【双独所持者】
【
「……お? おおっ! なんかよくわからないけど五文字! なんかスキル名が超厨二くさいけど五文字!」
文字数的には五段階中二番目な訳だし、絶対良いスキルだよね! 妥協するとはいってもせっかくなら強いやつが欲しいし。
「して女神NPCさんや、その能力とは?」
女神(仮)NPCさんが、くじ引き箱の台を除けて私の目の前に説明文の書かれたウインドウを出してくれた。
「えーと。『
すげっ(語彙力)。やばっ(語彙力)。
おっと。またも地が出てしまった。
というかこれってもしかしなくてもかなりのアドバンテージではなかろうか。
【 ▷課金して再抽選する 千円】
【 ステータス分配に進む 】
ん?今気付く。私の目の前には新しいウインドウが現れていた。こんな感じ。
…………………………………ちょっと待って?
え? 二つ持てるんじゃないの?
てか一つ目すら貰ってないんですけど。
これだけだったらスキル持ってないのと変わらないよね? ドユコト?
「わぁ双独所持者ではないですか。おめでとうございます!」
なんで貴方そんな和やかで穏やかなんですか。文字通り女神の微笑じゃないですか。
「いや、他のスキルは別に貰えないんですか?」
なんとか言ってみてよ女神さん。
「あと二つまで持てるので、ちゃんと貰いたいのでしたら二千円ですね」
そんな事を鉄壁の微笑で
なんでだろう。さっきまで女神だと思ってたのに、急に悪魔に思えてきた。
ていうか(笑)って聞こえたんだけど。
もう悪魔っていうか邪神だ。邪神。この人絶対堕ちてる。
混乱している私を余所に、ウインドウの左下の数字は刻々と減り続けて──
「いや時間制限あるんだけど!?」
十五、十四、十三、十二、十一………
「うひゃぁ!? 待って待って! どーしよ!?」
「早く決めなくては強制的にステータス分配画面に進みますよ(笑)?」
そう言ってNPCさんが満面の笑みでアドバイスを………
────────オイちょっと黙っとけ邪神!
邪神さんがそんな科白を吐いている間にも、どんどん時間は減っていく。
でも本当にどうしよう。別にユニークスキルが無くちゃいけないことはないけど、流石にそれは──でもでも、このゲーム買っちゃったし私もう出費を増やしたくは───
「……五w 四w 三w──」
この邪神とうとう( )で隠さずにwのガチの嘲笑入れてきやがったよ!
「〜〜〜〜しょうがない! 分かった分かった。払うから! 払ってやりますよ!」
「毎度ありです」
「くっ……」
だけど、スキル無しでのプレイはやっぱり嫌だし……
背に腹はってことで。諦めよう。
はぁ、ま、これでまた良いスキルを引けば戦力向上だからね。ここは前向きに行こう。
そうやって自分に言い聞かせていると、私の前に、横に除けられていたくじ引き箱の台がスーっと移動して来た。
さっきはそれどころじゃなかったけど、よく見たらこれ台車じゃん。ファンタジー要素皆無じゃん。
「さぁどうぞ? 一枚ずつでも二枚一気に取っても構いませんよ?」
五文字スキルがどれぐらいレアなのかは知らないけど、
くじ引き箱の中でシャカシャカ音を立てて紙を混ぜながら私は物思いに耽る。
二つユニークスキルがあるってことは、もしかしたら誰にも真似できないコンボとか生み出せないかなぁ……。
双独所持者のことさえ伏せれれば、「アイツのユニークスキルは一体どうなってるんだ!」みたいな感じになるかも……で、そのまま一気に有め───違う! 有名にはなりたくない! できればちょっと尊敬されるくらいの中堅プレイヤーとしてが良いな。
──これだけ大口叩いて運動音痴のせいで初心者にも叶わなかったらどうしよう。
「貴方の考えていることはわたくしにお見通しですよ?
なんかこのNPCすっごく好戦的じゃない? おまけに人身掌握されそうで怖いんだけど。これってあれ? 殴りかかっても良いやつですかね?
「まぁ長考癖があるって自分でも分かってるから戻してくれて嬉しいけどね」
スキルでの今後のことや目の前で微笑んでいる邪神について考えながら、取り敢えず一枚掴んで取り出し、開封する──
────【転送】
……………二文字かぁ。
しかも見た感じだけでなんとなく理解ってしまう私のゲーマー脳が悲しい。
「──うん。まぁ、説明オープン」
【手持ちもしくはインベントリのアイテムを、半径十m以内の場所に限り自由に転移させる。また、半径十m以内の自分のアイテムも自分の手元に転移させることができる】
ん? 思ってたより複雑で使い勝手の難しそうなスキルだなぁ。
「時間とか数の指定は無いし……。運搬用かと思ったけど戦闘にも転用出来そうだね」
こうなったらもう止まらない。なんかこう……今すぐ試してみたくて体がウズウズするのが自分でも分かるくらい楽しみにしてる。
「無駄にハードル上げるのも良くないかな。さて次」
二文字とはいえなかなか面白そうなスキルを手に入れたことだし、いろんなゲームで検証ギルドのギルマスを務めた私に言わせればもう文字数なんて関係ない!
ちなみに、検証ギルドっていうのは……色々あるけど、私のギルドでは、魔法の射程や威力、スキルの倍率なんかを算出したり、初心者さん用にレベ上げ向けMOBの攻撃パターンを攻略掲示板に公開したりしたギルドのことなんです。
つまり、この私にかかれば二文字スキルでも使い方次第では良くなるかもねってことですよ。
ただ、確かに二文字でもいい。検証はやっぱり楽しいけれど、検証をメインにゲームをしたくないというのもまた本当だから……まぁいっか!
よし。面白そうなの来い!
期待度急上昇で引く三枚目……ていっ!
「……真っ白?」
「あ、それは今後のアップデートで追加される予定なので白紙で大丈夫ですよ? 変ですねぇ。入れたはずないのですがぁ」
「こ、こんのぉ……」
とことん舐められてるなこれ。あー、さっさとゲーム始めたい。
「もーいいよ、緊張感とか期待とかアホらしくなってきた。ほい」
「どれどれ……あ、白紙でございますね」
「はいはい。よいしょ」
「白紙でーす」
「ほっ……と」
「白紙でございますデスー」
「───七回目で言うのもなんだけど、五枚一気に引いて後から選んでいい?」
そもそもこれン中に白紙以外入ってんの?
かつてここまで顧客をバカにしたゲームクリエイト会社があっただろうか。いや、もちろん無い。ギネス取れるかと思うくらいウザい。
段々無表情になっていく私に、自称女神もとい邪神が適当に箱を漁り、六、七枚ほどを出して──四枚を投げ捨てて、残りを伏せた状態で差し出してくる。
「これらは三枚とも書いてありますので。この中から一枚お選び下さい」
「………二文字スキルだけ選んだとかじゃないの?」
「そこの落ちてるのをご覧いただければ私の冤罪は晴れるかと」
私は落ちてるのを拾う。全部開いて確認してみると、呆れるくらい全部白紙だった。
これは……今確定した。このゲーム作った奴はドМだ。客に叩かれるのが楽しい人くらいじゃないとここまで煽れんだろう普通。
もう緊張感もクソもなく邪神の手から一枚をひったくると、これまた雑に開封する。
ああ、やっと書いてあった。
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