第3話 賊との戦い

 巨大狼達の速いこと、其に初めに指示さえすれば、後は振り落とされないように、しがみついているだけ。

 指示内容は、「この森の中で大勢人が居る所に向かえ」だけじゃ。


 コロは群れのボスだったようで、他の狼達より抜きん出た能力を持って居る。

 わしの「急げ!」の命令に、他の狼達が引き離され見えなくなる俊足じゃ。


 やがて山賊らしき一団が見えて来た。

 上手い具合に、一番手前少し離れて縛られた男女と見張りが一人。

 わしは、その場に飛び降りた。

 駆け寄るわしに、「わわっ!何者・・・」最後まで言わせず、喉笛を引き千切ってやった。

 返り血を、浴びるようなへまはせん!

 見張りの男は、唸り声さえたてる事が出来ず、派手に血を吹き出しながら倒れ、ピクピクけいれんしておる。

 倒れた男を見ると、兵士の鎧を装着して居る「山賊とは思えんな」


 コロは勢いを着けたまま、20人程の集団を撥ね飛ばした。

 4人程が潰れて、原形を留めぬ肉塊になり、7人が骨折でも負ったのか呻いて居る。


 残りは9人か、「コロ控えておれ」

 コロは命令に従い、その場でお座りして待機。


 混乱が修まった山賊どもは、襲撃したのが幼女と知り、ニタニタ気持ち悪い顔になって居る。

 統一された軍隊の装備に、下卑た容姿の男達は、傭兵かどこぞの私兵であろう。


 確り包囲体勢が、整うのを待ってやり声を掛ける。

「わしは、クロノ家当主の長女マンバじゃ!」

 小助の話では、わしはお姫様じゃぞ!!凄いだろ!姥捨て山に送られた時は百姓家のババアじゃったのにな。

「両親を取り戻しに来た、貴様ら見逃す気は無い、降伏せよ」

 下卑た笑いが返って来よる。


「嬢ちゃん言う事はいっちょまえじゃねえか、!ぐふっ?」

 瞬時に近より、喉を掻き切る!!無駄口男は豪快に血を吹き出しながら倒れよった。

 この程度大切な小助刀を使うまでもない、素手で掻き切りじゃ!

「無駄口を叩くな!!」

 成り行きを目の当たりにしても、理解の範囲を越えた出来事に男達は硬直しとる。


 わしの動きが見えておらん、幼女の凶行とは思えず、男達は辺りの敵を探す素振りをみせて居る。

「キョロキョロするな!!降伏する気が無いなら死んで貰う、訊問は一人居れば充分」

 コロも、お座りの態勢で、低く唸り声を上げて威嚇じゃ。


 地響きと共に、小助達がやっと到着、圧倒的な3匹の威圧感に、迷っていた兵士達はやっと降伏の意志を示した。

「首の後ろで手を組め、這いつくばれ!!」「そのまま動くな!!!」

「ヤン、ニン、トン動いた奴は喰って良い!!」

 男達は「ひっ!!」っと悲鳴を上げ振るえておる。

 一人「止めろぉ捕虜らしく扱え」とほざく。

「トンその男を喰え!!」

 トンは2口で男を食い尽くしよった。

「勘違いして居るようじゃな、貴様らは山賊を名のって居る、扱いは・・・解るな?」


 元々聡明で愛くるしい容姿のマンバ、山姥の妖気を含む魂が入り込んだ今、妖しく底光りがするようなマンバちゃんです、威圧を込めて「解るな?」と言いニヤリと笑いかけるとどうなるか。

 ぶるぶる振るえ、異臭を放つ男達を残し、両親の戒めを解いて居る小助の所に向かった。

「情けない男達じゃ、糞尿お漏らししよって」



 どう呼ぶか、少し迷い小助の様子から、両親と確信し話し掛けた。

「父上母上ご無事・・・・・・じゃ無い様子」

 父は切り傷だらけの血塗れ、母も多少の傷を負って居るよう。

 豚まんのような顔をした、父さんらしき男、一応母を庇って戦ったようじゃ。

「父上母上少しの間動かず待っていて!」


 大急ぎ適当な草をむしり取り、モミモミグチャグチャ。

 両親の傷に塗りつけた。

 瞬時に傷が治り、唖然とする両親に顛末を説明した。


 襲われた理由、ハッキリ言うと敵が誰か解らん、情報不足じゃ。

 賊の正体推測でも良い、と言い聞いてみた。


 父上は話下手なようで、要領得なくてだらだら長い、ぐにょぐにょと分かり難い話が続いた。

 話し方で充分理解出来た、この男、父上無能じゃ。



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