第26話 僕達の知らない1週間
アンニーナさんが、ギルド長のソイントゥさんに指示を受けて部屋を出て行った。ソイントゥさんは扉の方に目を向けてアンニーナさんが出て行くのを確認していたが、すぐに僕らの方へと向き直る。
「おまたせしてすみませんでした。それでは、何故エリオット様達をこの部屋へ呼んだのか、今冒険者達やダンジョンに何が起こっているのか、お話したいと思います」
そう前置きして、ソイントゥさんは今起こっていることを順番に話し始めた。
「話は半月ほど前に遡ります。王国をずっと拠点としてくれている、ある古参の冒険者達が組んでいるパーティーがいつものようにダンジョンから戻ってきて帰還報告をしたのですが、その報告の内容が普段とは少し違っていました」
彼女が言うには、普段と違っていた部分とは持ち帰ったアイテム数。冒険者達が潜っていたダンジョンでは考えられないぐらいに、大量のアイテムをゲットして持ち帰ってきたと報告があったそう。
何故それほどまでに多くのあるアイテムを手に入れることが出来たのか、ギルドとしては成果の虚偽報告を疑ったが、すぐにそれはないだろうと判断。なぜなら、少なく報告するなら理解できるが、多く報告するのは何故なのか分からない、それに何十年もココのギルドを利用しているような古参の冒険者達が何故今更虚偽の報告をするのか分からない。
そこで冒険者達に直接話を聞いてみた。すると彼女たちはすぐに答えてくれて、その日ダンジョンでは行く先々でモンスターと遭遇し戦闘を繰り返し、ダンジョンを出るまで絶え間なく戦闘ができたからこれだけのドロップ品を手に入れられたのだと答えた。
「それからしばらくして、同じように挑戦したダンジョンにしては異常な数のアイテムをゲットし持ち帰ってきたパーティーが次々と現れるようになった。彼女たち全員が、ダンジョン内を探索している間に何度もモンスターと遭遇できて、戦闘を繰り返す事ができたと話していたそうよ」
そんな事実からある疑念が生まれた。ダンジョン内でモンスターが異常発生しているのではないか?
基本的にダンジョン内部に出現するモンスターの数は一定していると言われている。一定の数から多少の誤差はあれど、多く増えることもなく少なく減ることもない。冒険者がモンスターを倒しても、しばらくするといつの間にかダンジョン内部に復活しているので、一定数から減ることはない。逆に、倒したモンスターの数以上は増えないので数が保たれているというわけだ。
しかし、ダンジョンの内部に現れるモンスターの数の一定が崩れて、異常な程に増える事があるらしい。冒険者ギルドには、何十年も前にダンジョン内でモンスターが異常に増殖したとされる記録が残っていたので、ソイントゥさんはダンジョン内のモンスターの数が一定が崩れて、異常に増えることはあり得ることだと知ったらしい。
そして記録によればこのまま増えるままに放置すると、ダンジョン内部から増えたモンスターが飛び出して外へ出てきてしまう。普段なら、モンスターが飛び出てくることはあっても一匹や二匹が迷い込んで出てくるというものだから警戒も薄い。前回のモンスターが異常発生した時には、何百匹というモンスターがダンジョンから溢れ出て来たと記録されていたらしい。
そこで、異常発生したモンスターの数を減らすためにダンジョンの攻略を進める冒険者達にダンジョン内部でモンスターを倒す報酬として特別賞金を出して、冒険者達がダンジョンへ挑戦する意欲を高めることにしたらしい。
通常のダンジョンモンスター狩りによるドロップ品報酬に加えて、モンスターを狩るだけで賞金が出るということで、かなり多くの冒険者達がこぞって参加したという。それが5日前の出来事。
「しかし、ソレは間違った選択でした……」
悲痛な表情で続きを語るソイントゥさん。
ダンジョンへ挑戦した多くの冒険者達がダンジョンから戻ってこなかったらしい。初めは特別報酬と聞いた多くの冒険者達が無理をしてダンジョンに挑戦したため無茶がたたってモンスターに返り討ちになったのではないかと考えられた。しかし、日にちが経ち帰ってこなくなる冒険者が増えるにつれて、他に原因があるのでは? ダンジョン内部で重大な何かが起こっているのではないか考えられるようになった。
さらに詳しく調べててみると特別賞金を冒険者ギルドが設定する前、モンスターの増殖が話題になっていた頃に何組かのパーティーが未帰還と報告されているのを見つけて、冒険者未帰還増加の問題に何かしらの関連があるのではないかと予測された。
「未帰還の冒険者は多く居まして、その内の一組があなた達です」
どうやら、他の未帰還組はまだに戻ってきておらず、初めて帰還したのが僕達で少しでも冒険者未帰還増加の原因を調べるために話を聞きたいと思っていたそうだ。
つまり要約すると、ダンジョン内でモンスターが異常に数が増えた。放っておくと、モンスターがダンジョンから溢れでて大変なことになるかもしれない。そうなる前に、冒険者に頼ってモンスターの数を減らしてもらうことに。
冒険者をダンジョンに送ったは良いが、戻ってくるパーティーが少ない。モンスターに倒されて全滅したとしたら冒険者達の亡骸が見つからないのはおかしいので、別に原因があるのではないかと考えられている最中に未帰還となっていた僕達3人が6日ぶりに帰還して冒険者ギルドに現れた。
僕らが冒険者未帰還の増加に関する情報を何かを知っているのではないか思い、ギルド長直々に聞きこみをしたというわけらしい。
ソイントゥさんの話を聞いて、正直言うと何やら面倒事に巻き込まれそうだと思った。なので、僕は知っていることを全部話して早々に開放してもらい関わらないようにしようと考えた。
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