第5話 ボッチ
僕は友達がいない。どうやら僕はあまりコミュニケーションがうまくないらしい。
でも友達がいなくても僕は平気だ。家に帰るといつもお姉ちゃんか栗が構ってくるので、人生に一つくらい人間関係から解放される場所があってもいい。
まじめにひたすら授業を受けていると、あっという間にお昼休みだ。
僕はお弁当を持って学校の体育館裏に行く。ここにはもう使われていない古い運動部の倉庫があり、人はめったに来ない。毎日ここでお弁当を食べているが、ここで人にあったのは不用品を処分しに来た用務員さんに一回だけだ。用務員さんには少し哀れんだ目で見られたけど。
携帯が振動した。ラインの通知が2件来ていた。
1件目は栗からだった。
「お弁当少ない。いまから作りに来て」
ほら見ろ、朝ご飯ちょっとしか食べないからだ。栗からのラインは既読無視する。
2件目はお姉ちゃんからだった。
「近江、さっき豊ちゃんに出会ったから今日は近江は用事があるから勉強会開けないって伝えといたよ。豊ちゃんに、近江はいつ空いてますかって聞かれたから、しばらくは忙しいって答えといたから。あんたは家事もやってくれてるし大変だから断ってもよかったわよね」
うーん、お姉ちゃんなりに気を使ってくれてるんだろうけど僕は全然平気だし、郷子さんに恩返しの意味も込めて豊に勉強を教えてるからあんまりことわりたくないんだけどなぁ。
「ありがとう、気遣ってくれて。でも家事は好きでやってることだし、豊に勉強を教えてあげることで僕の勉強にもなるからまた期を見て豊と勉強会を開くよ」
3分ぐらいお弁当をもしゃもしゃと食べていると、また携帯が振動した。通知が2件来ていた。
今度はお姉ちゃんの通知が先だ。
「ふーん、近江は私より豊ちゃんを優先するんだ。あーそうなんだー、私は近江のお姉さんなのになー」
あれ、なんか怒ってるぞ、めんどくさいな。お姉ちゃんは時々急に機嫌が悪くなるからなぁ。
「別にそういうわけじゃないよ。豊とお姉ちゃんだったら、もちろんお姉ちゃんのほうが大事だけど、家のことで郷子さんに散々お世話になったからきちんとお礼はしたいんだ」
2件目は栗からだった。
「ちょっと、何無視してんの。既読ついてるんだから返信してよ。お弁当が少ないの。作らなくてもいいからなんか買ってきて」
栗も栗でめんどくさい。ずうと無視してると家に帰ってからさらにめんどくさいから、今のうちに返事しておくか。
「コンビニにでも買えに行けばいいだろ。もうお小遣い全部使っちゃたのか」
二人に返信してからすぐに返信が返ってきた。
「ウザ、今日財布忘れたの。いいから何か買ってきてよ」
「私だって郷子さんには感謝してるけど、もう充分豊ちゃんに勉強を教えてあげたじゃない。もう恩返しは済んだっていいのよ」
はぁ、ほんとにこの姉妹は。それぞれ別に疲れるな。
僕は栗に「分かった。なにか買って持っていくよ」と、お姉ちゃんには「まあまあ、僕が個人的にやってることだから」と返信し、残ったお弁当を掻き込んだ。
購買で、卵サンドを買っていき栗の学校に向かう。お昼休みは残り30分、栗の学校までは自転車で10分。
はぁーめんどくさい。自転車のペダルがぐっと重くなるような感触に耐えながら、栗の学校に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます