俺から接吻するにはあと身長が50センチ必要らしい

スライム道

ブーツ身長5センチプラス俺の精神5000マイナス

「大吾くん私、貴方と一緒にプレーしてたら好きになったみたい。」


「なんでだよ、アンタと初対面だぞ。たかがハンドボールやっただけで好きになるとかチョロすぎだろ。」


今告白された女性は大学の同期でサークルは違うが同じハンドボールをやっている。彼女はそこのマドンナ的存在でそれが目的で入る人がいる程だ。しかも強化選手に選ばれているくらいには上手い。だけどスランプ気味らしく偶々恩師の元を訪れた俺と他二人が行ったら恩師の孫だった彼女に会った。


「ふふ、そうかもね。そんなチョロ過ぎる私にゴールを決めるチャンスをくれないかしら。」


「は!?」


ゴールどころかフィジカル違いすぎてもう体当たりされてるんですけど。俺の身長は140センチだぞ。貴女、180センチくらいはあるでしょう。


「ねえ明日デートしましょう。これ私の連絡先、大学終わったら放課後待ってるからね。」


仏説・摩訶般若波羅蜜多心経

観自在菩薩・行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄。舎利子。色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。受・想・行・識・亦復如是。舎利子。是諸法空相、不生不滅、ベシッ


「もう、こんなに迫ってる女が居るのに何考えことしてたの?」


「ええと真言宗の奴を思い出してた。ってか監督!」


「なんだチビ助、避妊はすんなよ。ひ孫が早く見たいから。」


何サムズアップしとりんやあ。


しかしほぼ強引に顔を前を向けさせられる。


「私の名前は東城 明日香、よろしくね。後好きだって証明。」


チュっ


「ほげえ何してんだかあ、やめりん!女子がそげんことすんじゃなかあ。」


「おいチビ助、色々混じってる。三河となんか混じってる。」


「いいでしょう、乙女のファーストキスなんだから。大事にしといてね。」


チェリーボーイ死す。


終わり





ではなくてデート当日


そそくさに急いで帰ろうとした俺はすぐに捕まった。


「なんで逃げるのかな。」


明日香は厚底のブーツを履いていた。季節はもうクリスマス間近でおかしくない格好だが身長が明らかに上がっている。俺が惨めに見える。もう姉に抱き抱えられる弟みたいな格好になってるから。


「ねえねえ、どこ行きたい?」


「どこも行かねえよ。」


「そんなこと言わずに。」


「おーい大吾。いつもの肉屋に、、、失礼しました。」


「逃げるな助けろゴリラ。」


「やだなあ、こんな面白い展開。逃げやしませんよ。」


「おい太郎、表へ出ろ。」


「荒事は苦手なもんだから。東城さんだっけここから先にある肉屋さんに行っとくいいよ。あそこのおばちゃん昔馴染みがあるから外堀埋めてってよ。」


Wer reitet so spät durch Nacht und Wind ?

Es ist der Vater mit seinem Kind ;

Er hat den Knaben wohl in dem Arm,

Er faßt ihn sicher, er hält ihn

Mein Sohn, was birgst du so bang dein Gesicht ?

Siehst, Vater, du den Erlkönig nicベシッ


「ほらほら目を覚まして行きましょう。」


「ああ行くさ魔王の元に。」


「魔王?」


「じゃあな大吾。彼女といる最中は般若心経とかシューベルトの奴とか聞くんじゃないぞ。」


肉屋まで引っ張られる。ずるずると


「いらっしゃい。あらまあ大吾ちゃんと彼女さんかな。」


「はいそうです。」


「そっかあもうそんなお年頃なのね。お母さんと一緒によくここに来たのが懐かしいわ。」


もはやおばちゃん達マダムのスキルに敵うまい。生きる屍の如く俺は注文をする。


「おばちゃんいつもの。」


「はいはい、彼女さんは何にする?」


「じゃあ大吾君と同じのを。」


「今揚げるからちょっと待ってね。」


おばちゃん、サラッとメモを書き揚げを開始する。大吾は見た『大吾・彼女、美人、学校→保護者連絡』なんつー連絡網、町内会のフットワークが軽い。


「なんか下町の商店街って感じがしていいね。」


「そりゃあな。俺が大学に入って戻ってきたときも変わってなかったからな。」


「あーそういえばみんな転勤族なんだっけ。」


「そう、みんな東京から全国に飛び回る親父持ちだよ。」


「大吾君の方言ってどこの?」


「主に東海と東北だな。そこらへんが一番居たからな。」


「ほい上がったよ。コロッケとメンチカツ。」


「ありがとおばちゃん。ほい180円。」


「なんだいそこは彼女のも払ってやるのが漢ってもんだろう。」


「わかったよ。もう180円持ってけ泥棒。」


「毎度。」


俺はそそくさに肉屋を出て行く。


「もしもーし小学校のx期三学年の担任の大山さん?よかったら彼の保護者に連絡して。」


個人情報保護法どうなったんだ。


「ほへえ中々お値段の割に大きいね。はむ、あっコロッケはカレー味だ。」


ってもう食ってる奴がいる。


「これ食ったらもう帰るからな。」


「えーそんなこと言わないでよ。」


「じゃあじゃない。もう日が暮れるのは早いんだ。」


「じゃあ唇にキスしてくれたら帰る!」


「やめりん、そして身長差考えろよ。」


彼女がブーツを履いてるために届かない。否ブーツを履いていなくても届かない。後50センチメートル、俺に身長があれば。


俺はジャンプ力には自信があるだが接吻だぞ。接吻にジャンプで飛び込んでみろ。歯が食い込んで血だらけになるだろ。


神さまお願いだ。


この瞬間だけで良いから身長を伸ばしてくれ。そして俺を逃げさせろ。


「じゃあデートしよう。」


「いやだ、じゃあな。」


全力ダッシュだ。


「つっかまえたー。」


「嘘だろおい。試合の時は本気出してなかったのか?」


「乙女は恋の為な幾らでも速くなれるよ。」


なにその便利機能


しかしふと思う。今ならできるわ。


チュッ


「はわわわ。」


「よし、俺帰る。」


「そんなあ大吾君責任取って。」


「責任は取る。でも今日はもう帰れ!会って2日、婚前交渉はしません!」


「堅いなあー。」


そう草食を飛び越え断食チェリーボーイはお堅いのだ。キスだけでもう気絶しそうなんだもん。もう種しか残ってないんだから。もう心にジャンピングシュートが決まったんだから。


「でも、彼氏ってことでいいのかな。ならもう一回!」


明日香は目を閉じて肩を固定する。


でも、


「物理的に首が届かないんだよーー!!」

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