金払わないと歩けないよw
もっとテンション上げていこうよ!」
「いや今日君に出会ったことでテンションダダ下がりなんだが」
カッチーン、なーんでそんなこというかねぇ。確かに強引に連れてきたのは悪かったけど、お兄さんからも栗になんかプレゼント買うちょうどいい機会になったじゃん。
去年栗からさりげなく自慢されたお兄さんからのプレゼント見て、美帆と二人で愕然としたんだから。
英文だらけのダッサイパーカー自慢げに学校に着てきて、
「なんかプレゼントでもらったから着てるだけだけど。超ダサいけどまああったかいし、上着にはちょうどいいわ」
なんて言うんだよ。いやダサすぎでしょ。しかもよく見たら英語じゃなくてドイツ語だし。Nietzscheじゃないよ、ニーチェって痛すぎだよ。
しかも栗、そのダサいパーカー全然脱がないし。美帆と二人でなんて言えばそのダサいパーカー脱いでくれるか頭を悩ましたもんよ。
あんなセンス無いプレゼント好きな人から渡されたら私ならがっかり。百年の恋も冷めるね。でもこの前栗がうちに泊まりに来た時パジャマとして着てんだよね、あのパーカー。
いや気に入りすぎでしょ。どんだけブラコンなんだよ。全然そんな風に見えないのに。
とにかく栗にあんなダサい恰好させたくない。このボンクラ根暗ダサ男に少しでもいいものを栗にプレゼントさせなければ。
「まあまあまあそんなこと言わずにさぁー。栗もお兄さんからのプレゼント楽しみにしてるんだし、楽しい気分で買い物しないといいもの買えないよ」
「まあ一理あるけど」
「そうそう。てゆーかお兄さん今年は栗に何あげる予定だったの?」
「うん僕?今年はシェイクスピアの詩集をあげようかなって思ってたんだけどどうかな?なかなか悪くないチョイスだと思うんだけど」
「マジで言ってます?」
「大マジだけど」
いやないわー。確かに私たちはそういうものにも触れるだけの教養はあると思うよ。それは栗だって同じだろうけど。でもそれにしたって中学生の妹にシェイクスピアの詩集を誕プレにしようと思うかね。
「ち、ちなみにそれっていくら位するの?」
「うーん1万円くらいかな」
いや1万だすんならもっといいもの買ってあげてよ。まあでもお兄さんが妹の誕生日にケチケチしたものをあげるってわけじゃなさそうだね。
これだったら私が指南してあげたら、栗が喜ぶもの選んでくれるかも。あくまで選ぶのはお兄さん、私じゃない。
「お兄さん正直言うよ、センス無さすぎ」
「な、なんてこと言うんだ。君にはまだ分からないかもしれないけどシェイクスピアの詩に触れることは将来絶対役に立つんだ!
だいたい前から思ってたんだけど、君は僕に対して少し失礼じゃないか。かりにも僕は年上なんだし」
「はいはい、顔真っ赤にして言わないのwごめんごめん、でもやっぱ私たちくらいだとシェイクスピアの詩集よりかはもっと欲しいものがあるんだよね。
お兄さん、中学生の女子が欲しいもの分かる?」
「いや・・・分からない」
「でしょ?だったらここは私の言うことを参考にして栗に誕プレ買ってあげたほうがよくない?」
「でも僕が何買ったって栗は気に入らないと思うよ。去年悩みに悩んで買ったパーカーパジャマにされてるし。あれマルシェのパーカーなのに」
「えー!あのダッサイパーカーマルシェのだったの!」
「ダサくない!そう。栗が欲しいって言ってたから買ったのに」
マルシェはいま若い女子に一番人気のブランドなの。まさかマルシェからあんなダサいものが出てるなんて。
「そっかーお兄さんなりに考えてはいるんだね」
「まあ一応」
「分かった。ほんとはお兄さんに自分から買ってもらおうと思ったけど私が一緒に選んであげる。栗の喜ぶ顔も見たいし」
「君、意外と友達思いなんだね」
「そう、惚れたでしょ?」
「いや、惚れたというより少し見直した。さっきは怒って悪かったよ」
「え、いや、マジレスあざす」
まあなに、この人確かにいい人ではあるよね。
私も少しお兄さんのことを見直した。さっきよりも少しテン上げでデパートに向かった。
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